【月間ベストファイター・6月】18歳・久井大夢が龍聖倒しKNOCK OUT三冠、キック王者の父・久井淳平からの“覚悟のバトンタッチ”

■父は同階級のキック王者・久井淳平

現役時代の父・淳平氏（右）＝19年3月元山祐希戦

　久井は5歳の頃から、父が練習するジムについていって、キックに親しんできた。

　久井の父は、元西日本統一スーパーフェザー級チャンピオン・元INNOVATIONスーパーフェザー級チャンピオンの久井淳平氏だ。現在は淳平氏をトレーナーとし戦っている。

　淳平氏は34戦20勝13敗6KO1分の戦績を持ち、RISEやNJKF、またINNOVATIONやホーストカップなど幅広く戦ってきた。
　最後の試合は21年11月の［WBCムエタイ日本統一スーパーフェザー級タイトルマッチ］で、王者・山浦俊一に判定負けしている。

　久井は中学、高校でKNOCK OUTのアマチュア3階級制覇すると、22年4月に16歳でプロデビュー。丁度、父のラストマッチと入れ替わりの形になる。

　久井は「中学の頃からプロ一本でやっていくと決めた」と高校に行かずにキックに専念したと言う。
　そして父の淳平氏も自身の選手活動を辞め、久井の“専属トレーナー”に。2人の練習場所は「出稽古にも行くが、基本、工場の狭いスペースでマットを敷いて」行っている。

■18歳での3冠奪取は「覚悟があるからこそ」（淳平氏）

ベルトを獲った淳平氏が肩を組むのは幼き日の大夢

　息子に“選手生活をバトンタッチ”した形になる、淳平氏にも話を聞いた。

　淳平氏は「大夢が中学校を出る前、KNOCK OUTアマチュア大会の応募用紙を見た時の景色をよく覚えている」と振り返る。当時久井は55kgだったが、その時点で55kg、60kg、65kgの3つのベルトを絶対取ってプロになることを淳平氏は描いていたという。
　その後アマ3階級制覇し、2人でプロになってからのプランを考えていた。

　しかし久井が中学卒業前、進路を考える時に“高校に行きながらプロになる”と言ったことに、淳平氏は違和感を覚えた。
　淳平氏は「僕は頑固で、中途半端が許せない人間。大夢に『高校行きながらプロをやるなら、別のジムに行け。自分は練習を見られへん』と告げた」と言う。　そして「100%人生全ベットしてプロをやっていくなら、僕も練習を見る」と選択を迫ったのだ。

龍聖戦でリングインした久井（右）と、セコンドについた父・淳平氏（左）

　その後久井は深く考え込み、2人で練習しながらも口も利かなかった期間が続いた。
　そして2週間後、久井が“俺は高校に行かないでキックをやる”と告げてきた。淳平氏は「覚悟が決まったとわかった。それで自分も引退を決めた」と言う。

　続けて「高校行きながらプロをやったら、キックだけの生活をしている選手と戦った時、その子に勝てない。それであるなら、自分も現役を続ける。でも大夢が、代わりのきく人生がないくらいそれに賭けて、本気でやったならと。この覚悟があるからこそ、今がある」と高校に行きながらプロをやっていたなら、今の久井はないだろうと語った。

■目標は「世界で一番強くなりたい」

大金星の三冠を達成した

　現在18歳の久井は、週6で朝昼晩とトレーニングを積む。朝と晩は淳平氏と練習。淳平氏が仕事をしている昼間は、ランニングやサンドバッグなど自主トレを行う毎日だ。

　久井の現在の目標は「目指すは最強、一番強くなりたい。強いチャンピオンたちを倒していって、団体や世界をまたいで一番になりたい」とナンバーワンの強さを手に入れることだ。

　また久井は3敗しているが、昨年5月の武林風ホァン・チールイ（中国）、今年2月にチュームーシーフー（中国）、また今年4月にクンクメールのピット・サムバス（カンボジア）といずれもアジアの強豪に敗北している。
　久井は「リベンジしたい」と海外勢への借りを返したいとも熱く語った。

■久井大夢が受賞の喜びを語る

　今回受賞した久井には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。
　久井は「嬉しいですね」とシンプルに喜び、サプリメントはアスパラギン酸などを含むアミノ酸や、プロテインを摂るようにしているとのこと。
　また「昼間にお肉を食べるようにしている」とハードな練習にタンパク質を欠かさないようだ。

　久井は8月4日（日）後楽園ホールで行われる「KNOCK OUT×クンクメール 3vs3対抗戦」で、REDルールの「スーパーフェザー級（60kg）戦］でチョット・サレイヴァントン（カンボジア）との対戦を控えている。

（取材/文＝遠藤紘史、編集＝イーファイト編集部）