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2016年8月度MVPスペシャルインタビュー 長野美香(DEEP JEWELS)

 毎月イーファイトが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2016年8月のMVPは、8月27日(土)東京・ディファ有明で開催された『DEEP JEWELS 13』で結婚・出産から約2年半ぶりに復帰、ピンチに追い込まれながらも大逆転の一本勝ちを飾った長野美香に決定!(2016年9月6日UP)

PROFILE

長野美香(ながの・みか)
1983年12月29日、岐阜県出身
身長161cm 体重52.0kg
CORE王子豊島所属
※詳細は選手名鑑へ

選考理由
1、「ピンチに追い込まれながら大逆転の一本勝ち」
2、「2年半ぶりの復帰戦で見事勝利」
3、「ママアスリートに希望を与える活躍に期待」

選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技の各格闘技雑誌の編集長とイーファイトの全スタッフ
受賞された長野選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。

プロカルシウム 300粒

骨の形成に必要なコラーゲンやカルシウムなどミネラルを含むプロテタイトに、骨の成長を考えたカルシウム、乳果オリゴ糖、CPPなどを配合しました。
マルチビタミン&ミネラル

100%自然素材を使用したビタミン&ミネラルサプリメント。着色料、香料、保存料は一切使用しておりません。
アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒

選び抜かれた8種類の成分。トップアスリート達が使用する回復系サプリメントです。
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贈呈:ゴールドジム

MVP記念インタビュー
試合中に、もうダメだってちょっと弱気になっていたところもあった

■家事・育児と練習の両立は思っていた以上に大変

 タレント活動もしていた端正なルックスで、女子総合格闘技のアイコン的存在として活躍した長野美香。2013年12月に結婚・出産のため現役を引退したが、今回2年半ぶりの復帰を果たした。

「引退した時は現役に復帰するなんて考えていませんでしたし、出産を終えてからも復帰はムリだろうと思っていました。でも妊娠中に10kg以上太ってしまって、出産してからも体重が戻らなかったんですよ。それで産後ダイエットでまたジムに通い始めて、フィットネスのつもりで通っていたんですが、だんだんと試合をするような練習になっていって(笑)。

 基礎運動とかやりたくなってしまって、やっている内にまた試合をやりたいなって思うようになりました。気付いたらスパーリングをしていた、みたいな。なかなか自分の意思では決められなかったんですが、周りに背中を押してもらいました。主人は格闘技をやること自体、最初はあまり賛成していなかったんです。でもだんだんと、やりたいのであれば、と言ってくれるようになりました」

 しかし、復帰するのにはまだためらいがあった。2年半も格闘技から離れ、年齢も32歳になっていた。

「本格的に復帰を考え始めたのは今年に入ってからですね。3月に奄美大島でエキシビションマッチをやったんですが、まずは1度リングに上がってみたいと思ったんです。本当に復帰することを決めたのはその後でした」

 復帰戦の舞台は8月27日に東京・ディファ有明で開催される『DEEP JEWELS 13』に決まった。しかも、メインイベントが用意された。

「家事・育児と練習の両立は思っていた以上に大変でした。主人も同じジムに通っていたので家族で一緒に練習に行って。試合前は主人やジムのスタッフさん、会員さんにも子供の面倒を見てもらって練習していましたが、以前よりも練習時間は全然短いです。1時間半くらいなんですが、この時間しか練習出来ないって分かっているので、集中して出来ているかなって思います。今もいっぱいいっぱいで、一人でバタバタしています(笑)」

 なぜそれほどまでに復帰したかったのか。理由は2つある。

「ひとつは単純に格闘技をやることが好きだったので。今回、改めて感じたのですが、試合は凄いですね。別物です。日常では絶対に味わえない興奮があるので、凄く刺激的なんです。もうひとつは、仲のいい石岡沙織さんも結婚・出産して現役に復帰したじゃないですか。それをやり遂げたというのがあって、頑張っている姿に影響を受けました」

 そして、迎えた復帰戦。対戦相手の藤森祥子はアマチュア大会で経験を積み、満を持して2013年11月にプロデビュー。佐伯繁DEEP代表が“期待の大型新人”と太鼓判を押す実力者である。戦績は4勝1敗で、その内の3勝は関節・絞め技による一本勝ちと打撃によるTKO勝ちでフィニッシュしている。

「あまり練習が十分に出来ていなかったのもありましたし、約3年間のブランクもあって不安だったんですが、気持ちの部分では以前とあまり変わっていなかったかな。ワクワク感、ドキドキ感は変わっていませんでした。以前の5分2Rではなく、今回は5分3Rだったので体力がどうかなって心配もありましたが、それ以上に試合をするのが楽しみだったので、ブランクはあまり気にしていませんでした。不安はもちろんありましたが、それ以上にもう一度試合が出来るとは思っていなかったので、もう一度出来る喜び、リングに上がる嬉しさの方が強かったです」

 だが、喜びに浸る間もなく、この復帰戦で1Rから厳しい現実に直面する。女子レスリングの名門・中京女子大学(現・至学館大学)レスリング部出身の長野は、1年先輩の吉田沙保里らに鍛えられたタックルでテイクダウンを奪ったが、すぐに上を奪い返されたり、上からパウンドを落とされたりと防戦一方になってしまった。

 2Rもタックルでテイクダウンしたところで、藤森が三角絞めの体勢となり、極めさせはしなかったがそのままの体勢で顔面にパンチをもらい続けた。テイクダウン以外はいいところがなく、ピンチの状況が続く。

■もっと練習して強くなりたい

 最終3R。藤森のパンチ連打に追い込まれた長野だが、タックルでテイクダウンを奪うとマウントポジションに。ブリッジして脱出しようとした藤森の腕を取り、得意技の腕ひしぎ十字固めを極めて大逆転勝利を収めた。残り試合時間は約1分半だった。

「最初に腕を取った時は極まり方が浅いと思ったんですよ。これは極まるかな、どうかな、というのがあって。でもここは粘ろうと思って。そうしたら形に入ったかもという瞬間があり、そこで一気に腕を伸ばせば極まると思いました。みんなもビックリしたと思いますが、自分でもビックリしました(笑)。マウントをとって相手がブリッジで逃げようとしたのが2回目だったんです。それで“あ、2回目だ”と思った時に、練習でやっていたことを思い出したんです。それが出せてよかったです」

 勝ち名乗りを受ける長野の頬に大粒の涙が伝った。その涙はしばらく止まることはなかった。長野の胸に去来していたのは何だったのか。

「子供を預けられる時くらいにしか練習が出来なかったので、練習を見てもらった人や相手をしてくれた人、もちろん家族、手を差し伸べてくれたいろいろな人たちの顔が浮かびました。正直、まさかあそこで取れるとは思わなかったし、もうダメだってちょっと弱気になっていたところもあったので、一本取れたのが嬉しかった。それで一気にこみ上げてきたんです」

 実は1R、2Rと劣勢が続き気持ちが折れかけていたという。そこからの逆転劇だった。

「それでも完全には折れていなかったというか、試合を諦めるつもりはなかったんです。藤森さん強いな、どうしよう、とは思っていました」

 この試合の6日後には、早くも2戦目が決定。次はモンゴルへ渡り、9月24日(土・現地時間)モンゴル・ウランバートルで開催されるモンゴル唯一のMMA(総合格闘技)大会『MGL-1』での日本vsモンゴル7対7全面対抗戦に出場する。

「モンゴル人選手がどういう選手かは分かりませんが、写真を見て強そうと思いました。めちゃめちゃ不安です。環境も違いますし、大丈夫かなって。子供を預けられるところがないので、モンゴルには家族で一緒に行きます。主人にはセコンドに就いてもらう予定ですが、子供にもセコンドに就いてもらおうかな(笑)」

 復帰後の目標についてだが、具体的にはまだ決めていないという。それ以前に、やらなければならないことがある、と長野は言う。

「まずは日々の練習です。練習が十分に出来ない部分があるので、もっと練習して強くなりたいというのがあります。もっと努力しないと。試合はやりたいですが、その前に練習をもっとやらないといけないって思っています。

 今は52kgの階級でやっていますが、これはナチュラルな体重なので48kgに落とすか迷っています。タイトル挑戦までは今の段階ではまだ考えられないですね。他の試合を見ていても今のDEEP JEWELSはレベルが高いですし、石岡さんとも月1回練習をしてもらっていますが、強いなって思います。だから、まずは一戦一戦やっていきたいです」

 近年、結婚・出産を経て競技に復帰する女性アスリート、通称ママアスリートは増え続けている。バレーボールの荒木絵里香、フェンシングの佐藤希望など。家族がいるからさらに頑張れるということもあるだろう。もうやりきったと思えるその日まで、長野美香の戦いは続く。

関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「復帰戦の長野美香、腕十字で大逆転勝利」
・過去のMVP選手一覧 

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