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【ボクシング】木村翔の「ライバルかつ親友」が台湾遠征「自分が台湾で勝って青木ジムは再出発」

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2018/09/27(木)UP

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中華圏を拠点に戦ってきた渡邉(右)と有吉将之・青木ジム会長(左)

 9月24日に名古屋で行われた王者・木村翔(29=青木ジム)vs挑戦者・田中恒成(23=畑中ジム)によるWBO世界フライ級タイトルマッチがいかに激しい主導権争いの末、田中が木村から王座を奪取したか、昨日深夜に全国放送されたテレビの録画中継で観た人もいるはずだ。

 王座から陥落してなお、ネームバリューを高める木村の所属する青木ボクシングジムからは、木村と同い年の渡邉卓也(29=青木)が、プロボクシング界では珍しい「台湾興行」でのOPBF東洋太平洋スーパーフェザー級シルバー王座決定戦に向けて、今日から開催地の台北市に入る。29日の対戦相手は来日経験もあるマクサイサイ・シットサイトーン(タイ)。

昨年3月の香港興行にて、プーム・クンマット(左)に勝利した渡邉

 まず「シルバー王座」とは、いわば「銀メダル」と同じ価値(ナンバー2)が目指され、こうした王座が新設される背景には「金メダル」の価値を持つ正規王座を、日本以外の加盟国にいっそう張り合いを持って奪い合わせる狙いがありそうだ。そのターゲットは経済的にもいまだ勢いのある中華圏で、まずはシルバー王座を普及させることで、OPBFそのもののブランド性復活につなげたいのだろう。

 また、台湾におけるプロボクシング文化はこれまで乏しかったが、ご存知の通り、世界屈指の親日として知られる国家。そのため、1970年5月には昨年閉鎖したヨネクラボクシングジム関係者によって、日本人同士のプロ試合を1つ、その前座や前日に、日本対台湾のアマ試合を数試合組むことで、興行が台北市市民体育館で試みられた。

 当時の報告によれば、実に約6000人の大観衆が垂水茂と島田邦明のプロボクシング戦に熱狂したとされている(垂水が7回KO勝ち)。

台湾では今月7日に大きな記者会見も行われた

 その後に台湾ではアマチュアボクシングで異彩を放っていたリン・ミンチャ(台湾)が「ロッキー・リン」を名乗って日本のロッキー・ジムに所属。「台湾人初のプロボクサー」として世界王座にも挑戦した。そのリンも1997年に台湾・高雄市で凱旋試合を行っており、本人曰くその際にも「テレビ局などのバックアップによって約3、4000人の観衆が集まった」とのことだ。

 2000年6月の台北市ではソムサック・シンチャチャワン(タイ)がマイナー団体であるWBF(世界ボクシング連盟)の世界スーパーバンタム級王座の防衛戦を行った記録もあるが(ソムサックがフィリピンのハリー・マカウィン バンにKO勝ち)、基本的には「不毛の地」と言えるほど台湾はプロボクシング文化に欠く。近年に現れた何人かのプロボクサーも、中国本土のマネージメント会社と契約し、上海などで試合を行っていた。

 こうした中で日本人である渡邉がメインイベンターを任された訳には、渡邉が近年、香港を中心に中華圏を試合の拠点にしており、ボクシング技術の発展途上であるこのエリアで、「お手本となる日本」としてのテクニックを披露して来たことが大きい。

24日に行われた田中戦後の戦友・木村

 ただ、渡邉の胸中には、昨年から少なからず「複雑な思い」があったと語る。自身よりも数年遅れてプロ経験を積み始め、自身より遅く中華圏に参戦した木村翔が、昨年7月に上海でWBO世界フライ級王者ゾウ・シミン(37=中国)を11回TKOで破ってから、あっという間に出世争いで先に行ってしまった。今年7月、香港でのノンタイトル戦を3回KOでクリアしたときも、渡邉は「最大のライバルが誰かと言われたら、本音では木村」と口にし、「ボクサーは、第三者からは対戦相手が敵に見えるかもしれないけど、本当に負けたくない相手は実はジムメイトだったりするもの」とも話した。

 一方で渡邉は、木村の思いを誰よりも理解できる親友でもある。体重調整が最終段階であるため、24日の名古屋に行けなったことも後悔していた。渡邉は「ひとまず自分が台湾で勝って青木ジムは再出発。中華圏での試合は、これで6試合連続なので下手に気負うことはない。日本で応援してくれている人たちにいい報告ができると思う」とコメントした。唯一の心配は「接近中の台風だけ」とも苦笑いした渡邉。大会は台北市体育館で、18時半から第1試合開始となる。(善理俊哉)

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