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2016年9月度MVPスペシャルインタビュー 長谷川穂積(ボクシング)

 毎月イーファイトが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2016年9月のMVPは、9月16日(金)大阪・エディオンアリーナ大阪第1競技場で開催された『ワールドプレミアムボクシング24』で世界フェザー級王座陥落から5年5カ月ぶり、35歳にしてスーパーバンタム級タイトル戦に勝利。三階級制覇を成し遂げた長谷川穂積に決定!(2016年10月18日UP)

PROFILE

長谷川穂積(はせがわ・ほづみ)
1980年12月16日、兵庫県出身
身長168.5cm
真正ボクシングジム所属

選考理由
1、「日本ボクシング界初の35歳9ヶ月で世界奪取となり、世界3階級制覇を達成」
2、「39戦36勝(32KO)の現役世界王者ルイスを下した」
3、「年齢と最近の戦績、対戦相手の実績などから三階級制覇は厳しいとの予測もあったがそれを覆した」

選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技の各格闘技雑誌の編集長とイーファイトの全スタッフ
受賞された長谷川選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。

プロカルシウム 300粒

骨の形成に必要なコラーゲンやカルシウムなどミネラルを含むプロテタイトに、骨の成長を考えたカルシウム、乳果オリゴ糖、CPPなどを配合しました。
マルチビタミン&ミネラル

100%自然素材を使用したビタミン&ミネラルサプリメント。着色料、香料、保存料は一切使用しておりません。
アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒

選び抜かれた8種類の成分。トップアスリート達が使用する回復系サプリメントです。
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贈呈:ゴールドジム

MVP記念インタビュー
次は“チャンピオンになってリングを降りること”を目標に戦おうと思っていた

■自分自身のマインドコントロールが復活の決め手

「黄金時代」はすでにWBC世界バンタム級王座を10度防衛した時点で築いた長谷川だが、今回のWBC世界スーパーフライ級王座奪取と2010年のWBC世界フェザー級王座奪取で流行りの言葉でいうレジェンド(伝説)のイメージも再構築した。

 一昨年4月のIBF世界スーパーバンタム級王者キコ・マルチネスとの一戦(長谷川が7回TKO負け)が、これまで応援してきたファンにとってショッキングな完敗だった分、そこから29勝21KO無敗の世界ランカー、オラシオ・ガルシア(メキシコ)を破っての急浮上。そして今回の試合で、逆転KO負けのピンチをくぐり抜けた直後の勝利は、コントラストが実に鮮やかだった。

 自分自身のマインドコントロールが復活の決め手になったと長谷川は振り返る。

「“長谷川も限界や”と言われたマルチネス戦で、僕はベストな準備をできたんですけど、試合が実現するのに3年間がかかったことで、目標が“世界戦が実現すること”になっていたんです。それに、リングに上がったときの達成感で気づいた。もしもう一度世界戦ができるのなら、次は“チャンピオンになってリングを降りること”を目標に戦おうと思っていました」

 日本男子史上4人目の世界王座3階級制覇。バンタム級時代に減量苦だった長谷川は、2つ上のフェザー級を制してから、今回、スーパーバンタム級を制している。2階級を上げることより、むしろ1度2階級上の体格を作ってから、1階級を落とす方が困難だというのが近年の定説だ。すでに3階級を制覇している八重樫東(大橋)、亀田興毅(引退)もそれで1度ずつ王座奪取を逃している。

 長谷川にはもう一つ、過去の栄光が大きすぎることが、モチベーションを揺さぶった。

「10回防衛した後の再スタートで、世間に何を証明するのかが見えてこなかった。しばらくして、自分の心のなかではモチベーションが見えても、世間とのギャップが生まれてくるんです。だからここ何年かは、“ボクシング中毒になってるんじゃないのか”、“ボクシングしか知らない”っていう言葉が、聞きたくなくても耳に入ってきましたね」

 最初の黄金時代に小さかった2人の実子はしばらく前に物心がついて、父の身体を心配するようになった。

「妻は“反対して一生根に持たれるくらいならサポートする” といって支えてくれた。実際に戦う僕より見ている周りのほうが心配になると思いますね。できれば言葉じゃなくて結果でありがとうと伝えたいと思いました」

 ところが試合の45日前。最初のスパーリングで右手の親指を脱臼骨折。翌週に手術をしたものの、実戦練習のみならず、左をまったく打てない期間が続いた。

「徹底的に右を練習して、今まで重点を置いていなかった身体全体のバランス感覚を強化したら、かすかに成長を実感できました。これで“右手のケガがあったからこそ、今回は勝てた”というシナリオを作ろうと自分に言い聞かせましたが、我ながらよく言い聞かせられたと思います。直前にもうひとつ、肉離れも起こしたんで。20代の頃は、余裕がなかったから、ケガをして“大丈夫” って自分に言い聞かせても、心が信じてくれませんでした」

■長谷川はなぜ打ち合ったか

 試合中、王者ウーゴ・ルイス(メキシコ)は予想通りに勢いがあった。
「長いリーチを自信を持って打ってくる。若いし、チャンピオンとしての自信があるなぁと思いました。僕自身、最初にチャンピオンだった頃は、スリリングなカウンターを打ち込むリスクを考えていなかった。そういう意味では、今よりも技術力があったといえますが、今はあの頃よりもボクシングの奥深さを知っています。チャンピオンがふと表情を変えた時に“その顔をしたら、今どんな気持ちなのか分かるのにな”と思えました」

 長谷川優勢が色濃くなって来ての後半9回。長谷川が「一番効いた」と振り返る王者のアッパーで追い詰められた。テレビ解説でも「ここはムキになって打ち合ってはいけない」という声が何度も出ているが、大半のファンもこれに同調する展開だっただろう。実際に今年4月には、長谷川よりも1回多く防衛していたWBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志(ワタナベ)が、突発的なダウンから時間稼ぎをせず、一気、2度のダウンを追加されて王座から陥落したのだ。

 それでも長谷川は、なぜ打ち合ったのか。結果的に“賭け”が、王者を棄権に追い込む決め手となったのだが。

「本当は2回くらい僕も回避しようと思ったんですけど、チャンピオンがさせてくれなかった。そこで、もっと逃げるという判断より、“一人の男としてここは喧嘩をしてやろう”と無意識に食らいついたのが本音です」

 長谷川のパンチが当たり、王者のパンチが空を切り続けると、形成が逆転。このラウンド終了後に、王者は棄権を申し出た。

「染み付いた技術に救われました。何も考えずにやっただけなんで(苦笑)」

 長谷川は試合後、大きくなった子供たちをリングにあげた。

「今度こそ、戦い続けるモチベーションが分からないところに来てしまった。これ以上の達成感はないし、自己満足どころか周りにも感動してもらえた。今はチャンピオンになったっていう単純な喜びで生活できていますけど、そんなに長くしないうちに先を考えないといけない時期が来ますからね。永遠にときが停まってくれないかな(笑)」

 10月5日、長谷川はWBC本部から「今日届いたんです」という3つ目のチャンピオンベルトに視線を移し、目を細めながらそう口にした。
(文・善理 俊哉) 

関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「長谷川穂積が9回TKO勝利で世界3階級制覇」
・過去のMVP選手一覧 

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