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 昨年の大みそか、青木真也や北岡悟が参戦した『INOKI BOM-BA-YE2013』を開催したアントニオ猪木率いるIGF。2014年はさらにMMA(総合格闘技)路線を強化し、MMAの試合をメインにしたシリーズ『INOKI GENOME FIGHT』を行っていく。IGFはなぜMMAに力を入れていくのか。そして現役時代、日本中を熱狂させた猪木会長のプロの興行論&選手の在り方、スター作りとは?(取材日:2014年2月21日)

PROFILE
アントニオ猪木
(あんとにお・いのき)
1943年2月20日、神奈川県横浜市出身
1960年9月30日、日本プロレスでデビュー
1998年4月4日、東京ドームで引退
イノキ・ゲノム・フェデレーション会長
日本維新の会所属の参議院議員

■第1章 UFCがスタートした頃に私は“これは放っておけないよ”と言った

ーー今年のIGFは『INOKI GENOME FIGHT』と題したMMAルールの試合をメインにしたシリーズを年2回、プロレスルールの試合をメインにしたシリーズ『GENOME』を年2回、そして両大会のオールスター戦となる大みそかの両国国技館大会『INOKI BOM-BA-YE 2014』を開催すると発表しました。なぜIGFはMMAに力を入れることにしたのでしょうか?

「原点回帰です。私が現役の時代は何でもありでしたからね。プロレスもMMAも全部まとめて分けずにやる、という」

ーーPRIDEが消滅して以降の日本のMMAをどうご覧になっていましたか?

「ピザパイに例えれば、食いちぎって本当に小さくなってしまったピザパイをまだみんなで食いちぎり合っている状態です。新しいピザパイを持ってくる人が誰もいない。そこでIGFはIGFで独自の路線を行きます。前から言っているように世界戦略ですね。中国から選手が来たり、今度はパキスタンからも来ます。北朝鮮やパキスタンでもイベントも考えていますし、世界戦略へ向けてのアピールをしていきます」

ーー猪木会長はUFCをどう見られているんですか?

「昔、長州力だったかな? UFCなんて別物だと言ったけれど、誰が別物にしたんでしょうね。元々、金網デスマッチはプロレスがやっていたものですよ。もう10何年前の話ですが、UFCがスタートした頃に私は“これは放っておけないよ”と言ったことがあるんです。

 でも、UFCもそろそろ人気に陰りが見え始めてきたと聞きました。人気というのは10年サイクルと言いますが、また次の、エンターテインメントも含めたスターが出てこないといけないんじゃないかな。

 昔はこういうことを言ったと思います。あれは日本人には向かない、と。要するに肉食系過ぎて。馬乗りになって殴るというのは残酷性が売り物のように思われてしまうでしょう。それと技術が高まれば高まるほど防御が上手くなっていきます。そうなると寝たままで膠着する試合が多くなっていきますし、そこはIGFもどうするか考えないといけません」

ーーいま日本人のスター選手不足に悩まされていますが、スターというものはどうしたら生まれるものなのでしょうか?

「ひとつはメディアとの関係。オタク部門はいいですけれどね。昔で言えば力道山、ジャイアント馬場、猪木と考えると、一般にも名前が知られていました。ただ今は、テレビ業界も元気がなくなってしまっています。そうなると、もうちょっとみんなが違う発想でイベントをやらないといけないと思いますね。

 なくなりはしないけれども、新しいものでなければ飽きられてしまいます。よく私のところにも、誰々がいいですねという話が来ます。でも、そんなヤツ名前も知らないよって。その時代時代にファンはついてくるけれども、それが必ずしも時代を担ってくれるわけでもない。

 ファンの目をごまかすことは出来ません。プロですからね。アマチュアなら勝った負けた、点数が多い少ないでいいかもしれないけれど、私たちはプロでお客さんが集まってナンボのもんなんです」

ーー猪木会長はMMAを見て面白いと思われましたか?

「PRIDEが出てきた時は、みんながあれだけ熱狂して選手もオーラがありましたよね。ボブ・サップもそうだし、ノゲイラも凄い技を持っていたし。でも、今は大きい選手がいないでしょう?」

ーーやはりヘビー級なのでしょうか?

「そればかりとは言えませんが、我々の時代はプロレスラーというのは普通の人よりも大きくて、というのがあったじゃないですか。お相撲さんだって、普通の人よりも小さかったらどうするんですか」

ーーそういう非日常をプロは見せないといけない、と。

「プロの定義というのは、我々が歩んできた道で言えば、リングからメッセージを送る。例えば生き様。政治の場にいてもみんなは猪木の生き様、死に様を見ていると思います。それぞれの生き様を見せていかないといけない、それをファンは望んでいるんです」
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