【ボクシング】成松大介が中国シャンに勝ち、リオ五輪代表決定
中国・遷安で3月25日から行われてきたボクシングのリオデジャネイロ五輪アジア・オセアニア予選では、4月2日、成松大介(自衛隊体育学校)が男子60kg級の3位決定戦に勝利。日本ボクシング界の代表第1号となった。
4年前のロンドン五輪では村田諒太(東洋大学職員)が金メダル、清水聡(当時・自衛隊体育学校)が銅メダルを獲得。この五輪で「最もブレイクした種目」といわれたボクシングだったが、今回、リオデジャネイロ五輪での期待は高まらずにいた。
日本にとっての過去最低記録は、五十嵐俊幸(東京農業大学)が繰り上げ出場したのみだった2004年のアテネ五輪だが、今回はそれを下回る“ゼロ”に陥る可能性を危惧されていたほどである。
しかしまったくの脈なしだったわけではない。誰より成松は、国際舞台でも確かな安定感を保ってきた。特筆すべきは2014年のインドネシア大統領杯。清水をフルマークの30対27で破ったことのある2014年仁川アジア競技大会と2015年アジア・ボクシング選手権の2冠王、ドルジヤンブ・オトコンダライ(モンゴル)を逆にフルマークで破って優勝。そして今年1月、成松は清水との予選代表選考会に勝利した。
「今日よりも明日。明日よりも明後日、自分は少しずつ強くなっている。そう信じながら毎日の練習に臨んでいます」
そんな意欲の一方で、成松は「今度の予選は自分にとって最後の試合になるかも知れない」とも話していた。
肘や手首、目尻などにケガの絶えない成松は、精神的にひとつの限界を感じていた。6月に予定されている世界最終予選は、自分ではなく、一般的知名度の高い清水が派遣されるという可能性も感じていたかも知れない。ただし、それらも五輪出場が決まれば別の話だ。
「上位3人が通過」という条件で幕開けしたアジア・オセアニア予選。順調に勝ち進んでいた成松だが、ライバルのオトコンダライにもう一歩で敗れてしまった。3位決定戦での対戦はシャン・ジュン(中国)。技術的には未熟な選手だが、開催国で、大歓声を採点にも後押しされて勝ち上がってきた。
3位決定戦でも、近隣に通う学生たちが応援席に多く集められ、成松にとって完全アウェイの会場が出来上がった。 リスクを承知で成松は前に出た。距離が近ければ被弾は増える。そのたびに会場が沸いたが、さすがに優劣は明白。中盤までを明確に抑えた成松をジャッジたちも支持し、勝者として手を上げられた。
「オリンピックだ!」 リング上でそう叫んだ成松は、退場後にしばらく号泣していた。
「今日は悪いイメージしか頭に浮かばなかった。だからこそいつも通り戦おうと気を付けたし、いいイメージがない分、焦らずに済んだのかも知れない」
夢の五輪まであと4ヶ月。時間は多くないが、さすがに少しだけ休みたいと本音を漏らした成松。だが、トーナメントを制してライバルのオトコンダライが戻ってくると、気持ちを切り替えるように言い残した。 「次のリオで決着をつけよう」
リオ五輪の日本ボクシングも捨てたものではなくなってきた。
写真:ボクシングモバイル/文:善理俊哉
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