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格闘技名勝負列伝 第3回 ラモン・デッカーvsブンチャイ・ソー・トワノント

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世界ムエタイ連盟/MA日本キックボクシング連盟
「EXCITING MUAY THAI」
1990年12月15日 東京・後楽園ホール

▼ムエタイルール 3分5R
○ブンチャイ・ソー・トワノント(タイ/ルンピニースタジアム認定ジュニアライト級2位)
判定 ※ポイントは非公表
●ラモン・デッカー(オランダ/ルンピニースタジアム認定ライト級10位)

噂の男デッカーがついに初来日

 まだインターネットがなかった時代、外国人選手たちの試合は雑誌で写真とレポートを見て戦いをイメージするしかなかった。一部のマニアは海外からビデオを取り寄せるのに奔走していたが、ほとんどの格闘技ファンは写真やレポートで想像力をかきたてられていたのである。

 そのため、実際に外国人選手が来日すると、当たり外れもあった。前評判が高かっただけに、実際のファイトを見ると「あれ?」という選手もいれば、日本では全くの無名だったのにとんでもなく強かった選手もいた。それでも、日本のファンは写真でしか見たことがない外国人選手たちの初来日を、今か今かと待ち焦がれていたのである。

 80年代後半になって、一人の外国人選手がクローズアップされ始めた。その選手はとんでもない破壊力を秘めたパンチを持ち、ムエタイの一流選手をKOしていたことから、“藤原敏男の再来”とまで言われた。長年にわたって立ち技最強の座に君臨するムエタイを、その座から引き摺り下ろせる藤原敏男以来の可能性を持った選手が現れたのだ。

 その外国人選手がラモン・デッカーだった。タイや地元オランダでのデッカーの活躍は日本にも届き、デッカーの試合を日本で見たいという声は日に日に高まっていった。そしてついに、1990年12月15日、MA日本キックボクシング連盟に初来日が決定したのである。

■物議をかもしたパンチvs蹴り&ヒジのハイレベルな攻防

 当時、ムエタイには国際化の波が押し寄せており、一流選手たちは海外に遠征し、その海外での試合がタイ全土に生中継されるというスタイルの大会がよく行われていた。ムエタイを世界的人気スポーツにしようということから世界ムエタイ連盟(IMF)が発足し、頻繁にタイ人選手とヨーロッパ選手の対抗戦が行われるようになったのである。

 世界ムエタイ連盟の大会は日本でも行われ、マニア垂涎の一流ムエタイ選手が大挙来日。その第二弾大会で、デッカーvsブンチャイの試合が組まれた。そして、この一戦が大きな物議をかもし出すことになる。

 試合は1Rから、迫力ある攻防が繰り広げられた。“地獄の風車”と形容された速くて重いパンチでデッカーが前に出て攻めれば、ブンチャイは首相撲からのヒザ蹴りでデッカーのパンチを封じ、ヒジを繰り出す。通常、ヒジはポイントでリードされた選手が逆転の一手として後半に繰り出すものであり、1Rからブンチャイがヒジを使っていったのは、デッカーの圧力に危険を感じたからだろう。

 ブンチャイのヒジの鋭さは、在日タイ人選手がよく見せる「スタミナに自信がないからヒジで斬って早めに終わらせる」という戦い方とは明らかに違う迫力が伝わってくる。

 途中、デッカーの左右フックが何度もブンチャイをグラつかせ、大きく吹っ飛ばす。パンチがクリーンヒットすると、一発でガクッと腰を落とすブンチャイ。しかし、倒れることなく前へ出て首相撲に捕まえてのヒジとヒザで逆襲し、離れると左ミドルでデッカーの腕を潰しにいく。ブンチャイの気力と回復力が凄い。激闘は場内が大盛り上がりとなる中、フルラウンド繰り広げられた。

■ダメージか、試合全体の支配か?

 デッカーのパンチ&ローキックvsブンチャイのヒジ&ヒザとミドルキックという展開で、デッカーがブンチャイに打ち勝ったように見えた。しかし、判定はブンチャイの勝利。満員の観客席からは「えーっ!?」という声があがった。デッカー陣営もこの結果に激怒し、判定を不服としてその場で再戦要求を申し立てた。

 これをMA日本キックボクシング連盟、および世界ムエタイ連盟が了承し、「後日、日本で再戦」が確約され、デッカーも「次は倒す」と宣言したが、再戦が実現することはついになかった。

 当時はダメージを考慮して日本キックボクシングの採点ではデッカー、ムエタイの採点では蹴りを多く当てたブンチャイ、という見解がなされていた。

 ぜひ、動画を見て判断して欲しい。この試合にジャッジを下すのはあなた自身だ。

写真提供/ゴング格闘技

 

このコラムの動画がここに! 完全ノーカットで公開!

▼ムエタイルール 3分5R
○ブンチャイ・ソー・トワノント(タイ/ルンピニースタジアム認定ジュニアライト級2位)
判定 ※ポイントは非公表
●ラモン・デッカー(オランダ/ルンピニースタジアム認定ライト級10位)

 

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