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■青木はなぜ痛恨のミスを起こしたのか?

ーーでは次に、波紋を巻き起こしている長島VS青木戦なんですが、この試合はどのようにご覧になっていましたか?

「あの試合をやること自体が、今の日本における総合格闘技を象徴しているのかな、と思いました」

ーー迷走しているという意味ですか?

「勝ち負け云々ではなく、あのルールで青木が試合をしなければいけない総合格闘技の状況と言うか……。

 青木はDREAMのチャンピオンです。極端な例ですが、ボクシングの世界チャンピオンがあのルールで試合をやりますかと言ったら絶対にやらないですよ ね。本人もやらないし、協会も絶対にやらせないでしょう。“ウチのチャンピオンに何を言っているんだ!?”となるのが普通だと思います。

 そこは年末のお祭りのようなイベントだから、ということだけで済まされることではないと思いますね」

ーーとは言え、結果だけを見れば青木選手が総合格闘技ルールで長島選手にKO負けとなりました。なぜ、ああいうことが起こったのでしょう?

「いろんなことがあの試合の中では起こったと思いますが、心理的なことが最も影響していたのではないでしょうか」

ーー技術的なことよりも心理的なものですか?

「なぜかと言えば、オーソドックスVSサウスポーで低い両足タックルというのはご法度なんですよ。

 ヒザ蹴りが出来る相手だったら、足をちょっと上に挙げるだけで相手が勝手に入って来てくれるので、自然とカウンターになってしまうんです。

 しかし、おそらく青木は早くテイクダウンしないといけないという気持ちになってしまったんでしょうね。

 1Rは打撃をやる気はなかったですよね。だからこそ2Rで総合になった時 に、自分の土俵だから自分の試合を早く作らないといけないって気持ちになってしまったんじゃないかな。もしあれが普通の総合の試合だったら、青木はオーソ ドックスの相手にあんな真正面から低いテイクダウンには絶対行かないと思います。もし相手が打撃が出来ない選手でもやらないでしょうね。

 胴タックルで組み付いて外掛けで倒すか、片足タックルで入ってそこから両足タックルに変化していくはずです。

 とにかくあのタックルは普通ではやらない技だと思うんですよ。それをやってしまったのは、その時の青木の心理状態が“早く行かなければ”となっていたの かもしれないし、いろんな状況が渦巻いて結果的にああいうことになってしまったのではないでしょうかね」

ーー長島選手の飛びヒザ蹴り自体は、それほど突出した技術ではないですか?

「ただ、青木が前へ出て来る時にバックステップを踏んでいたので、おそらく ヒザのタイミングは計っていたと思います。ヒザではなく右のパンチでも良かった。とにかく正面から入ってくる相手に対しての対処の仕方はちゃんとやってい たでしょうね。そこに青木が吸い込まれるように入っていってしまったと言うか。

 試合だけをよく見れば、なるべくしてなった結末ではあります。ただ、そこに至るまでの気持ちの部分が大きいですね。青木真也があのルールで試合を受けざるを得なかった状況とか、そういうことを考えるとクエスチョンマークです」

ーーベスト・オブ・テクニック試合を上げるとすれば川尻VSトムソン戦になると思いますが、高阪さんはどう見ましたか?

「そうですね。そもそも、トムソンを相手にしてあそこまで中に踏み込んで入ること自体が難しいんですよ。組んだ感じでは“これは倒せるな”と川尻は思ったでしょうが、みんなそこまで入る前の段階で左右の連打を浴びせられたり、前蹴りで突き放されたりしていたんです。

 トムソンはけっこう動きがガチャガチャしているじゃないですか。あれで中に入れなくなってしまうものなんですが、川尻はそこで思い切って中に踏み込んで入っていけた。それが川尻の強さです。

 組み付いてのテイクダウンもしっかり頭を低くしてましたね。トムソンは懐 が深いですが下からあおる様なプレッシャーを掛ければ身体が伸びていきます。身体を浮かしたところで軸足を刈ってテイクダウンする。その刈る足の選び方に しても、反対側の足を刈りに行ってたら逆に投げられていたので、組み付いてからの技術も光っていましたね」

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