【月間ベストファイター・7月】18歳・松田龍聖がタイ王者をKOしラジャダムナン王者に「キックとムエタイの二刀流で行く」”あの選手”との対決熱望
■KOパンチは「作戦通り」試合中に決めた
2R。クンスックレックは下がりながら、左右ミドルの攻撃を強める。松田は圧力をかけ、詰めてはパンチ。ラウンド前半、松田の右ストレートがヒットし、クンスックレックが一瞬止まる場面があるも、若干クンスックレックのペースで試合が進む。
そしてラスト30秒、松田の左ボディがヒットし、クンスックレックが止まる。松田がすかさず右ストレート、さらに右、3つ目の右がまともにカウンターで入り、クンスックレックが仰向けにダウン。失神し起き上がれず、松田が劇的なKO勝利を挙げた。
松田は「うわ、俺勝った!って。興奮しすぎて頭が真っ白になった」と振り返る。
一方で「2Rの始めに右ストレートが当たって、“入るな”と思った。だから右で倒したのは作戦通り」と狙っていたとも明かす。もっとも「試合前に作戦は考えておらず、試合中に決めたもの。あらかじめ考えていたら動けなくなる、遅くなる」と戦いの最中に組み立てた“作戦”だったと言う。
また「セコンドが、ボディ効いたと教えてくれた。だから“今上行ったら、当たるやんか”と」と、セコンドの声も冷静に聞きながらの状態だったと言う。松田は「冷静? 試合の時は“無”の状態」と答えた。
■近年最大の大番狂わせも「負ける想像が出来んかった」
クンスックレックとの対戦オファーが来た時に、松田は「戦ってみたい」と迷わなかったと言う。
続けて「勝てば一発で有名人になれる。美味しい話。RWSで戦っていれば、最終的にクンスックレックとはやらなあかん。大会側は僕が負けると思って、クンスックレックを知ってもらいたいと思って組んだかもしれないが、思い通りにさせへん」とギラギラの闘志で承諾した。
対戦が決まっても「不安はあったけど、負ける想像が出来んかった」とあくまで強気だった。理由は「相手は41連勝だけれど、僕もプロ無敗。それに僕、自分の実力に自信がありすぎるんで。スピードや、空間の支配力。距離やタイミングを自分が支配出来るという自信がある。映像はほとんど見なかったけれど、負けんやろう」と無謀なまでの強気が後押ししていた。
さらに「この(デビューからの)スピードで彼に勝ったら、革命起きるだろうな」とも。
そして“革命”は起きた。
■ムエタイとキックの『二刀流』戦ってみたいのは…
松田は5歳の時に、現在所属する大原道場へ入門し、空手、キックボクシングを習ってきた。アマチュア戦績は約200戦、獲得したタイトルも「十何個」と生粋のキックエリートだ。
21年8月にNJKFでプロデビュー、連勝を重ねると昨年3月にはHOOST CUPの軽量級絶対王者・滉大を破って日本スーパーフライ級新王者となった。
松田は「最初はRISEやK-1、そっちで行くつもりだった」と当時は日本の大手キック団体参戦を目指していたと言う。
しかし「日本人のほとんどの格闘家が、ちょっと名前が売れてきたらK-1に出ていってという人が多い。でも皆と同じことやってたら“革命”も起きん。皆と違うことをやったろう。ムエタイで1位になれば、キックもムエタイもで、二刀流。自分の武器も増えるやん」とRWS参戦を決意。
今年4月のRWS JAPANでは初のムエタイルールで格上の石井一成と対戦し、大接戦を繰り広げた末にドローと、日本ムエタイ界でも名が広まった。そして今回の大金星、ムエタイ僅か2戦でムエタイのトップ・オブ・トップの座を奪い取った。
もっともファンからは「キックの選手のほうと、戦ってほしいという声が多い」とキックマッチの希望が多いと言う。
松田は「僕がやりたいのは(吉成)名高君なんですけど。RISEのチャンピオンの大﨑(一貴)選手とか、トーナメント優勝した田丸(辰)選手とか」と、 キックとの同時並行“二刀流”も視野に入れる。
RWSは元々、クンスックレックと現ラジャ スーパーフライ級王者・吉成名高との“神童対決”を煽り、日泰のファンも期待していたが、今回松田という存在が割って入ったことになる。
松田に、吉成とはどちらかのベルトを懸けて戦いたいかと聞くと「何でもいい、交わりたい、やってみたい、試合してみたいだけ」とタイトルなどの“栄誉”と別に、ただひたすら戦ってみたいと答えた。
■クンスックレックとの再戦を、タイで行いたい“強気すぎる”理由
クンスックレックとの再戦については「あると思う」と言う松田。
リマッチは相手のホームであるタイ・ラジャダムナンスタジアムで行われる可能性が高いと思われるが「僕からしても、タイでのほうがやりたい」と望む所だと言う。
理由は「タイでは、クンスックレック選手は人気選手。クンスックレック選手が日本で負けたというのは、注目ニュースになっているはず。それだったら“クンスックレックを倒した男”として注目のままタイに行き、そこで勝てば強さの証明にもなると共に、顔も広げられる」と“クンスックレックの敵役”として乗り込み、勝利の暁には人気も奪い取りに行きたいということだ。
松田は「再戦は近々あるはず。もちろん倒しに行く」とリマッチもKO決着で完全勝利するつもりだ。
■松田龍聖が受賞の喜びを語る
今回受賞した松田には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。
松田は「“嬉しい”しかない。今月選ばれたから、次の月も、その次の月も毎回取っていきたい」と毎回のベストファイターを狙う。
使用するサプリは「無い」と、食事のみで調整していると言う。現在は格闘家一本で活動し「週5で朝練・夜練のトータル4時間」を平均で練習していると言う。
松田の次戦はタイでのクンスックレック2か、それともキックか、はたまたvs吉成名高か、期待しかない18歳に大注目したい。
(取材/文=遠藤紘史、編集=イーファイト編集部)
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