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【月間ベストファイター・6月】那須川天心が武尊との世紀の一戦を制してキックボクシング有終の美、ボクシング転向して第二章へ

■完璧な武尊対策と、それを実行できる天心のスキルの高さ

2R、武尊が天心を投げてしまう場面も

 2Rに入ると、ダウンを奪って優位に立った天心は、右ボディやバックブロー、後ろ蹴りなど多彩な攻撃が目立つようになる。ところがバッティングで、天心が右目を負傷。試合中断後に再開されたがダメージは抜けずに、「ちょっと視界がボヤけてしまっていました」と左目を頼りに戦うこととなった。

 このラウンドは珍しく武尊が投げてしまうなど、焦っている様子が伝わってきた。天心は片目でもフットワークを使って難局を乗り切り、最終ラウンドを迎えた。

3R、天心の左が武尊の顔にヒット

 後がない武尊は、圧力が強くなり右フックを放っていく。ときおり笑みを見せながらノーガードで攻撃する武尊タイムが始まろうとしていた。だが天心は、この展開も想定済みで「笑ったらこのパンチが来るとか、そういう対策や癖とかも分かっていた」と相手の作戦に乗らないように工夫した。武尊は接近してのヒザ蹴りを入れ、天心の動きが鈍くなってきたように見えたが、「ヒザ蹴りは自分のヒジの辺りに当たったし、このラウンドだけ足を使わなかった」と説明する。

 最後は足を使わずに戦うということも含めて、陣営側の作戦だったということか。 完璧な武尊対策。それを実行できる天心のスキルレベルの高さ。これが世紀の一戦の勝敗を分けたポイントに違いない。

■第二章のボクシング編でも、誰も歩かなかった道を切り拓くはず

健闘を称え合う天心と武尊

 試合後の天心は、武尊と抱き合い、互いの健闘を称え合った。天心も話しているが、そこには勝者も敗者もいない。東京ドームに5万6千人を集めた2人が勝者だ。90年代、旧K-1が全盛期だった頃、ヘビー級しか大会場を満員にできないと言われていたが、軽量級のたった2人が全ての価値観を覆した。そして、この壮大なストーリーを始めたのは天心だ。彼が行動を起こさなければ、大きな道はできなかった。

 本来は2人がMVPなのだろうが、やはり最初に行動して明確な勝利を収めた天心が、誰よりも栄誉を受けるべきだろう。

 天心のキックボクシング第一章が終わり、次は第二章のボクシング編が幕を開ける。天心にボクシングの話題を振ってみるが、「まだ何も決まってません」と返答があった。予定は未定。人生は何が起こるか分からないから、面白い。そう言っているように聞こえた。第二章のボクシング編でも天心は、誰も歩かなかった道を切り拓いていくはずだ。

■那須川天心がイーファイト月間ベストファイター受賞の喜びを語る

受賞の喜び
「(今回で7回目の受賞)嬉しいですね。殿堂入りすると聞きましたので、最後に受賞できて良かったです!」

(取材/文=松井孝夫、構成・編集=イーファイト編集部)

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