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三階級制覇・武尊の最大の武器は“はったり”やりきる強さ=2018年3月ベストファイターインタビュー

■試合3週間前、右足を痛めて動けなかった

 本来階級が上の選手を相手に、2つのKO勝ちを生み出したのはパンチ力が上がっていたからではないのかと聞くと「頑張って体重も増やしていたので上がっているとは思います。でも半年くらいではそんなに筋肉が増えるものではありません。筋肉って1年で増える限度が決まっているんですよね。この期間で60kgの身体を完璧に作るのは無理だと思っていたので、なるべくそこに近づけるようなトレーニングはしてきました」と、完璧ではなかったがベストは尽くしたという。

決勝では元RISEスーパー・フェザー級王者の小宮山を3R2分2秒でKO

 しかし、不安もあった。試合の約3週間前に行われた公開練習で、武尊は当初の予定を変更して公開練習はやらず、コメントのみとした。その理由は「アメリカ修行でパンチの打ち方が変わったので、それを見せたくない」とのことだったが、実は「あの時は怪我をしていて動けなくて。右足を踏ん張れないくらい痛めてしまっていて動けなかったので、理由をつけてやらなかったんです」と明かす。

「1週間くらい踏ん張れなくて。試合の時はローを蹴られても痛かったんですが、試合中はアドレナリンが出るので痛くても自分から蹴りました。ただ、僕は毎回どこかしら練習で痛めていて、試合の時にはそこまで気にしていなかったです」

 試合中は「自分ではギリギリの戦いをしていた感覚でした。一歩間違えばやられるという緊張感がありました」と言うが、「試合後に、みんなから安心して見ていられたと言われて、そうなんだって思いました」と見ている側の印象とはかなり違ったようだ。

 最も過酷なトーナメントになると覚悟していたが、一夜明け会見では「前回(2016年11月の初代フェザー級王座決定トーナメント)に比べれば無事な方です。前回は交通事故にあったような感じでした。骨折もしていましたし、筋肉断裂もしていました。それに比べればマシな方ですね」だったという。それはなぜか。

「なんでだろう? 前回で学習してそれを意識していたからかもしれません。前回は怪我をする攻撃を出していたので、そこを今回は違う攻撃で散らしたりしていました。トーナメントは1回戦で怪我をしてしまうと、上に上がるにつれて自分が弱くなってしまうので、それを経験していたから巧く作戦をたてられました。例えば三日月蹴りなんかは上手く蹴らないと自分が怪我をしてしまうし、ミドルでヒジやヒザを蹴ると足を痛めてしまうので、そういう部分をうまく調整して出来たのかな。全力でやっているんですが、選択する技をいろいろ違う技にしたりというのが出来ました。それは成長でしたね。前回よりも冷静だったと思います」

 それでも今回のトーナメントは「やり切った、というのはありました」と全力を使い尽くした。苦しみを乗り越えられたのは「ファンの人たちがいてくれたからですね。みんな期待してチケットを買ってくれるのだから、そういう人たちを裏切れないって気持ちがあります。K-1はこんなもんじゃないよ、選手が1人いなくなっても盛り上がるし、それくらいでは潰れないよっていうのを見せたかった」と、ファンを裏切れないとの気持ちがあったからだ。

 武尊はすでに練習を再開。次戦はまだ決まっていないが「すぐにでもやりたいです」と、気力は充実している。「最初は3月大会のためだけに60kgに上げるつもりだったので、今後はどうしようかなって思っていますね。でもベルトを獲ったのでやっていくしかないです。階級が変わって今までやらなかった相手とも戦えると思うので、楽しみではあります」

 今回のトーナメントで武尊は実に29連勝を達成。この連勝記録はどこまで続くのか。同時に、いつか負けるのではないかとの恐怖心に襲われることはないのだろうか。

「それは毎回あります」と意外なことを言う武尊。「それを考えて眠れなくなることもあります。日々考えていますね。その時の周りの反応とか。でも、それも胸に秘めたまま試合に出ていくところもあります。試合直前まで負けることを考えたりするんですが、それも含めて自分の力に変えるというか。

 試合前って自分を追い込めば追い込むほど自信に代わっていくんです。いつもメンタルや身体が追い込まれてきつくなればなるほど安心して来るんです。逆にやり切れていない時、追い込み切れていない時の方が不安になりますね。リラックスしている方が余計に不安になってしまいます。

 今回のようなアクシデントもそうで、僕は逆境に強いってよく言われるんですが、そういう時の方が『これだけきつい状況なのだからよくなるでしょ』って逆に自信になるんです。怪我をしたくはないですけれど、逆に試合前に怪我をしたり身体が疲れていたり、メンタルで追い込まれている時の方が僕は試合では調子がいいです」

 あの魔裟斗も「K-1を背負っていけるスター」だと“ミスターK-1”であることを認めた武尊。まだ26歳。連勝記録とともにその伝説もまだまだ続いていきそうだ。

●受賞者・武尊が喜びを語る

 今回のベストファイター受賞は、ベストファイターの前身である月間MVPと合わせて3度目の受賞となる。そのことについて武尊は、「チャンピオンになった時に毎回もらえているので、今回ももらえて嬉しいです。全ての格闘技の中でK-1を一番にしたいので、こういう全ジャンルの中から一番だと認めてもらえるのが嬉しいです」と語った。

 なお今回受賞した武尊には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。

 武尊にサプリメントの利用方法について聞くと、「最近は疲労回復のためBCAA、ビタミン、グルタミンをよく飲みます」と答えた。

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●編集部オススメ

・ゴールドジム Web site

・試合レポート:K-1全試合結果=2018年3月21日

・過去のMVP&ベストファイター選手一覧

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