【コラム】UFC二階級制覇のサンピエールに引退の危機
コーチが明かしたビスピン戦の裏の秘話とは?
昨年11月に4年ぶりに復帰し、マイケル・ビスピンに3Rチョークスリーパーで一本勝ちしてミドル級王座を奪取したジョルジュ・サンピエール。かつて”ウェルター級絶対王者”と呼ばれた彼は、この一戦で二階級制覇を成し遂げたが、この試合が最後の試合になる可能性が浮上してきた。長年柔術コーチを務めるジョン・ダナハーが、“カナダの英雄”の健康状態に重大懸念を表明したからだ。ダナハーはビスピンとの激闘前の驚くべき秘話も明かした。(文:稲垣 收)
Photo by Josh Hedges/Jeff Bottari/Brandon Magnus/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images
■試合から1カ月後、重病だったことを告白。王座は返上
11月4日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催された『UFC217』での復帰戦で、ジョルジュ・サンピエール(36=カナダ、以下GSP)、は“マニー・パッキャオの師匠”フレディ・ローチと磨いたパンチでミドル級王者マイケル・ビスピン(38=イギリス)をダウンさせ、最後はチョークで絞め落として一本勝ちし、二階級制覇を成し遂げた。
この試合でGSPはファイトマネー以外に大会ベスト・パフォーマンス賞の賞金5万ドル(500万円以上)を獲得。UFC217のカナダ国内でのPPV(ペイパービュー=有料視聴)契約件数も、8月に行われたフロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガーの“世紀の一戦”のカナダでの契約件数を超え、ジャスティン・トルドー首相から賞賛のツイートを受けたほどだった。
だが、約1ヵ月後の12月3日、GSPは自身のFacebookへの投稿で、重病だったことを告白した。
「ビスピン戦に向けたトレーニング・キャンプ中から抱えていた健康問題が、試合後は良くなるだろうと思っていましたが、悪化してしまいました」と、GSPは書いている。「先週水曜、休暇から帰ってすぐ、病院に行って内視鏡検査を受けました。潰瘍性大腸炎と診断され、今服用している薬が症状を鎮めてくれることを祈っています。今は健康を最優先しますが、私はとても幸せだし、皆さんの応援に感謝しています」と結んだ。
潰瘍性大腸炎は、悪化すれば大腸がんを引き起こすこともある重病で、症状は何年も続く場合があるし、一生治らない可能性もあるという。治療法は薬物療法と、場合によっては手術も必要になる。
GSPからの訴えを受けて、UFCも12月8日には彼の王座返上を発表。
その後GSPのヘッドコーチ、フィラス・ザハビは「ジョルジュは回復してジムに戻るだろうし、ビッグでエキサイティングな試合をするだろう」と楽観的な見通しを語ったが、GSPの柔術コーチのジョン・ダナハーが、彼の病状について深刻な懸念を表明し、引退の可能性もあると語ったのだ。
1月15日にUFC現地解説者ジョー・ローガンが司会するネット番組『ジョー・ローガンのMMAショー』に出演したダナハーは、GSPが今後試合できるかどうか誰にもわからない、と発言した。
「医学的な問題だから、本当にどうなるかは、誰にもわからない」とダナハーは断りつつも、「ジョルジュは腹に問題を抱えている。もちろん進退は彼自身が決めることだが、私は『本当にカムバックしたいのか、ジョルジュ? キミはこれまであらゆる素晴らしいことを達成してきたし、驚くべきキャリアを築いたじゃないか』と彼に尋ねたい」と、病(やまい)を押してまで現役を続けない方がいいのではないか、と問いかけている。
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