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【ボクシング】元ヤンチャ少年の木村、中国の英雄にTKOで世界王座奪取

2017/07/29(土)UP

人生を変えた木村のフィニッシュの右。ゾウ(左)はたまらず膝をついた。写真=善理俊哉

 7月28日、中国の上海オリエンタルセンターで行われたWBO世界フライ級タイトルマッチでは、世界初挑戦で同級7位の木村翔(28=青木)が王者ゾウ・シミン(36=中国)を11回2分28秒TKOで破り、大番狂わせで新王者となった。

 ヒット・アンド・アウェイでリズムに乗る王者を、不器用そうに追う木村の背中に、うっすらと“消えきらなかった入れ墨”が見えた。
 20代前半までの自分を「何をやっても不真面目で中途半端にしか取り組めなかった」と振り返る木村は、本庄北高校時代、1年生からインターハイ出場と幸先よくキャリアを積み始めたが、2年生の頃にはすでに部を辞めていた。
 以降の話をあまり語りたがらない木村。24歳でボクシングを再始動したものの、プロデビュー戦ではいきなり初回KO負けを喫している。しかし木村の精神面には変化があった。酒屋のアルバイトで生計を立てながらキャリアを積み、以後は14勝(7KO)2分。そして急転直下のようにこの挑戦プランが舞い込んだ。

 時期尚早の声は絶えなかった。王者ゾウは中国史上初の世界選手権優勝、世界選手権連覇、五輪表彰台入り、五輪金メダル、五輪連覇と多くの金字塔を打ち立ててきた中国の国民的英雄である。しかし、プロ転向後にタッグを組んできた名フレディ・ ローチから自立した現在の戦力には、未知数が多かったのも確かだ。木村陣営は「たとえ完全なアウェイリングであっても36歳のゾウに勝機あり」と踏んで上海に入った。 

採点では王者のゾウ(右)のアウトボクシングが評価されていた。

 試合前半のゾウは、これまでの不向きそうな”ファイター化”から脱却し、全盛期の「ポイント稼ぎ」を彷彿とさせる変幻自在な攻防でアウトボクシング。追いまくる木村に、主導権を握らせた印象を持たせない。
 一方、木村の作戦は絵に描いたような後半勝負だった。採点を考えずにボディブローで相手の体力を消耗させ、8回以降に倒しにかかる――。

 結果的に作戦は成功したとはいえ、予想以上にゾウのポジショニングは巧みだった。木村がイメージしていた「ボディから顔面への連打」を許さない上に、第3ラウンド、偶然のバッティングで負った右目尻の切り傷は、いつ試合を止められてもおかしくないほど深刻だった。

新王者となり、仰向けになって喜ぶ木村と抱き合う有吉会長(右)と対照的にロープにうなだれる王座陥落のゾウ(左)

 流血を気にする木村に、逆転の契機は訪れないか。本人も「そう思いかけた」という第11ラウンド、序盤からのボディ攻めが功を奏したのか、ゾウの動きがいよいよ停まる。木村の放つ右ストレートに反応できない王者を観て、セコンドの有吉将之会長から「人生を変えて来い!」の声が飛んだ。
 「自分は勝つつもりでハードトレーニングを積んで上海に来ました。だからこっちのスタミナはまだ全然余っていたんです」(木村)
 猛然とラッシュし、ロープ際で渾身の右を打ち込むと、ゾウがたまらず膝をついた。フラつきながら立ち上がったものの、レフェリーはストップを宣告。大番狂わせは成し遂げられた。

10Rまでの集計。ジャッジ三者のうち2者はゾウを優勢に

 大歓声から悲鳴、悲鳴からどよめきに変わった会場に、一礼をしてリングを降りた木村は「まだ全然実感が湧いてこない。とりあえず世界チャ ンピオンになったからアルバイトは辞めようかな」と開口一番。
「ようやく人様に胸を張れることができたから、母校で講演会でもやりたいんですけど、廃校になっちゃったんですよ」と庶民的なジョークを言って、目尻の血を拭った。(善理俊哉)

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