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2017年1月度・格闘技MVPスペシャルインタビュー 志朗(新日本キック)

■練習中に脱臼した右手のパンチでKO

 勝者総取りマッチのため、決着がつくまで延長が繰り返されるという完全決着ルール。5Rも完全に首相撲の攻撃にチェンジしたバカイペットの前に、志朗は劣勢を強いられた。

「劣勢という感覚はなく、3Rで自分がリードしていたのでドローかなと思っていて、5Rの1分半くらいの時までは延長戦に備えて体力を温存しようと思っていました。でも、時計を見て残り10秒の時に“出し切ろう”と思ったんです。

 それはギリギリの場面で、自分のフィジカルトレーナーやタイ人トレーナーが怒っている声が脳で再生されたからです。サーキットトレーニングの時に“最後は出し切れ”と言われていたり、4Rと5Rのインターバル中にタイ人トレーナーにずっと怒られていたので。それで“出し切ろう”と思って4連打を出したら、それが最後の最後で当たりました」

 バカイペットが組んできたところに志朗の右ストレートが炸裂し、バカイペットが前のめりに倒れるのと5R終了のゴングが鳴ったのはほぼ同時だった。バカイペットは完全にのびてしまい、5R3分10秒、志朗が劇的なKO勝ちを収めた。

「当たった瞬間の感触はなかったんですが、もう立てないなというのは分かりました」と会心の一撃で勝利した志朗は、試合が終わった今だからこそ明かせる話をした。

「試合前から怪我をしていて、素直にホッとしました。試合の3週間前に右手の親指を脱臼してしまい、全然練習が出来なかったんです。3Rの途中から痛かったんですが、もう4・5Rは麻痺していました(笑)。多分、身体の疲労の方が痛みよりも上回っていたんですね。最後は痛みも考えずに打って行きました」

 ムエタイ強豪相手の劇的なKO勝ちに会場は熱狂、この試合の模様は1月下旬にテレビ埼玉でも放映された。しかし、反響は海の向こうのタイでの方が大きかったという。

「タイでの反響が凄いです。現ラジャダムナンのチャンピオンと元チャンピオンから対戦オファーが来ました。勝者総取りだったのがインパクトが大きかったようで。ぜひやりたいと2~3のオファーが来ていますし、タイのジムから僕を所属選手にしたいとのオファーもありました。また、ムエサイアム(タイのムエタイ専門紙)にも載って、タイで一番大きいグループのムエタイプロモーターから一度会おうとの連絡がありました」

 バカイペット戦での勝利により、ムエタイの本場タイで一躍その名を知られることになった志朗。「これからタイでもいい試合を組んでもらえると思うので、厳しいですがそこで勝たないとダメです」とその状況を楽しみにしているようだ。

「元ランカーよりも現役でタイのリングに上がっている選手とやりたい。日本ではファンが見たいカードをやっていきたいですね。1回イギリスに行ってプロモーターと話したんですが、軽量級はもう選手がいないと言われました。僕はもうほぼ全員とやってしまったので、ヨーロッパには相手がいないのでタイ人になるのかな。

 日本とタイならどちらかと言えばタイで認められたいです。タイで紹介される時に、日本人にしては上手い、強いという言われ方なので、タイ人の選手と同じ目線で見てもらえるようになるのが目標です」

 そこで気になるのは、スーパーバンタム級で今一番活躍している日本人キックボクサー・那須川天心の存在だ。志朗は那須川をどう見ているのか?

「本当は江幡(塁=初代WKBA世界スーパーバンタム級王者、志朗とは1勝1分)選手とやりたいんですが、他団体の選手ともやりたいですね。那須川君と小笠原瑛作君(REBELS52.5kg級王者)。この2人が上手いなと思うので、ぜひ戦ってみたいというのはあります。KNOCK OUTにオファーをもらっているので、今まではタイミングが合わなかったんですが多分、今年は出ると思います」

 また、志朗はボランティア活動を積極的に行っている心優しきキックボクサーでもある。

「試合が終わったら、いつもタイの小児施設と熊本の方へ寄付させてもらっています。タイの方は恩返しですね。最初に行ったジムがスラム街にあり、周りの子供たちは親がいない子や恵まれていない子ばかりだったので、少しでも自分が助けられるならとの思いでボランティアを始めました。今回も自分が売ったチケット代金と賞金の一部を寄付しました」

 日本はもちろんのこと、タイでの活躍も今後期待される志朗。那須川天心の前に立ちはだかる日も近いかもしれない。

関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「ISKA世界王者・志朗、強豪バカイペットを完全KO」
・過去のMVP選手一覧 

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