那須川天心、初黒星の敗因を分析「こういう状況は初めて」
敗北の那須川が敗因を語った
11月24日に開催された［WBC世界バンタム級王座決定戦］（トヨタアリーナ東京）では、同級1位・那須川天心（帝拳）が、同級2位の井上拓真（大橋）に判定0-3で敗北。キック時代と合わせてプロ公式戦初の黒星となった。
試合後会見で那須川は、自身の敗因を「迷い」と「距離感」にあったと分析し、「こういう状況は初めてだった」と、戸惑いを明かした。
試合は、1・2Rこそ那須川がリーチを生かした左ストレートやボディで攻勢に出て、主導権を握ったかに見えた。しかし中盤以降は、井上が得意の接近戦に持ち込み、細かい連打を的確にヒット。那須川は最後まで打ち返し続けたものの、判定負けした。
拓真が距離感を支配した
試合後会見に那須川は、落ち込む素振りも見せずに登場。
那須川はまず、敗因として“距離の攻防”を挙げた。「（井上の）距離感が本当にうまかった。自分の練習してきたものが出せない間合いに、ずっと拓真選手がいた。こっちは出し切れていないのに、先手は全部取られていた感覚だ」と、まず“距離設定負け”を認めた。
WBC戦では4Rと8Rで公開採点が行われる。那須川は「ポイント差を聞いたときに『あ、どうしようかな。こういう状況は初めてだな』と思った」と明かす。スパーリングで自分の“悪いパターン”に入ったときの動きになってしまい、「ここからどう修正するか」と試合中に迷いが生まれたという。
「一度迷いが出ると判断が遅れる。そこで先にポイントを取られた」と自己分析した。
本来は左右へのステップで崩したかったが、そこも封じられた。
「『あ、どうしようかな』と一瞬でもためらうと、その“間”でやられる。あれは完全にボクシングの経験の差、深みの差だと感じた」と、距離と“間”を支配されたことを強調した。
1Rには左ストレートで井上のアゴを跳ね上げた場面もあったが、「ここで行っちゃいけないかなという感覚があった」と踏み込み切れなかった理由を語る。
「目がずっと生きていた。フェイントをかけても、すぐ反応して前に出てくる。そこを警戒しすぎて、自分が行き切れなかった」と序盤から判断の遅れが出ていたと言う。
拓真のボクシングについては「全体的にすごく上手だったし、『勝ちに来ているな』と強く感じた。もっとガンガン前に出てくると思っていたけど、あえて出てこないラウンドもあって、『一ラウンド一ラウンドをどう取るか』というボクシングをしてきた」と振り返る。
続けて「昔『はじめの一歩』を読んだときに、『キックは3Rだから絶対どこかで来るけど、ボクシングは12Rあるから“全く来ない”という選択肢もある』という展開があって、『こういう試合もあるんだな』と思った。今日はまさにそのパターン」と相手の経験の深さを認めた。
那須川は、リング上で井上に「絶対、またお願いします」と再戦を直訴している。
「リベンジする。そのためにもっと強くなって、もう一度拓真選手に挑戦するところまで行くと伝えた。『負けたので引退します』なんて、やっぱりダサい。人生は実験だと思っているので、次はしっかり成功させるだけだ」と、初黒星の夜に前を向いていた。
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