【インタビュー・動画】勝つための格闘技医学 応急処置編
――RICEそれぞれの具体的な目的を教えて下さい。
「いかに内出血を最小限に止めるか、その目的のためにRICEを行います。例えば組織が損傷すると、その中にある毛細血管や血管が壊れてしまいます。血管が壊れてしまうと、血液が血管の外に漏れてしまうんです。漏れ出したらその体積が大きければ大きいほど、治るまでに時間がかかってしまいます。逆に内出血の量が小さければ、治るまでの時間は短くなります。仮に内出血しているところを安静にしないまま動かすと、物理的刺激が入ってしまうため、損傷部位に血液がどんどん流入してしまいます。ウエイトトレーニングなどで筋肉を動かすと血液でパンプアップするのと同じように、ぶつけたところを動かすとその後に機能障害を起こしてしまいます。内出血を、『よくあることだから』と放置してしまうと、場合によっては神経を圧迫したり、循環不全を起こしたりする場合もあります」
――そんな大変なことになってしまうんですね。
「その一例として、コンパートメント症候群という障害があるのですが、空手やキック、総合の打撃、また柔道の投げ技などで、下腿をぶつけて腫れてしまうことがあります。下腿は、コンパートメントといって、筋肉、血管、神経がひとつのまとまりを作っており、それらを筋膜がおおう、区画構造になっており、この区画がいくつか存在します。
区画の中で内出血がひどくなると、血管や神経を圧迫してしまい、足先の血流が悪くなったり、足が動かなくなったりしてしまうことがあります(前腕の場合は手)。そうなると、緊急手術を行わないといけません。筋膜切開といってメスを入れ、区画内の高まった圧を逃がし、血腫を外に出す除圧する作業が必要になってきます。これは非常に怖いです。大会の現場でもときどき見られる状況ですね」
――それは恐ろしいですね。格闘技で頻繁に見られる打撲や打ち身でも、放っておくと危険な場合があるんですね。
「そうなんです。僕も選手でしたので、打撲しても、まず動かせるかどうか、動けるかどうかを確認する習慣みたいなものが付いてしまってるんですね。それで悪化する場合があるので、ケガをしたらとりあえず動く、というのは控えていただいて(苦笑)、まずは安静(Rest)にすることで内出血を最小限にします。血管の周りには筋肉があり、筋肉は冷たくなると収縮する性質がありますので、損傷部位を冷やして、血管を収縮させます。冷却(Icing)は、血液が血管外に出るのを未然に防ぐ効果があります。格闘技・武道の試合会場では氷を準備している光景をよく目にするとは思いますが、コンビ二などで溶けにくいロックアイスを各チームで事前に準備しておくことは、トーナメントで勝ち上がっていくために有意義なことだと思います」
――具体的に冷やし方を教えていただけますか?
「冷やし方の基本は約15分冷やして45分は休む。ずっと冷やしっぱなしだと感覚が低下し過ぎでしまって痛みの評価ができなくなったり、皮膚が凍傷になったりしてマイナスの要素が出ますので気を付けましょう。ロックアイスと皮膚の間にタオルを置くのも、良い方法かと思います。
次に圧迫(Compression)なのですが、これは物理的に圧迫して、内出血による組織の腫脹を最小限に止めるのが目的です。腫脹が小さければ小さいほど、そのあとの動きが良くなりますので、循環不全や神経麻痺を起こさない程度に損傷部位を圧迫するのは試合において非常に『使えるテクニック』のひとつです。特にトーナメントの後半、次の試合までの時間が短い場合、損傷部の応急処置と体全体のウォーミングアップどちらも実現しなければなりません。そのような時には、僕のチームではCを中心に行い、アップに時間がかかる冷却の割合を少なくしています。
最後に挙上(Elevation)なのですが、試合会場の控え室では、キックミットやビッグミットなどを積み上げて、損傷部が心臓よりも高いところに位置するように調整し、重力による血液の降下、損傷部への貯留→腫脹を防ぎます」
☆勝つための格闘技医学 応急処置編の動画 | ||
第1弾 打撲、捻挫をした場合
<解説> |
第2弾
<解説> |
第3弾
<解説> |
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