2025/12/02（火）UP
（最終更新：2025/12/02 21:00）

アイポークで苦しむ王者アスピナル©️UFC

　10月26日、総合格闘技イベント『UFC321』で”エグすぎる”目突き喰らい病院送りとなったUFCヘビー級王者のトム・アスピナル（32=英国）だが、11月30日、自身のSNSで診断書を公開。アスピナルは眼球障害があると診断されており、今後手術が必要になる可能性があるという。

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　試合ではアスピナルと元暫定王者で同級1位のシリル・ガーヌ(フランス)が対戦。第1ラウンド終盤、蹴りを放ちながらガードしたガーヌの前手がの指がアスピナルの両目を突く形に。アスピナルは「見えない」と訴え、レフェリーが試合続行は不可能と判断。試合はノーコンテストとなった。

ガーヌがアイポーク@ChampRDS

　今回、アスピナルがSNSで公開した英国の国民健康保険が発行した診断書には、「アスピナルは10月下旬の試合中に両目に重大な外傷を負った」と記載。診断内容は深刻だ。常に物が二重に見える症状が続いており、目の動きが物理的に制限されている。さらに周辺視野、つまり横方向の視界が著しく欠損しており、格闘家にとって致命的な「横からの攻撃が見えない」状態だという。CTとMRIによる検査では、右目の周りの骨に骨折と、目の周囲の組織の損傷が確認された。

　診断書には「症状が改善しない場合、目の周りへの注射治療または目を動かす機能を回復させるための手術が必要になる可能性がある」と明記されている。アスピナルは11月30日に自身のYouTubeチャンネルで公開した動画で「両目、特に右目がまだ良くない状況だ。今後数週間の経過次第では目の手術の話も出ている」と語っていた。

　アスピナルが診断された「外傷性ブラウン症候群」とは、目を動かす筋肉や腱の仕組みが損傷し、目の動きが物理的に制限される病状だ。通常は生まれつきの症状だが、アスピナルのケースは目突しによって引き起こされたもので、UFCの歴史の中でも極めて稀な重症例とされている。格闘家にとって致命的な視野欠損と複視を伴うこの負傷は、復帰時期が未定というレベルではなく、現役続行そのものが危ぶまれる深刻な内容だ。

しっかりと指が目に入る@ChampRDS

　また診断書には「アスピナルは目の動きの問題と二重に見える症状が完全に治るまで、スパーリング、試合、または格闘技関連の活動を一切してはならない」と記されている。アスピナルは試合後5週間にわたって病院に通い続け、目の専門医の診察と治療を受けているが、いまだに練習再開の許可は下りていない。

　1日に公開したアスピナルの公式YouTube動画の中で、ガーヌを“大きな反則者”と非難し、試合中意図的に目を狙っていたと主張。「最初は偶発的な目突きだと思っていた。だが試合を見返したとき、彼がラウンド中ずっと私の目を突こうとしていたことが分かった。私が彼を危険な状況に追い込める場面のほぼすべてで、彼は指を伸ばして私の目に向けていた」と語った。

　24年7月以来、14カ月ぶりの試合だったアスピナルにとって、この負傷は選手生命を脅かすレベルの深刻なものとなった。UFCのダナ・ホワイト代表は両者の再戦を検討していると語ったが、常に物が二重に見え、横からの攻撃を認識できない状態では、オクタゴンに戻ることすら困難だ。アスピナル本人は復帰に前向きな考えを思っているが、再び1年以上の欠場の可能性も大きいと、複数の海外メディアが予想しており、現状は、現役続行も不透明な状況だ。

　試合後にアスピナルを「大げさだ」と批判していた一部のファンや関係者の声が上がっていたが、今回公開された医学的証拠が皮肉なことに、アスピナルの主張の正当性を裏付ける形となった。アスピナルの早期、回復を祈りたい。

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