交通事故のリハビリで格闘技! 左足切断寸前の大ケガから、アマチュア大会出場まで復活
Text&Photo:T.Niwayama
漫画家、イラストレーター、そして、行列のできる人気ラーメン店『太陽堂』(東京・立川市)の副店主としてマルチに活躍する しらとりだいすけさん(39)。格闘技歴は13年になるが、始めたきっかけは19歳の頃に遭った「交通事故」のリハビリのためだった。左足切断寸前の大ケガを負いながら、アマチュア大会に出場するまでに復活。そして、夢だった漫画家デビューを果たせた理由とは?
切断寸前の大ケガを負った左足で、ミドルを蹴る!
平日の昼下がり。場所は浅草駅から徒歩5分、東京スカイツリーが良く見える隅田川のほとりにあるシーザージム浅草。やや長めの髪を振り乱しながら、黙々とトレーナーのミットを打つ男性。しらとりさんだ。
その動きを見ていると、とても、過去に左足切断寸前の大ケガを負ったとは思えない。軽快な動きはもちろんだが、ケガを負った左足でも躊躇なくミットを蹴れている。練習が一通り終わると、ぜぇぜぇと息を切らしながら、しらとりさんが笑顔で言う。
「いやぁ、写真撮られるのって緊張する! 最近はあまり練習してないんでボロボロでしたね!」
言葉とは裏腹に表情は晴れやか。柔和な笑顔と口ひげが印象的だ。しらとりさんと談笑する歌代トレーナー、宍戸大樹選手。そして、ジムの仲間たち。信頼関係というと大げさかも知れないが、たしかで温かな絆を感じる光景が広がっていた。
19歳の頃、交通事故で左足切断寸前の大ケガを負う
しらとりさんが交通事故にあったのは、19歳の頃だ。
「横断歩道で信号待ちをしていたら、ちょっと手前で、タクシーと乗用車が衝突したんです。けっこうスピードが出ていたので、そのうちの1台がこっちに飛んで来た。それで、車とガードレールの間に左足を挟まれてしまって…。膝より下がぶらんぶらんの状態になって、骨が出て…」
左足すねの脛骨と腓骨が折れ、さらに骨が外に出る“開放骨折”の重症だった。すぐに病院に運ばれ手術。そのままベッドの上で5カ月の入院生活を送る。その後も、入退院を繰り返し、日常生活が送れるようになるまでに計2年を費やすことになる。手術は計7回に及んだ。全身麻酔による手術が3回、半身麻酔が2回、局所麻酔が2回…。
「医者からは、もし歩けるようになったとしても、膝と腰には絶対負担が来るだろうと言われました。まぁ、普通に歩けるようにはならないと覚悟してました」
友人が出場した格闘技大会を観戦し、その戦いぶりに感動
病院でのリハビリが終わり少し経った頃、友人が出場したアマチュアの格闘技大会を観戦する。友人は試合には負けてしまったが、その戦いぶりにしらとりさんは感動。自分でもリハビリに格闘技をやってみようと思い立つ。
門を叩いたのは、その友人も通っていたシーザージム浅草だった。
「シャワーがあってキレイだし、上下関係がしっかりしてて、人間関係がいい。そして、初めての人に優しかった」
足の不安を抱えながらも、わずか2か月でアマチュア大会に出場! その理由は…
「足の不安は正直、すごくあった」というしらとりさんだが、ジムに通い始めてわずか2か月後には、アマチュア大会に出場することになる。
「ケガとは別の話になっちゃうんですけど、漫画家デビューを目指して出版社に持ち込みをしていたら、盗作されたりして自暴自棄になってたんです。それで、もう愕然として、もう何をやっても上手くいかない! 漫画もダメだ! 足も思うように動かない! となって。もう、さんざんぱらヒドイ目に遭って、いいやもう出ちゃえ!って。そしたら、そのアマチュア大会で3位に入っちゃったんですよ。2回か3回勝ち抜いて。それで、オレ、格闘技でけっこうイケる?って勘違いしちゃって、そこからけっこう練習するようになったんです(笑)」
練習に打ち込むうちに、曲がらなかった足首が曲がるように…
とはいえ、その後は、大会に出場するも1回戦負けの連続。「これはもっと真剣にやる必要がある」と感じたしらとりさんは、多い時で週5回ジムに通い1日4~5時間の練習に打ち込んだ。そうすると、準決勝、準々決勝ぐらいまでは勝ち進むようになった。「面白くなってきて、その頃は格闘技ばっかり、ずーっとやってました」。
自暴自棄からの大会出場。そして勝利。オレってイケる? という勘違いから練習に打ち込む。徐々に動けるようになる。試合で勝てるようになる。モチベーションが上がってまた練習に打ち込む…そうした日々を黙々と過ごしているうちに、「ジム通いを始めてちょうど1年経った頃、気が付いたら曲がらなかった足首もだいぶ曲がるようになって、ケガをした左足でもミドルを蹴れるようになってました」。
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