【10月・ベストファイター】V3達成の菅原美優、KOの右は練習積んだカウンター、ボクシング上達のきっかけとは！？

■井上尚弥が得意とするショートストレートでKO

ダウンするチャン・リー

　1Rは、菅原がKO寸前まで追い込むもチャン・リーに粘られてしまう。気持ちが折れないチャン・リーの覚悟が、好勝負へと発展する。2R、チャン・リーの蹴りが襲いかかってくると菅原は、右フックで3度目のダウンを奪った。それでもチャン・リーは立ち上がった。

　3R、ダウンを挽回するためにチャン・リーは、前に出続けて逆転のKOを狙う。菅原はボディ、顔面にパンチに散らすボクシングテクニックで翻弄。前蹴りをさばくとショートの右パンチで、ついにチャン・リーをKOした。フィニッシュとなった右は、ショートストレートと言われる空手の寸勁の突きのようなパンチで、初動から当てるまでの距離が短いのが特長だ。

　同じようなパンチですぐに連想するのは、20年11月に行われたボクシングのWBA・IBF世界バンタム級統一王座防衛戦で王者・井上尚弥（大橋）が、挑戦者のジェイソン・マロニー（オーストラリア）を倒したフィニッシュブローだ。井上のパンチは、その場の位置から真っ直ぐ右ストレートを伸ばす通常のストレートの動きではなく、前方に体重を乗せ左斜め前に体を倒しながら打つパンチ。当たった瞬間はまだ肘が曲がっているため、この時点でのパンチの肘の屈伸運動距離は小さく、相手に見えにくいパンチとなる。達人のようなテクニックの一つだ。

　菅原に井上のパンチを見て練習していたのか聞くと「いえ、さすがにそれはないです（笑）。でも、千本さんとカウンターのパンチの打ち方を練習してきたことと、私はボクシングが大好きなので試合映像をたくさん見ているので、そうしたパンチのイメージが頭にあったのかもしれません」と分析した。たしかに井上のパンチを練習しただけでいきなりできる選手はなかなかいないとは思うが、チャン・リー戦のフィニッシュブローは偶然にも似たパンチといっても過言ではないだろう。

■「パヤーフォン選手にリベンジしてK-1のベルトを巻きたい」

3R、4度目のダウンでKO勝利した菅原

　初のKO勝ちを収めた菅原に今後の目標を聞くと、「やはりパヤーフォン選手にリベンジしたいです。対世界と戦って、結果を出したいですね。先輩のKANA選手には、まだまだ追いつけませんが、パヤーフォン選手との再戦で圧倒的に勝ってK-1のベルトを巻きたいです」と2023年の躍進を誓った。

　KO勝ちをしたことで「自分で自分のハードルを上げてしまいました」と苦笑していたが、それだけファンの期待も大きくなっている証拠。今回の防衛戦は、初代KNOCK OUT-BLACK女子ミニマム級王者のぱんちゃん璃奈が観戦して「強い、スピードもフェイントもすごい」と絶賛していたことが話題になった。

　そのことについて菅原は「そう言っていただけるのは、素直に嬉しいです。話題に出してもらえると、もっとがんばりたいと思います」と刺激になっているという。

　団体も階級も違うため（ぱんちゃんが-47.5kg、菅原は-45kg）、2人がリング上で戦う可能性は低いが、THE MATCHのような大会がまた開催されることがあれば、リングで顔を合わせる可能性はゼロではないだろう。

　菅原美優の2023年は、どんな勇姿を見せてくれるのだろうか。進化したパンチのテクニックを武器に、今度はK-1のリングでも暴れてくれるはずだ。

■菅原が10月MVP受賞の喜びを語る

　なお今回受賞した菅原には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。菅原は「私なんかでいいんですかね（笑）」と謙遜しながらも「初めて、こういう賞をいただけるので嬉しいです。サプリメントはBCAA、クレアチニンなどを摂ることもあります」と喜んだ。

■取材/文＝松井孝夫（Takao Matsui）、編集＝イーファイト編集部

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