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【コラム】2018年のUFC展望、マクレガーに代わるスーパースターは出るか?

元WOWOWのUFC中継解説者としても知られる格闘技ジャーナリストの稲垣收(いながき・しゅう)氏が、世界を舞台に格闘技のディープな情報を発信する世界格闘技最前線。

 2017年も世界最大の総合格闘技団体『UFC』では多くの激闘や名勝負が繰り広げられた。しかし、コナー・マクレガーやロンダ・ラウジーらのようなスーパースターがUFCでは試合をせず、PPV(ペイパービュー=有料視聴)契約で100万件超の大会は2017年には1つもなかった。2018年のUFCはどうなるのか? 試合の面、そして経済的側面も見ていこう。(文:稲垣 收)
Photo by Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images

ヘビー級に待望のスター候補生が現れる

アリスター(右)をアッパーで衝撃KOしたガヌー(左)

 まずヘビー級では、とてつもないスター候補生が台頭してきた。フランシス・ガヌーだ。ガヌーは、かつてPRIDEでノゲイラ弟やヒカルド・アローナを秒殺KOしたソクジュと同じアフリカのカメルーン出身。身長193㎝、体重113㎏の巨体から繰り出すパンチは強烈無比で、前回は12月3日に元K-1&DREAM王者アリスター・オーフレイムを左アッパーの一撃で失神させ、わずか 1分42秒で勝利した。その前は元UFCヘビー級王者アンドレイ・アルロフスキーを右アッパーで吹っ飛ばし、1分32秒で仕留めている。

 戦績は11勝1敗で、11勝の内訳は7つのKOと4つのサブミッション(関節・絞め技)勝ちであり、全試合完全決着――。パンチだけでなくサブミッションでも、桜庭和志がヘンゾ・グレイシーを破った試合を彷彿とさせるキムラ・ロックや、ギロチン・チョーク、肩固めなど、多彩な技を使いこなす。その上、スピードもヘビー級とは思えぬ素早さだ。

 ガヌーはここ4戦で連続1R勝利しており、1月20日にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで開催される『UFC220』で、王者スティーペ・ミオシッチに挑戦することが決まっている。

 迎え撃つ王者ミオシッチは、ミルコ・クロコップを尊敬するクロアチア系アメリカ人。元K-1王者のマーク・ハントとアルロフスキーにTKO勝ちし、2016年5月にファブリシオ・ヴェウドゥムを1R KOして王座を奪った。その後はアリスターとジュニオール・ドス・サントスを連続1R KOして2度防衛しており、今回が3度目の防衛戦になる。

 5連続KO勝ちの王者vs 9連続完全決着勝利の挑戦者のヘビー級対決は、まさに“世界最強の男”を決めるのにふさわしい1戦だ。

 この試合は、現在ビジネス面でやや勢いが落ちているUFCが起死回生するための起爆剤となるかもしれない。

ロンダ、マクレガーを欠き“スーパースター不在”のUFC

圧倒的な人気を誇ったラウジー(左)だが、ホルム(右)に敗れ王座陥落

 ただ、世界中のトップ選手が集まっていて名勝負も多いUFCだが、2017年は格闘技ファンだけでなく一般世間からも注目される“カリスマ的スーパースター”が不在だった。たしかにミオシッチもガヌーも強いのだが、まだ一般人にはそれほど認知されていない。

 では、それまでの“UFCのスーパースター”たちは、どうしていたのか?

 女子バンタム級で絶対女王と呼ばれハリウッド映画でも大活躍したロンダ・ラウジーはほぼ引退状態だ。そして、UFC初の同時2階級制覇を成し遂げモハメッド・アリばりのビッグマウスで注目を集めたコナー・マクレガーは、“ボクシング・レジェンド”フロイド・メイウェザーとのボクシング戦に集中したため、昨年はUFCで試合をしなかった。彼らに代わる100万件以上のPPV契約を勝ち取れる新スターは、まだ登場していない。そのため、前述の通り2017年に100万件超えを果たしたUFC大会は、1つもなかったのだ。

ヌネス(右)に敗れて以降、ラウジー(左)は試合をしていない

 ロンダは2015年11月にホーリー・ホルムにKO負けして王座陥落し、2016年末の復帰戦でも新王者アマンダ・ヌネスに48秒で秒殺KOされ、以後試合をしていない。このロンダがホーリーに敗れた『UFC193』と、アマンダに挑戦した『UFC207』の北米でのPPV契約数は、どちらも110万件だった。

 一方、マクレガーがジョゼ・アルドを13秒でKOしてフェザー級王座を奪った『UFC194』 (2015年12月)のPPVは102万5千件、そして2016年の3試合(ネイト・ディアスとの2連戦と、エディー・アルバレスからライト級王座を奪ったUFC205)は、それぞれ131万7千件、165万件、130万件だった。ネイトとの再戦での165万件は、UFC史上最多PPV契約数である。

世界的スーパースターとなったマクレガー

 だが2017年には、その“ドル箱スター”マクレガーがメイウェザー戦のため、UFCで1試合もしなかった。メイウェザーとの“世紀の一戦”は世界中で放送され、北米でのPPV件数は430万件で、2015年に行なわれたメイウェザーvsパッキャオの460万件に次いで史上2位の契約数を誇り、マクレガーはファイトマネーその他で総額約1億ドル(110億円以上)を手にした、と海外メディアが推測している。

 マクレガーとの専属契約を有するUFCも、メイウェザー戦を許可したことにより、かなりの額を得たはずだが、もしマクレガーがオクタゴンに帰ってこなければ、今回得た額以上に大きな損失となるだろう。実際、マクレガーは昨年12月ごろUFC復帰が期待されていたが、実現しなかった。

 デイナ・ホワイトUFC社長は「自分の銀行口座に大金があるのに、朝起きてジムに殴られに行く気には、なかなかなれないだろう」と、文字通りの“億万長者”(しかも円でなく、ドルで)になったマクレガーの気持ちを推測しているが、今年マクレガーのUFC復帰はあるのだろうか?

 そして、マクレガーが復帰するならば、対戦相手候補は?



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