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■別団体の世界王者・井岡一翔さんと戦いたい

 そんな窮地から、風向きが変わったのは試合前日。計量の場にややフラついて登場した王者は、リミットまであと200グラムの体重カットを拒否。戦う前に王座を剥奪されてしまったのだ。

 比嘉が勝てば新王者誕生だが、エルナンデスが勝っても王座は空位になる。わずかな体重オーバーを理由にこれを受け入れてしまったことに、エルナンデス本人は試合後、「体重計に乗る前に限界まで落としての200グラム・オーバーだったから」と説明している。

 具志堅会長は憤った様子だったが、これこそが比嘉に重要な”開き直り”を持たせたのかも知れない。上記のパニック障害の一因もまた、減量苦だったのである。

「ハタチを過ぎてからフィジカル・トレーニングの成果が出やすくなった。その分、体重が落ちにくくはなっています。でも精神的に追い詰められた状況で調整をやり抜けた自分と、あきらめた相手。この差が根気勝負になった時に出ると思いました」と、精神的に追い詰められても調整をやり抜いた比嘉、一方フェルナンデスは試合前日、計量オーバーで、再計量もあったが、それをあきらめ放棄。ここが競り合いになった時にその差が出ると予測した。

 結果論から言えば、比嘉の言った通りの展開だっただろう。試合開始後、鋭いパンチを多角的に打ち込みながら旋回する王者を、比嘉は2Rに早くも左フックで捕まえてダウンを奪う。リングではエルナンデスもプライドを持って戦い、ポイント上では優位に立ったが、比嘉はじわじわプレスをかける消耗作戦に迷わない。そして5Rに再び左フックでダウンを奪い、6Rだけで4度のダウンを追加。ここでレフェリーが試合を止めた。

 中継カメラに向け、詰め物の抜けた歯の隙間を見せた比嘉の茶目っ気とは対照的に、1995年のジム開設以来、初めて世界王者を育てた具志堅用高会長は、下を向いてしばらく涙をこらえていた。両者の行動が一致したのは控え室に戻ってから。具志堅氏の流す涙に比嘉も思わず誘われたという。

 比嘉は具志堅会長についてこう語る。

「会長がボクシング界のスター、沖縄の英雄じゃなかったら、ボクシングを始めていなかったし、高校時代に実績のない自分にここまでチャンスをくださった恩人でもあります。憧れだからこそ、超えたくなる存在。弟子なら超えるのが恩返しじゃないですか。そのためには、防衛記録を塗り替えるのもひとつですけど、みんなが注目をする試合で勝ち続けたいと思っています。必然的に、同じ階級で別団体の世界王座に就いている井岡一翔さんとは戦いたいと思いますね」

 ビッグマウスの合間に見える歯のすき間は、すでに埋めてあった。これはいつでも準備が出来ているという意思表示か。それとも持ち前の”勢い”でそう語っているのだろうか。
(文・善理 俊哉) 

関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「比嘉が日本人初の全試合KO勝利で世界王座奪取」
・過去のMVP選手一覧 



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