【月間ベストファイター・4月】伊澤星花がプロ6戦目にしてRIZIN女子スーパーアトム級王座を獲得、その強さとは!?
■切れかけたスタミナと気持ちに思わず悔し涙が
試合を通じてもっとも危うく見えたのは最終3Rの中盤、テイクダウンに成功した浜崎が上四方から腕十字を狙った場面。腕のクラッチが切れて右腕が伸びかけたが、伊澤は身体を回転させて脱出に成功した。試合後、「腕十字ではなくアームバーを狙っておけば……」と浜崎陣営は悔やんだが、流れの中で腕十字を選択させたのは伊澤だった。
「十字を狙いに来る前、十字とアームロックの二択だったときに、アームロックを潰して十字だけをかけさせるような動きを私のほうでしていたので、そもそもアームロックのセットはできなかったんだと思います。ふだんの練習でも、なるべく攻撃をひとつに絞らせて逃げるという練習をしているので」
両腕のクラッチを外され腕を伸ばされかけた場面も、実はエスケープのタイミングを計って自分からクラッチを切ったのだという。
終始冷静に、盤石の強さを発揮しての勝利と見えただけに、試合後、勝利が決まってからの涙が「自分の戦いをやり通すことができなかった」という悔し涙だったと分かったときは、誰もが驚いた。
「2R目の後半に、フロント(チョーク)のような感じで相手の首を持っているときにけっこう力を使っちゃっていて。それで腕がパンパンになってしまい、3R目が始まったときにはスタミナが切れて気持ちも切れかけていたんです。テイクダウンをされたとき、本当はすぐ上になる展開を作っていけばよかったんですけど、妥協してしまって下の展開が多くなってしまった。それが自分の中で悔しくて」
ようやく笑顔になれたのは、控え室に戻り、DEEP JEWELSとRIZIN、2本のベルトを両肩にかけ、チームで喜びを分かち合ったときだったという。
リング上では悔し涙のまま、自身が獲ったばかりのベルトを懸けたGPの開催をアピールした。
「本当だったら笑顔でいう予定でしたが(笑)。やっぱり女子格闘技を盛り上げていきたいと思っているので、そのためにはトーナメントが盛り上がるなって。去年もトーナメントを通して男子のバンタム級がすごい盛り上がりましたよね。このベルトって、やっぱりすごく注目されるので、女子格闘技に注目を集めるひとつになるかなと思って言わせていただきました」
■強さの理由は「柔道やレスリングに頼らない」こと
MMAデビューからわずか1年半で2本のベルトを巻いた。その強さを下支えしているのは、もちろん格闘技経験だろう。4歳から始めた柔道ではインターハイ3位、小学4年から始めたレスリングでも中学時代に全国を制している。だが、伊澤本人は、むしろ経歴に頼り切らないところに成長の理由があると客観的に分析する。
「小さい頃から柔道やレスリングをやってきて、格闘技の動き方、力の使い方が染みついていたのはもちろんなんですけど、逆に『柔道やレスリングに頼らないぞ』というような気持ちが、早く強くなる秘訣だったのかなって思います。
柔道やレスリングと、総合のグラップリングってやっぱり全然違っていて。だから柔道やレスリングは置いておいて、グラップリングをちゃんと練習して、総合だから打撃もあるので、しっかり打撃をおろそかにしない。そんな風に、自分の強みを伸ばすだけじゃなくて苦手なところもしっかり練習して、総合全体で伸ばしていこうとしているのが、やっぱり今の結果に活きているのかなと思います」
MMAを本格的に始めた頃、特に苦手意識を持っていたのが打撃だった。殴られる恐怖感や殴ることへの躊躇があり、目を閉じてずっとガードしているような日々がしばらく続いたという。
「ある時期から考え方を変えたんです。格闘技の試合において、殴ることは攻撃のひとつの手段。相手を痛めつけるというより、勝つための技術・戦術のひとつという意識に変えたら、力まず練習できるようになったし、試合でも無心で打撃を出せるようになりました。最初の頃は必死にパンチを出しても相手の胸の前だったりして(笑)。そこから考えると成長しているなぁと自分でも感じますね」
▶次ページ:「総合格闘技で世界一になる」という生まれて初めて抱いた夢
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