【五輪レスリング】吉田沙保里を破ったマロウリス、攻略のカギを明かす
8月18日(月・現地時間)のリオ五輪・女子レスリング・フリースタイル53kg級の決勝戦で、五輪4連覇を狙った吉田沙保里(33=フリー)を破り、金メダルに輝いたヘレン・マロウリス(24=アメリカ)が、米メディアの取材に対し吉田攻略に至るまでの道のりを振り返っている。
これまでに吉田と2度対戦しているマロウリス。1度目は2011年の世界選手権・三回戦で、19歳のマロウリスはわずか1分9秒でフォール負けを喫した。2度目の対決は2012年の世界女子選手権・決勝戦の舞台で、マロウリスは再び吉田にフォール負けで敗れ、銀メダルとなった。
それからリオ五輪まで約3年間、両者は対戦することはなかったが、マロウリスは2013年にコーチに就いたバレンティン・カリカ氏とともに、何度も吉田の試合映像を見て研究を重ねた。時には吉田の考え方や気持ちを知るために、吉田の日本語インタビューを英語に訳してもらい、聞くこともあったという。
マロウリスは「私は何年も吉田選手のことを研究しました。まるで彼女の頭の中に潜り込むように、ただただ彼女が何を考えているのか知ろうと思いました」と振り返っている。そして、こうした研究を続けた末に、吉田攻略のカギに辿り着いたという。
「彼女は他の選手よりも我慢強いです。そして、彼女の対戦相手の多くはパニック状態に陥っています。そういった状況で戦うことに慣れている吉田選手に対して、吉田選手と同じ我慢強さで勝負を仕掛けたらどうなるだろうと考えました」(マロウリス)
マロウリスはレスリングという格闘技の手技・足技といった技術的な部分だけではなく、心理面からのアプローチを吉田攻略のポイントとした。
迎えたリオ五輪の決勝。第1ピリオドで吉田に1ポイント先制を許したが、マロウリスは焦らず勝負に出るタイミングを待った。この時マロウリスは過去に感じたことがないくらい冷静だったという。そして、第2ピリオドに入り、マロウリスは序盤に吉田のバックを奪い2ポイントを返して逆転に成功。終盤には吉田を場外に押し出して2ポイント追加し、4-1で吉田を下した。マロウリスの研究は実を結んだ。
しかし、マロウリスは勝利の喜びを語る一方で、吉田を研究すればするほど、ライバル心とは異なる感情を抱いたことを明かしている。「対戦相手の研究をしていると、その相手に対して敵対心を抱くと思います。でも、吉田選手に関してはそういった感情が芽生えませんでした。彼女から湧き出るレスリングに対する愛情や、彼女がどれだけ競技に自分自身を捧げているかが分かりました。私は彼女に対して深い尊敬の念を抱いていましたし、言葉で上手く説明できませんが、彼女にとても感化されました」と話した。
五輪3連覇、個人戦206連勝という偉業を成し遂げた吉田沙保里。そして、その吉田を破ってアメリカに女子レスリングで初となる金メダルをもたらしたマロウリス。2人の戦いは世界のレスリングに新たな歴史を刻んだ。
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