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 格闘技TVコメンテーターとして不動の地位を 築く“世界のTK”こと高阪剛が、大みそか『Dynamite!!』を斬る! 波乱の結末で大きな話題を呼んだ長島☆自演乙☆雄一郎VS青木真也、TKが 最も印象に残ったという所英男VS渡辺一久、そして川尻達也が世界に通用する技術を見せたジョシュ・トムソン戦について分析してもらった。(2011年1 月13日up)

PROFILE
高阪剛
(こうさか・つよし)
1970年3月6日、滋賀県草津市出身
高校、専修大学、東レと柔道部に所属
1994年8月20日、リングスでプロデビュー
1995年10月13日、トーナメント・オブ・J優勝
1998年からは日本人として初めてUFCに定期参戦
2004年11月7日、初代スーパーヘビー級キング・オブ・パンクラス王座を獲得
2005年よりPRIDEに参戦
2006年5月5日、マーク・ハント戦で敗れ現役を引退
現在はA-SQUARE代表、チーム・アライアンス代表として
後進の指導や総合格闘技の普及に努める

■渡辺が出していた“殺気”が所の歯車を狂わせた

ーー大みそか『Dynamite!!』で今回もTV解説を務めていた高阪さんですが、最も印象に残っている試合はどの試合ですか?

「渡辺一久VS所英男ですね」

ーーおっ、それは意外なチョイスですね。どのような理由ですか?

「これは個人的な話になってしまうんですけれど、ちょうど選手たちに必要なものは何かということをここ最近考えていたんです。それを2011年はちゃんとやらないといけないなと思っていたところだったんですね。要は“殺気”なんですよ。殺気が相手を下がらせるんです。

 技術の部分で言うと、渡辺君は総合格闘技の試合をやったことがないので何も出来なくて当たり前なんです。

 しかし、殺気を出すことによって相手の予測のつかない方向へ自分が自分の身体を勝手に動かしてくれるんですよ。相手が“何だ、コイツは?”と思うような ことが出来るのは、やっぱり試合中の殺気じゃないかなって考えていたところのあの試合だったので、特に印象に残りました。

 もちろん勝ったのは所なので、所の方が持っているものは上なんですが、自分は選手というよりも格闘家としての殺気を渡辺君に感じました」

ーー一部では試合を盛り上げるために所選手がわざと極めなかったとか、逆にあそこまで形に入りながら極められなかった所選手の技術はどうなんだ、と2つの意見があります。高阪さんはどう思われましたか?

「所がなかなか極められなかったのは、試合中にさっき言った“何だ、コイツは?”という気持ちになったからだと思います。

 選手というのは打撃にしても関節技にしても、自分が得意にしている技が最終的に極まる形を知っているんですね。

 でも、その形になっているのに相手が倒れなかったり、タップしなかったりすると迷うものなんです。今まで100%の自信を持ってやっていた自分の技術が、ひょっとして間違っていたんじゃないか……と。

 そうなると、本当はその技は正しいのに極まらないからポイントを変えてみたり、もう1回同じ技で行っていいのだろうかと迷ってしまい後手になってしまったりする現象が起こるんですね。

 その現象を起こさせたのが渡辺君の“殺気”だと思うんです。勝つことが大前提で、絶対に負けないぞという意地の部分の強さなんですよ。

 所もHERO’Sでペケーニョ(アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラ=2005年7月6日、所が 延長RでKO勝ち)に勝ったことがありましたよね。あの試合では今回とは逆に所が“絶対に負けないぞ”という精神状態だったと思うんです。それが巡り巡っ て所が逆の立場になっていることも面白かったですね」

ーー今まで技術を追求してきた高阪さんが、そういう精神力的なものに注視していることが面白いです。

「もちろん技術は大事です。しかし、あの試合で技術が通用したとは言い切れないじゃないですか。最後の最後で所が極めましたけれど、それまでの段階では所が自信を持って極めに行っている技が通用しなかった。

 技術的な部分で語れば、本当は最初の腕十字で渡辺君の腕が伸びてしまった時点で所の勝ちなんですよね。技としてはそこで終了しているんです。

 それでも絶対に負けないという気持ちでタップしない、なおかつ渡辺君は逃げ方をそんなに知らなかったと思うんですが、自分がどう動いたらいいのかを気持ちが動かしてくれていたんです。格闘家にはこれが大事なところだな、と思って見ていました」

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