“隻腕”キックボクサー・ピーコック、ハンデを感じさせない高等テクニックが話題に！「障害に苦しむ人の希望に」=ONE

2024/04/09（火）UP
（最終更新：2024/04/09 18:05）

　4月5日にタイ・バンコクで開催された格闘技イベント『ONE FRIDAY FIGHTS 58』のバンタム級ムエタイにて、新城紘平（26=TEAM First Star）に判定勝利した“隻腕（せきわん）のキックボクサー”ジェイク・ピーコック（30=英国／カナダ）。ハンディキャップを感じさせない、その高等テクニックのパフォーマンスが大きな話題を呼んでいる。

【フォト＆動画】隻腕のピーコック、華麗なハイキック！なんと肘打ちも

　今回ONE初参戦となったピーコックは右腕の手と前腕の一部がない。その理由は先天性のもので、胎内にいる時に、胎盤の羊膜が右腕に巻き付き成長することが出来ず、前腕部分が切断された状態で産まれてきたのだ。

　ほとんどの人がその身体でプロ格闘技のトップは無理だと考えるが、ピーコックは違った。イジメをきっかけに7歳で武道を始めると、カナダに移住した14歳の時に極真会館の門を叩く。

　彼はその右腕を生かしたショートレンジのパンチ連打と多彩な足技で、過去には極真空手の北米選手権を獲ると世界大会にも出場。その後、キックボクシングに転向すると、北米スーパーウェルター級王座、1Xヨーロッパスーパーウェルター級王座を獲得。そして、昨年に「Road to ONE」カナダ大会のトーナメントで優勝し、念願のONE参戦を決めたのだ。

　ピーコックのONEデビュー戦の相手は沖縄県出身の新城。彼も同じくデビュー戦で、最後まで諦めず戦い抜く激闘派だ。

　その稀有なバックグランドから、初戦から注目を集めたピーコックだが、その戦いは想像以上のものだった。

　試合は序盤から完全にピーコックの独り舞台。強い圧力で前進しスイッチを繰り返しながら、右腕を前に突き出し牽制、空いたスキを狙って左ストレートを突き刺していく。

　右腕が左腕と比べ短くなることからスイッチすると距離や回転のリズムが変わり、この独特な戦いに、対峙する新城は終始戸惑っている様子だった。

　また中間距離では、ピーコックの極真時代で磨き上げた多彩な蹴り技が炸裂。ピーコックの前蹴り、ローで新城は崩れ、絶妙なタイミングでのハイキックは何度も新城を襲った。

　さらに、その右腕のヒジの箇所も巧みに使い、新城の顔面を何度も肘打ちを食らわせていた。

　結果は判定決着となったが、寧ろ、KO負けしなかった新城のタフネスぶりを称賛すべきほどの完勝の内容だった。

　ピーコックはこの試合の前、英メディア「SkySports」のインタビューで「手足が不自由な人、障害に苦しんでいる人、多くの手を差し伸べるべき人たちが世界中に沢山いる。自分はそんな人たちに向けてのモチベーションや刺激になる、希望の存在になりたい。私の能力に懐疑的な意見があることは知っているが、実際の私を目の当たりにすれば、きっと考えは変わるはずだ」と答えたが、まさに有言実行する形となった。

　本大会を日本で放送するU-NEXTで解説を務めた、元ムエタイ王者で現MMAファイターの雅駿介はピーコックについて「強い。ハンディキャップを感じさせない。独自の戦いと武器が多彩。ONEの本戦に食い込んでいくんじゃないか」と、高評価した。

　今後のピーコックの活躍に注目だ。

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