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【コラム】桜庭和志vsフランク・シャムロック裏話

元WOWOWのUFC中継解説者としても知られる格闘技ジャーナリストの稲垣收(いながき・しゅう)氏が、世界を舞台に格闘技のディープな情報を発信する世界格闘技最前線。
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 10月15日にマリンメッセ福岡で開催された『RIZIN』での桜庭和志vsフランク・シャムロックのグラップリング・マッチで、元WKA&UFCヘビー級王者モーリス・スミスとAACC代表の阿部裕幸氏とともに筆者はフランクのセコンドをしてきた。その経緯と一度も寝技にならなかった理由はこうだ。(文:稲垣 收)

■フランクからのセコンド依頼

 フランクとは20年近く前に『ゴング格闘技』の仕事でインタビューした際に意気投合し、その後カリフォルニア州のマリーナ・デル・レイにあったフランクの自宅や、以前彼が経営していたジムにも行ったし、フランクが来日するたびに一緒にビールを飲む仲となったのだが、先月下旬に国際電話がかかってきて「福岡で桜庭と試合することになりそうなんだけど、誰かセコンドに付いてくれる人はいないかな?」と尋ねられた。

PRIDE時代にファンの誰もが望んでいた“幻のカード”が、時を経てグラップリングで実現した(写真:© RIZIN FF)

「えっ? 桜庭さんはダン・ヘンダーソンと対戦予定だと聞いてるけど……」と筆者が尋ねると、「ダンが怪我したらしくて、俺にオファーが来たんだよ」とフランク。ダンの代打を頼まれた、と言うのだ。

 その時はすぐに、いいセコンドのアイデアが浮かばず、「考えておく」と言って電話を切ったのだが、それから1週間ほどしてまたフランクから電話がかかってきた。

 その時は、ちょうど来日中だったモーリス・スミスと大久保で昼食を食べていた。彼の古巣である全日本キックボクシング連盟の本部とジムがあった大久保の、串焼き屋だった。フランクからの電話は、またセコンドの件だった。

 そこで「フランク、今誰と一緒にいると思う? 電話、代わるよ」とモーリスに携帯を渡した。二人はともにパンクラスに参戦していた90年代半ばからの仲間で、“世界のTK”こと髙阪剛氏とともに「チーム・アライアンス」を結成して一緒に練習して技術を教え合い、フランクはライトヘビー級で、モーリスはヘビー級でUFC王者になったのだ。

 そんなわけでモーリスがフランクのセコンドに付くという話は、すぐその電話でまとまった。

スタンドレスリングのまま試合時間は過ぎ、一度も寝技にはならないまま時間切れドロー(写真:© RIZIN FF)

 だがそれからまた数日してフランクから電話があり、「モーリスにセコンドを頼んだのはいいけど、今回の試合はグラップリング・マッチだ。モーリスは打撃系だから、誰かグラップリングのスペシャリストにもセコンドに付いてほしい。誰か福岡に来れる人はいないか?」と相談を受けた。

 10月15日に福岡に来られるグラップラー? 大会まで10日ほどしかないし、なかなか厳しい条件だ。パッとは思いつかなかったが、メインに出るRENAのセコンドに就くであろうAACCの阿部裕幸代表が思い浮かんだ。

 阿部氏はRENAだけでなくINVICTAアトム級王者・浜崎朱加選手の師匠でもあり、9月のUFCジャパンでクラウディア・ガデーリャを倒して大会ベスト・ファイト賞を獲ったジェシカ・アンドラージや、元UFCヘビー級王者ジョシュ・バーネットら、多くの外国人選手が彼のジムに練習に訪れており、英語も堪能だ。まさに名案である! 

 さっそくフランクに電話でその話をすると、「ぜひ頼んでくれ!」と言われたので、すぐに阿部氏に電話してお願いすると、快諾してくれた。その話をフランクに伝えると、筆者にもぜひ福岡に来て一緒にセコンドや通訳などをしてほしいという。そんなわけで筆者もモーリス、阿部氏とともにセコンドに付くことになったのだ。 ・・・

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