【月間ベストファイター・3月】新王者の宮﨑小雪、リング上で語った「天国のお母さん」への想い

■リング上でふと浮かんだ「天国のお母さん」

多くの仲間に囲まれる宮崎（中央）

　激戦の末、判定2-0の僅差ながら名王者に引導を渡した18歳の新王者は、リング上で「一番になった姿を天国にいるお母さんに見せられてよかった」と語った。
「勝ったら言おうと決めていたわけではないんです。しゃべりながら、ふと思い出して言おうと思いました」

　宮﨑には、若菜の上にもうひとり姉がいる。母を病気で亡くしたのは長女が高校1年、若菜が中学2年、宮﨑が小学6年生の時だった。
「3人とも空手をやっていましたが、私は当時まだ優勝できていなかった。それもあって、お母さんが生きているうちに優勝した姿を見せたかったなと、どこかでずっと思っていました。それに、長女はお母さんが亡くなったあと空手をやめて、家のことをずっとやってくれて、私と若菜がやりたいことを応援してくれた。だから、お姉ちゃんの分まで頑張らないといけないなと思いますね」

「小雪」という美しい名をつけてくれた母には、父と姉の若菜とともに試合の翌日、改めて一番になったことを伝えに行った。「本当はお墓にベルトを持っていくつもりでしたが、なぜか忘れてしまって（苦笑）。でも、しっかり口頭で報告できました」

■絶対に倒したい相手と絶対に出たい舞台

JK王者の夢叶えた宮﨑、王者として紅絹の思いを受け継ぐ

　初代のRENAに始まり、神村エリカ、紅絹、現ミニフライ級王者の寺山日葵まで、歴代女子王者は実力者ぞろい。「RISE QUEENたる者、名王者たれ」という周囲の期待は、そのままプレッシャーにもなる。
「今までは追う側でしたが、これからは追われる側になるので、ベルトの価値を高めないといけないと思いますし、私が負けると紅絹さんの顔にも泥を塗ることになってしまう。それは絶対にしてはいけないので、きつくなった時には紅絹さんを思い出して、紅絹さんの分まで頑張ってベルトを守っていきます」

Ayakaに判定負けを喫した宮崎（左／2020年11月）

　苦しいときに思い浮かぶ顔が、実はもう一人いる。昨年11月、これまでの7戦のうち唯一、黒星をつけられたNJKFミネルヴァピン級王者のAyaka（19＝健心塾）だ。RISE女子最強決定トーナメント『RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS 2020』のリザーブマッチで対戦し、判定0-3で苦杯をなめた。
「それまではアマチュアでも負けたことがなかったので、キックで初めて負けたことがすごく悔しかったです。トレーニング中もあのときの悔しさを思い出して、もう一段ギアを上げている。それが強くなる糧になっていますね。絶対にリベンジすることは、自分の中で決めています」

　高校を卒業し、4月からは「職業＝キックボクサー」に。社会勉強の目的もありアルバイトをしているが、キックに集中できる環境は整った。そんな宮﨑に今後の目標を尋ねると、躊躇なく「RIZIN出場」と答えた。
「女子の立ち技では、これまでRENA選手がSBルールで戦っているくらいですかね。でも、女子のキック界を盛り上げられる一員になれたらいいなと思っているので、RIZINの舞台でもRISE王者の強さを見せたいです」

受賞のコメント
「いろいろなジャンルの格闘技がある中で、またたくさんの選手、たくさんの試合がある中で、こうやって選んでいただけたのはすごく嬉しいです。ありがとうございます。あとから映像を見ていても、練習したことがある程度できていたかなと思うので、もちろん課題もありますが、自分の中では半分くらいは満足できた試合だったかなと思います」

サプリメントについて
「よく摂っているのはHALEOやMUSCLETECHのプロテインですね。栄養素は基本的に食事から摂ることが多いのですが、試合に向けての減量で栄養が偏ったときはサプリメントで補ったりしています。ふだんの食事では野菜を必ず摂るようにしているのと、練習がハードになってくると疲労が抜けにくくなるので、豚肉やアスパラガスなど疲労が抜けやすいものを作って食べたりします」

（取材・執筆＝藤村幸代）

▼今回の試合の動画