7月度ベストファイターは矢地祐介、RIZINで3連続KO勝ちの理由

■メンタル的な部分がここまで変わるとは

　これで矢地はRIZIN初参戦から3連続KO勝ち。RIZIN参戦前のKO勝ちが2015年3月で、さらにその前となると2009年9月までさかのぼるのだから、まさにRIZINで“覚醒”したと言えるだろう。その理由を矢地はこう説明する。

「階級を上げたことで全てが変わりましたね。メンタルから身体的なパフォーマンスから全て。日常生活から全てが変わったのでそれが本当にデカい。それプラス、RIZINは日本で一番大きくて盛り上がっている大会なので、極論を言えば勝ち負けにこだわらなくていいや、というか。もちろん絶対に勝ちたいんですけれど、それよりもお客さんが喜んでくれて、自分もせっかくこんないい大会に出させてもらっているのだから自分も楽しもうってマインドになったら、それがいい方向に転がって結果も付いてきた。試合をエンジョイするようになったんです」

　フェザー級（65.8kg以下）からライト級（70.3kg以下）に階級を上げたことで、劇的な変化があったのだという。

「フェザー級時代は2カ月前から減量を始めていたので、1年間で3～4試合やると合計で半年以上節制する期間が続いていたんです。そうなると日常生活からネガティブだし、いつの間にか暗い人間になっていました。それが試合でもモロに出ちゃって、ネガティブだし、覇気もなくて臆病になってしまって。

　それが変えてみたら、周りからも明るくなったねとか試合でもイキイキしているねとか、普段の生活でもなんかポジティブになったよねって言われるんです。それが元々の俺の性格なので、やっと元に戻ったなって感じです。デビューした頃の、あの楽しい感覚が戻ってきましたね。階級を変えてパフォーマンスが変わるのは分かりますけれど、メンタル的な部分もここまで変わるのかと自分でもビックリしています」

　もちろん、技術的な進化もあった。クルックシャンクと北岡を破った強烈なパンチは以前の矢地にはなかったものだ。

「フィジカルトレーナーに俺の長所を伸ばしてもらうトレーニングをやってもらっているのと、ボクシングトレーナーに細かいところ、打ち方とか力の伝え方を指導してもらっています。

　まだ完全に理解したわけではないですけれど、自分の身体を思い通りに使うことを凄く意識してやるようにしています。それが効率のいい動きになってくると思うので。テクニックの向上はもちろんですが、その根本となる身体の動きを意識してやっているんです。

　先輩たちに教えてもらったり、雑誌やらネットで得た情報を自分なりにかみ砕いたり。分かってくると全部のスポーツに共通している部分があって、結局みんな身体の使い方にいきつくんだなって思いました。言葉で説明は上手く出来ませんが、人間の身体って構造はみんな一緒じゃないですか。野球でもサッカーでもその身体を効率よく使うことで成り立っていると思うので、そこを意識してやっています」

　減量苦から解放されて“スーパーヤッチくん”に変貌を遂げた矢地は「オファーがくれば年間何試合でもやりたい」と言うほど精神的にも肉体的にも充実している。

「減量がラクになったので、試合の数をこなせるようになりました。今までは減量に費やす時間とか、身体が元に戻るまでに時間がかかってしまっていたので試合数をこなせなかった。試合で怪我がなくても、気持ち的にも身体的にも平常に戻るまでは1～2カ月かかっていたんですよ。連戦になると、減量に2カ月かかるのですぐ減量じゃないですか、例えば今は8月ですが、10月に試合があったらもう減量を始めないといけない。そうなるとしんどくて試合数をこなせなかったけれど、今はいくらでも出来そうな気がします」

　そんな矢地に今後の大きな目標を聞いてみた。