【10月・ベストファイター】決勝、顔面ヒザ蹴りKO!”カザフの怪物”キンザースキーが、新極真会全日本優勝、克服した”意外な”課題
毎月イーファイトのサイト名にちなみ、より良い試合をした選手に贈られる、格闘技月間ベストファイター賞。2025年9月のベストファイターは、10月18日~19日、東京体育館にて、新極真会主催『第57回全日本空手道選手権大会』にて、トーナメント全て本戦決着、決勝ではわずか42秒 顔面飛びヒザ蹴りで衝撃の一本勝ち(KO)で優勝したアンジェイ・キンザースキー(カザフスタン)に決定した(2025年11月28日UP)
【決勝の試合動画、顔面ヒザ蹴りKOの瞬間も!】
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PROFILE 【獲得タイトル】 第57回全日本空手道選手権大会 優勝 身長193cmの長身から繰り出すヒザ蹴りと上段技を武器に、国際大会でも実績を重ねてきた新極真会の重量級ファイター。 初段、カザフスタンのスポーツ称号「Master of Sport」も授与している。現在は首都アスタナの「MNU」で国際関係を学ぶ大学生。 2022年に国内大会(-85kg)優勝、2023年はブルガリア開催KWU World Cup Openで優勝し注目された。23年8月に来日して複数道場で稽古経験もあり、同年の新極真世界大会は4回戦で、注意2もあって多田成慶に敗退した。 しかし2025年10月、新極真会全日本・決勝で渡辺和志を本戦42秒・上段(飛び)ヒザ蹴りで下し、海外選手初の全日本王者となった。 |
選考理由
1.新極真会全日本大会初の海外選手による優勝
2.決勝戦では豪快な秒殺ヒザ蹴り一本勝ち
3.全て本戦決着、圧倒的な強さと精神力で勝ち上がり
選考委員
格闘技雑誌Fight&Lifeとイーファイトの全スタッフ
受賞されたキンザースキー選手には、ゴールドジムより以下の賞品(アルティメットフレキシジョイントUC–Ⅱ 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アミノ12パウダー 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジム トーナメント全5戦、全て本戦勝利で優勝した。
1回戦はシード、初戦である2回戦では、ほぼ蹴りのみで圧倒、相手は何度も場外へ追い込まれた。本戦5-0で勝利。
2日目の3回戦、白蓮会館の実力者・平木楓に怒涛のパンチヒザで猛攻、相手から押し等の注意2も引き出し、本戦5-0で勝利。
4回戦、髙橋耕介(世田谷・杉並支部)との一戦では上段ヒザ蹴りで技有りを奪い、本戦5-0で勝利。
準々決勝では金岡陽大(川崎東湘南支部)に、強烈なヒザ蹴りや上段廻し蹴りで迎撃し、これも本戦5-0で勝利した。
準決勝では、渡辺優作(世田谷・杉並支部)と対戦。相手が序盤から密着して突きを繰り出し接近戦が続く中、ボディヒザ、後ろ蹴りを入れる。相手から注意2を引き出し、本戦5-0勝利。
そして決勝は、渡辺和志(世田谷・杉並支部)が超接近戦、密着して突きの連打を打つが、キンザースキーは落ち着いた様子で受け止め、ボディヒザから、間合いが空いた瞬間に顔面への右飛びヒザ蹴り一撃!相手は崩れ落ち、42秒で決着した。
キンザースキーは、半世紀以上、国内で守られてきた王座を初めて海外へ持ち帰った。
■日本人選手の「接近戦は想定していた」鍵は”心理”
決勝の渡辺和志をはじめ、相手の日本人は接近戦で挑んできた。
試合直後、本人は「日本人は接近戦が多い。想定していたし、対策してきた」と語っている。
くっついてくる相手にどう臨み、そのために何を練習してきたのか。
キンザースキーは「私たちの主な課題は、愚かな反則を避けることで、技術や戦闘面での他の要素は基本的に良好でした。基本的に戦術全体はスパーリング中に練られていきますが、そこはあまり重点を置いてませんでした」と戦術よりも、”天敵”反則に注意を払っていたと言う。
更に「主な目標は反則を最小限に抑えることで、これは身体的なアプローチというより心理的なアプローチであり、精神面での取り組みが重要でした」と、何よりも精神面が重要だったと言う。
戦術以前に、「まず反則をしない精神状態を作る」。それが結果として、距離を潰されても崩れない落ち着きに繋がったのだ。
■「以前は反則で補っていた」全日本で見せた変化
自身も言うように、キンザースキーは、過去に23年の新極真会世界大会、今年のWFKO等で押しや掴み等を反則に取られ、注意の累積で敗退した経験がある。ところが全日本では、本人に反則は一切なく、むしろ相手側に注意が続く場面もあった。
何が変わったのか。
キンザースキーは、過去の反則を「おそらく、体力不足と経験不足から、掴みや押しを多用し、反則で補っていたのだと思います」と弱点をカバーするため反則を使ってしまっていたと言う。
しかしこれを省みて「基本的に、スパーリング中に自分の技術により注意を払うようになりました。姿勢や手の位置に気を配り、全てが正しく行われているか確認しています」と、日常の稽古の意識から変化させたのだ。
■“打たれ強さ”の秘密は?「追加練習は一切していない」
決勝をはじめ、相手の突き連打を腕で固めて止めるのではなく、身体で受け止めるような場面が目立った。時にノーガード気味に見え、「体幹が強い」「パンチで身体がほとんどブレない」という印象を残している。
試合直後、本人は「成長した」「18歳から20歳になったから」と語るに留めていたが「フィジカルトレーニングは何をしているのか」と掘ると、答えは意外なほどシンプルだった。
キンザースキーは「年齢を重ねるにつれて体力が向上しました。ただし強調しておきたいのは、トレーニング中に身体能力強化の追加練習は一切加えていない、という事実です。同じ練習を、おそらく少しだけ増やした程度です。私の成長は主に、私の身体的成長と日常的に行っていた基礎トレーニングによってもたらされました」と語る。
ここにも、基礎稽古の集中や継続に理由があった。
また、身長193cmの長身大型でありながら、ステップは滑らかで追い足も速い。
スピードの養い方も問うと、キンザースキーは「特別な秘訣や特別な練習はありません。プロのアスリートがスピードを伸ばすためにやることは、ゴムバンドを使ったトレーニングとスプリント練習だけです」とここでも“特別”を否定した。
■3週間連続での大会優勝も「普通」、世界の頂きへ
今回、キンザースキーは「全日本で初の外国人王者」という歴史的な記録を勝ち取った。
「すべては実現可能で、不可能なことはないと信じていました。この大会の頂点に立てると信じていたのです。もちろん、優勝直後の1日は感情があふれましたが、すぐに『これからもっと大きな大会が待っている』と気持ちを切り替えました」と語る。
「大きな大会」とは何か。大会直後の囲み取材でキンザースキーは 「このトーナメントは自信につがり、もちろん世界大会ではチャンピオンを目指して頑張りたいと思います」と語っている。すでに意識は、27年に行われる体重無差別の世界大会へ向かっているのだ。
もうひとつ驚かされたのが試合間隔だ。
キンザースキーは全日本の一週間前、10月12日には、カザフスタンの『Kazakhstan championship 2025』に出場し、-90kgの部で優勝したと語っている。
そして全日本の一週間後、10月25日~26日にジョージアで行われた『Batumi Open』でも、成人男子の部(無差別)で優勝した。
なんと3週連続で大会参戦し、全てに優勝しているのだ。キンザースキーは「(この頻度は)カザフスタンでは普通のこと」と平然と答えていた。
この驚くべきタフさが、27年の世界大会での脅威となることは間違いない。
新極真会の緑健児代表も試合後に、彼の強さを「パワーだけではない」と評し、技術、そして精神面の強さにまで言及している。全日本王座の海外流出に「大勢の海外選手が自信を持ってしまった」と危機感を示したのも、その延長線上にあるだろう。
すでに世界の頂きを見つめる、弱冠21歳”カザフの怪物”の進化に、今後も注目したい。
■キンザースキーが受賞の喜びを語る
今回受賞したキンザースキーには、イーファイトから記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。
キンザースキーは「ゴールドジムの製品は知らないですが、そのような副賞がいただけるとは光栄です」と謙虚に答える。
サプリメント使用については「普段は、日常的な基本サプリメントである総合ビタミン以外は摂取していません。競技準備期間中は、最もシンプルなBCAAとアイソトニック(※電解質のスポーツドリンク)を使用しています」と最低限の使用だとストイックに答えた。
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