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■五味隆典vs光岡映二の日本人対決がUFCで行われることの意義とは?

ーー他に注目の試合はありますか?

「日本人選手の試合は全て気になりますが、それを除けばメインのライト級タイトルマッチ、フランク・エドガー(アメリカ)vsベンソン・ヘンダーソン(アメリカ)です。

→高阪が「絶対に見に来た方がいい」と言うエドガー(左)vsヘンダーソン(右)

どうしても時間の都合で最初から見に来られない人も、この試合だけは見に来た方がいいですというくらい」

ーーそれくらい価値ある試合なんですね。

「そう思います。この1試合を見るだけでも価値があります。今までは世界中の選手の中で“コイツは超越しているな”と言えるのは一番軽くてウェルター級の選手くらいかなと思っていたんですね。しかし、エドガーのようにライト級であれだけのスピードと MMA(総合格闘技)の試合の展開を5Rやり続ける選手は見たことがありません。後半になればなるほどスピードが増すし、簡単に言えば相手が怖がってしまう動きや技が出来る選手だと思うんです。

 例えば、グレイ・メイナードとの試合(エドガーが4RでTKO勝ち)を見ても、1Rでエドガーがダウンを奪われているんですが、けっこうダメージの深いダウンだったんです。下手をすれば1Rまるまる記憶がないとか、頭がボーッとしたままやっているはずなんですね。ところが、2Rが始まったらケロッとしてそこから試合を修正するどころか、試合の流れを自分に引き寄せた試合がやれて、なおかつそれが最後まで続いていた。あれはよっぽど頭がいいか、バカでないと出来ません」

ーー随分と両極端ですね。

「普通は考えるんですよ。もう1回あれを喰らったら終わってしまうなとか、踏み込むのを躊躇したりだとか、タックルに合わせられたらどうしようかとか。いろんなことを考えるはずなんですが、エドガーは全く躊躇しないんです。それどころかその前にもらった打撃を上手く利用してタックルに入っていたんですよね。試合中にそれが出来る選手は、今まで見てきた中でもウェルターとかミドル級の2~3人しか思いつきません。ライト級でそういうことが出来てしまうのか、と驚きました」

ーーUFCウェルター級チャンピオンのジョルジュ・サンピエール(以下GSP)は、UFCの戦い方における究極の完成形と称されますが、エドガーはそれに匹敵するわけですか?

「いえ、エドガーが完成されているとは思いません。GSPは試合のやり方をもの凄く練って練ってやっていると思うんですが、エドガーはその場のひらめきで試合が成立しているんです。それが出来るフィジカルの強さと、気持ちの強さを持っているんですよね。化け物だと思います。

 今回対戦するヘンダーソンは、今までエドガーがやってきた相手の中で一番フットワークを使うタイプでしょうね。そういう相手に対してエドガーがどう対処してくるかが楽しみです。もちろん戦略は考えてくるんでしょうけれど、エドガーは“起こってしまったこと”への対処能力がずば抜けて高いと思うんです。

ヘンダーソンはカウンターにカウンターを合わせて来ることが可能でしょうし、タックルにヒザ蹴りを合わせても来ると思いますが、エドガーはそれをもらってしまうんじゃないですか。でも、それでダウンさせられたとしてもそこからが強いんです。ですから激戦になると思いますよ」

ーーこれも楽しみですね。今回は選手の負傷があって日本人対決(五味隆典vs光岡映二)も組まれましたが、UFCで日本人対決が行われることにどういう意義があると考えますか?

「今 UFCで戦っている、もしくはこれからもUFCで戦おうとしている五味という見方をするのであれば、光岡という相手を越えられないようだとこの先が厳しいと思います。光岡は抑え込みが強いので、光岡にちゃんとポジションを取られたら五味は逃げるのが厳しいでしょうね。五味にとって簡単な相手ではないし、むしろ嫌な相手でしょう。

 この試合は日本人対決であるにも関わらず、ペイパービュー(有料テレビ放送)で全世界に放映されます。ある意味、チャンスだと思うんですよね。海外の人たちのイメージとしては、今の日本人格闘家のレベルや強さは正直なところ以前よりも落ちていると思うんです。

コアなファンはまだまだいっぱい良い選手がいると言ってくれるかもしれませんが、大多数の週末にビール片手にUFCのペイバービューを見ているような人たちにとっては、今の日本人は大したことがないというイメージがあると思うんですよね。だからその中で、何か伝わるものを2人の試合には残して欲しいなという気持ちがあります」

ーーUFCはアメリカ人同士の対決が多いですが、PRIDEは日本人vs外国人対決があり、外国人対決や日本人対決があって、それで世界の格闘技ファンを熱狂させていたじゃないですか。もしこの試合が今回成功すれば、UFCは世界進出へ向けてさらにステップアップするのではないでしょうか?

「それはそうですが、そんな簡単なものではないとも思います。日本的なスポットの当て方と、本国アメリカがスポットを当てる試合は違うでしょうね。これは今の状況を考えたら、現実的にしょうがない。だからこそ、2人には“大和魂”を見せてもらいたいですね。何か爪あとを残して欲しい。日本で行われる試合ですが、アメリカに乗り込んでいって試合をやるような感覚は忘れないでやってもらいたいです。

 UFCが放映される世界150カ国に、何かを訴えかけて欲しいです。そして、今回UFCが日本で行われることで、結果として日本の格闘技界のちょっとでも底上げの要因になれば、という期待もしています。それを全て日本人選手たちに背負わせてしまうのは申し訳ないけれども、そういう気概を持って臨んで欲しいですね」

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