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2016年12月度・格闘技MVPスペシャルインタビュー 那須川天心(RIZIN、KNOCK OUT)

■29日のRIZINでMMAデビュー、その2日後には2試合目も勝利

 この一戦の勝利だけでもMVPに値するが、那須川の挑戦はそこで終わらなかった。試合から9日後に行われた『RIZIN』の記者会見で、12月29日にさいたまスーパーアリーナにて開催される『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2016無差別級トーナメント 2nd ROUND』への参戦が発表されたのだ。しかも、MMA(総合格闘技)ルールに初挑戦となった。

「ワンチャローン戦の前からRIZINにはオファーをいただいていました。だから、その試合次第でした。怪我がなければ出よう、と。でも先のことは何も考えずにワンチャローン戦には挑みました。その結果、怪我が無く1Rで勝つことが出来たので、出ることを決めたんです。

 本当は、キックボクシングルールでやりたいと最初は言ったんです。でも、僕がオープンフィンガーグローブを着用してMMAをやることに意味があると言われて。有名なイベントですし、自分と格闘技界のプラスになると思って“やります”と返事をしました」

 しかし、年末まで時間はなかった。試合前、MMAの練習をしたのはなんと10回前後だった、と那須川は打ち明ける。

「でも最後の8~10回くらいはいいコツをつかんだというか。ちょっと自信が出てきたので、これなら大丈夫かなって思いました」

 対戦相手のニキータ・サプン(ウクライナ)はテコンドー出身で同じ打撃系格闘家だが、那須川がMMAは全くの初心者であるのに対してアマチュアMMA大会で準優勝するなど、MMAの経験も積んでいた。

 その経験の差が、試合が始まってすぐに出た。サプンの蹴り足をキャッチしてテイクダウンを奪い、上からパウンドを打った那須川だが、サプンが下からの腕十字を仕掛けたのだ。那須川は持ち上げて外そうとしたがサプンは腕を放さず、腕が完全に伸びきる大ピンチに。もうダメかと思われたが、回り込んで脱出することに成功した。

「あの脱出方法はそこまで練習ではやらなかったです。でも、腕十字を仕掛けられたら止まっていないで動いて対処しろと言われていたのでその通りにしました。関節技を極められたことがなかったので“ああ、こういう痛みなんだ”って分かりましたね。タップ(ギブアップの意思表示で相手の身体などを2度以上叩く)しようとは思わなかったです。絶対にタップしないぞ、腕が折れてもしないって思っていました」

 大ピンチをしのいだ那須川はすぐに上からパウンドを打ち込み、嫌がって背中を向け亀の状態になったサプンの顔面へ背後からもパンチを連打。一方的な展開となり、レフェリーが試合をストップした。

「パウンドはキックボクシングと同じ打ち方でやりました。バックからのパンチはただガムシャラに打っていただけですね(笑)。勝った瞬間は“やった!”って感じでした。両腕を広げて喜ぼうとしたら腕が痛かったです」

 そして試合後、那須川は驚くべき行動に出た。マイクを持つと、わずか2日後の大みそかに開催される『RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX 2016無差別級トーナメント Final ROUND』への出場を直訴したのである。この那須川の申し出は一時保留となったが、試合後のメディカルチェックで腕の靭帯は伸びているがドクターストップをかけるまではいっていないと判断され、その日のうちに大みそかでのMMA2戦目が決定した。

「29日に勝ったら31日も出場をアピールすることは最初から考えていました。試合が29日になってしまって、なんで31日じゃないんだって思っていたので。31日の試合をアピールした時はまだ腕がそこまで痛くなかったんですが、決まった後でもの凄く痛くなって。でも言っちゃったしな、もう引き返せないと思いました。試合になれば絶対に右腕は動くと思ったのでやりました。

 それで29日の試合が終わってからずっと冷やして、試合当日の31日もフィジカルトレーニングをしているジムで電気治療とケアをしてもらって多少動くようにしてもらい、試合の時はテーピングで固定してもらって臨みました」

 大みそかの第1試合で、那須川はムエタイとアマチュアMMAの経験があるカウイカ・オリージョ(アメリカ)と対戦。打撃戦で劣勢になったオリージョはタックルでテイクダウンを奪いに来たが、那須川は下から体勢を引っくり返して上になってみせた。

「返すのは得意だったんです。練習でも一瞬の力でけっこう返せていたので。1Rの終盤は下になりましたが、セコンドからラスト15秒って聞いたのでパンチだけはもらわないようにしようと冷静に考えていました。焦りもなくて殴ってきても大丈夫でしたね。その対処は上手いって練習で言われていたので、ここは無駄な力を使わず対処していればいいかなって思っていました」

 そして2R、那須川の左フックで倒れたオリージョがタックルでしがみついてきたところへ那須川はアームトライアングルチョーク(腕で極める三角絞め=RENAが山本美憂に極めたのと同じ技)。オリージョを失神させ、見事な一本勝ちでMMA2連勝を飾った。

「今回は打撃で行こうと決めていて、距離も近くなっていたからテイクダウンされましたね。チョークは練習していたのでそれがしっかりハマった。セコンドから絞めろ、と言われたんですが、本気で人を絞めたことがなかったんですよ。練習ではこれ本当に絞まるのかなって言っていて。それで最後の練習の時に本当の絞め方を教わったんです。空間を一気に失くすような絞め方で、力を最大限に発揮できるのは10秒くらいだから、そこに懸けろ、いけると思ったらいけと言われていたんです。それがパッと頭に思い浮かんで絞めました。ただ腕で絞めるだけでは力が足りないので、ちょっと中に回り込んで首を折るようにして絞めたら極まりましたね」

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