■第2章　精神状態を良くするためのトレーニングとは!?

――前回のK-1-60kgトーナメントでは圧倒的な強さで優勝。8年間のvs日本人無敗記録を誇るムエタイの超強豪といわれていたゲーオ選手ですが、そういう化け物が相手で試合前に恐怖心はなかったのでしょうか。

「全くなかったです。前回の左右田戦を踏まえて精神的に落ち着くトレーニングをしてきたんです。対策も十分だったので、試合前の控え室の段階から試合中も精神状態はバッチリで何も怖くはありませんでした。これまでの試合を振り返ると、精神状態は良い時も悪い時もあって、良い時はどうして良かったのかと振り返るんですけれど、自分的に納得できる理由がわかりませんでした。でも勝った試合と負けた試合のことを考えて、今回ようやく、自分の精神状態をベストに持っていく方法がわかったので、そうなるように集中してきました」

――精神的に落ち着くトレーニングとは具体的にどういうものをやってきたんでしょうか。

「座禅、瞑想、あとは気持ちを落ち着かせるための時間として読書を取り入れて、心理学などの本を読んできました。座禅は前回の敗戦からやるようになりましたね。トレーナーと相談したところ、良い精神状態を作ることの重要性を教えていただきまして、実際にお寺に言って座禅をやりました。試合前の控え室では、目をつむって教えていただいた集中の仕方や呼吸法をやっていましたね。今回の勝利は本当に精神的な部分が大きかったと思います」

――入場シーンでは笑顔も見せていて凄くリラックスしているように見えました。

「そうですね。入場した時にお客さんの声援が凄くて会場と一体化した感じがしました。入場した瞬間に衝撃波じゃないけれど勇気やパワーをもらって、もう負ける気はしませんでしたね。精神状態が落ち着いている中でああいうふうに声援が来たので、流れ的にはパーフェクト、これ以上ないものだったと思います」

――選手によっては試合前になると「自分は勝つ、負けない」と言い聞かせながら鼓舞するタイプもいますが、そういうこともなかったんですね。

「口笛を吹くぐらいのリラックス状態でした。集中するところは集中して、いつも通りに仲間たちと話をしたりしていましたよ」

――　一夜明け会見では「ゲーオ戦を乗り越えるためには、自分の嫌なことを見つめ直さないといけなかった。その作業は辛かった」と言われていましたよね。

「ひたすら自分の精神的な弱さを見つめ直しました。前回、左右田選手に負けた後は、落ち込むどころか、自分の反省でいっぱいでした。アクシデントと同じなので、負けはしょうがないことなんですよ。負けどうこうの言い訳よりも反省が大事です。あとは普通の選手だと、試合が0からスタートして徐々にペースを上げていって100の力で勝つというのが理想なんですけれど、自分には倒せるパンチがあるので0から100へ急にペースを上げることが出来ます。我慢しながらゆっくりと100まで持っていくというのは自分の感覚にはなく、ペース配分できなかったらもう負けるしかないという状態でした。そういう悪いところはもう自分でもわかっていたことなので、ゲーオ戦では相手にペースを取られないように、判定でも勝てるようにペースを考えていました」

――練習では、藤原あらし選手や卜部功也選手と一緒にゲーオ対策をやられていたんですよね。

「ゲーオ対策としては、あらし選手から教わって凄く勉強になりました。ゲーオはこういうふうにやってくるとか親身になって教えていただきましたね。卜部選手に関しては、ただ世界トップレベルである卜部選手の技術を体感したくて一緒に練習しました。卜部選手とゲーオ選手とではタイプが違っていたんですけれど、ゲーオ対策ではなく一選手として自分の成長のためのものでした」

――あらし選手からはどういうアドバイスがあったんでしょうか。

「パンチに入る瞬間に、間合いをずらしてくるタイ人の小技とかを教えていただきましたね。あとはお客さんが見ていてもわからないようなフェイントのかけ方を学んだりしたんです。今、僕を見てくれている矢口トレーナーと同じアドバイスだったので、二人がそう言うなら間違いないなと思い安心していました」

――ゲーオ選手は再戦をアピールしていました。それは実現しそうでしょうか。

「格闘技界では奇跡的に勝ったとか、疑惑の判定で勝ったとか、そう言われるような試合はよくあるじゃないですか。そういうときの再戦では、前の勝者が圧勝して勝つジンクスが格闘技界にはあるんです。俺は勝って成長できるので今度は圧勝するでしょうね。再戦は全然問題ないです」

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