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 10月27日(土)28日(日)東京・国立代々木競技場第一体育館で開催された、NPO法人全世界空手道連盟 新極真会『第44回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』で見事、初優勝を果たした島本雄二。兄・一二三(かずふみ)との史上初となる決勝戦での兄弟対決を制したが、優勝までの舞台裏を聞くと意外な事実が隠されていた。 (取材日:2012年11月4日)

PROFILE
島本雄二
(しまもと・ゆうじ)
1990年1月23日、広島県出身
身長177cm、体重83kg
第27回全日本ウエイト制重量級準優勝
第28回&第29回全日本ウエイト制重量級優勝
第42回全日本敢闘賞
第10回全世界大会7位
第44回全日本大会優勝
新極真会広島支部 初段

■第1章 負傷していた兄の姿を見て「オレも負けられない」と感じた

――優勝おめでとうございます。大会を振り返ってみていかがですか?

「ありがとうございます。まだ試合映像はあんまり見ていませんが嬉しいですね。今後、日本のためにもっともっと強くなっていかないといけないという自覚を持ちました」

――大会前、優勝する自信はどのくらいありましたか?

「優勝する自信というよりは、これだけやったんだから絶対に負けないという気持ちがありました。練習量に関してはこれまでの大会前と変わらないのですが、練習に対する意気込み、そして絶対に勝つんだという気持ちで毎日練習していたので自然に密度も濃くなっていき、試合前には練習してきたことが自信へと変わりました」

――対戦する可能性もあったお兄さんにもそういうことを話されていたんですか?

「そうですね。『何か今回負ける気はせんわ~』と言ったら、『あっそ』みたいな感じでしたけど(笑)。兄から見れば、お前はお前、オレはオレという感覚だったと思います」

――お兄さんとは試合前によくお話をしていたんですか。

「試合が近づいてくると、会話を交わすことはありません。自分で考える時間が多くなりますよね。僕たちは試合に全てをかけるわけじゃないですか。四六時中、どう戦うかなど、イメージトレーニングをやっていました」

――試合前のインタビューでは、プレッシャーは全くないと言われてました。実際はどうでしたか?

「そのままプレッシャーもなく、いい緊張感で臨めました」

――練習してきたことの何%が試合で発揮できましたか?

「練習ではパワーを付けることを課題にしてきたのですが、昨年の全世界大会よりもパワーアップできた感覚はあったので良かったかなと思います。でも全体を通して見ると、もっと一本勝ちしたかったので30%ぐらいでしょうか。優勝したので結果的には良かったのですが、内容はまだまだなので練習して強くなります」

――「塚本先輩のように一撃で倒す技も欲しい」と言われてました。

「もちろん。一撃で倒す技、かつ会場を沸かせるような試合がしたいと思います」

――決勝戦がまさに一撃で倒すという結末でした。

「そうですね。でも後から聞いたところ、兄は胸をケガしていたみたいです。準決勝戦の前からケガをしていたようで、なんか自分の方に近寄ってこないなと思っていたんですよ。試合前は自分のことでいっぱいいっぱいだったので話す余裕はなかったのですが、普通だったら兄から『頑張ろうな』と言ってくるのに、何も言ってこなかったんです。自分も集中していたから、その時は気にしなかったんですけどね。試合では膝が入った瞬間に兄が嫌な顔をしていたので、膝蹴りが効いていたのかなと思っていました。それで突きから膝につなげようとしたんですが、突きが入った時点でもう胸が限界だったようです」

――全日本大会を制覇しても、実の兄を倒したのは複雑な気持ちだったのでは?

「試合のときは兄弟というよりも、自分は一空手家として、兄をただ倒したい選手として見ていました。だから倒した瞬間も『よしっ』という感じでしたね。舞台を降りたら、当然兄の心配をしましたけど、お互いに武道家なので兄弟だろうとなんだろうと関係ないです」

――大会前には決勝戦で対戦しようという言葉はかけあったんでしょうか。

「常々、僕らは大会があるごとに“決勝で会おう”と言っています。周りから見たら、また言っていると思うかもしれませんが、僕らはそれを目標に練習し続けているので今回それが叶って良かったです」

――これまでに地方大会を含めて兄弟で対戦したことはあるんでしょうか。

「5年前に1度だけあります。中国大会で対戦して僕が負けているので、1勝1敗になりました」

――優勝インタビューでは「小さい時から兄を目標に頑張ってきて、いつか兄弟で決勝を戦えることを夢に見てきました。今まで兄の背中を見ながら兄に引っ張ってもらってきていて、もらってきたものは大きい。今回は勝ちましたが、兄を越えるにはまだまだなのでまだ勝ったとは言ません」と言われていたのが感動的でした。

「実はその件なんですが、兄は大会3週間前に膝の靭帯を切ってしまったんです。僕も周りもダメだな、欠場だなと思っていたんですけど、兄は『オレは出る』と言い切っていて、ドクターストップ(全治2カ月)も押し切って今回出ました。せいぜい大会2日目に残ればいいかなと思っていたんですけど、ケガをしていた状態で勝ち上がってきたので、僕も負けるわけにはいかないなという思いがありました。そういう部分でも兄には背中を見せてもらってます。小さい頃から追わせてもらいましたので、インタビューではああいう言葉が出ました。大会中も兄の戦っている姿を見てパワーをもらいましたし、だからこそ決勝戦では負けられませんでしたね」

★第2章「ワールドカップに向けて島本兄弟が強化していくこと」はこちら

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