【吉鷹弘の打撃研究室】連載第55回「ヤスユキはいかにして大月晴明をKOしたか」の巻
打撃のスペシャリストである筆者が、話題の試合を題材に打撃技術を分析していく連載コラム。今回は9月16日に『REBELS.38』で行われたヤスユキvs大月晴明の大一番を分析する。筆者が唸ったヤスユキの日本トップクラスの技術とは!?
■ヤスユキにしか出来ない“虚”を突いた打撃
9月16日に後楽園ホールで行われた大月晴明vsヤスユキの一戦。近年まれにみる好カードであり、私も試合前から非常に注目していたこの試合。
大月といえばキックファンなら誰しもが知る、豪腕の倒し屋である。それはただの力任せというわけではなく、洗練され卓越した知能と技術を持ち合わせた倒し屋なのだ。
数年前、チーム吉鷹へ練習に来た際にスパーリングの相手をした私は、大月の打撃技術がどれ程の位置まできているか体感している一人でもある。既に全盛期は過ぎているとはいえ、まだまだ国内のトップレベルに座位している技術はさすがである。
一方のヤスユキ。大月ほどの知名度はないものの、軸が強く、無駄打ちのない打撃の攻防の正確さ、精度の高さは国内でも群を抜いている。昨年、京都で行われたREBELSにて、メインでタイ人と対したヤスユキの試合を初めて生観戦した。
私はヤスユキの見た目以上にある体の軸の力強さ、特に相手と対した際の組み(首相撲)の軸の強さにびっくりさせられた。軸が強い選手は、体の中に無駄なひずみ(ねじれ・伸び・縮みなど)やズレがないため肩に力が入り難く、重心も自然と落ちるため、相手をじっくり観ることが出来るので打撃の起こりを捉えやすく、自然と優れたディフェンス力を持ち合わせられるものである。
タイ人を相手にじっくりと見て落ち着いた戦いを実践し、首相撲になっても崩れることなく対応できるヤスユキは、隙をついて要所要所でカットし難い虚を突くかの様なローを叩き込み、タイ人をKO寸前まで追い込んでいった。
ほとんどの国際戦(対外国人相手)にて何度も首相撲で相手を転がしまくり、絶妙なタイミングの足払いで同様に相手を崩しまくる、今や現役選手ながらレジェンドファイターであるあのセーンチャイとの試合においても、実際に崩されたのは片手(5回)に収まる程度だった。これが如何に凄いことかはセーンチャイの試合動画を観れば誰しもが分かることだ。
それだけでも凄いことなのに、滅多にパンチを顔面にもらわないセーンチャイに対して浅かったとはいえ、何度か左ジャブ、右ストレートを被弾させていた。軸が強く、自身に居つき(両足に重心がかかって動きが止まってしまうこと)がないが故に、自然と虚を突いた打撃を放てるヤスユキしか出来ない技術である。
そんなヤスユキ相手に大月がどんな試合展開をしていくのか、試合前から楽しみにしていたが
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吉鷹弘の「打撃」研究室 第55回 内容
■ヤスユキにしか出来ない“虚”を突いた打撃
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■「ワンツー」と「ワン・ツー」の違い