第18回「芸術点が採点に加味される唯一の格闘技? ハイ&ローキックよりミドルキックが使われる理由」
「ムエタイの魅力、語りまくります」の第18回。今回もムエタイ最大の謎と言ってもいいほど難解な採点について。選手でさえも「よく分からない」と言うほどムエタイの判定は分かりにくい。
現在のムエタイは、ムエタイを支えるギャンブラーたち(彼らの入場料がスタジアムを支えている)の賭け率によって勝敗が左右されることがある、と前回のコラムでは書いた。とは言え、賭け率は実際に目の前で行われている試合展開によって変動するので、まったく的外れの賭け率が出るわけではない。
ムエタイの採点基準について、ボクが格闘技記者の仕事を始めてから本当にいろんな人からたくさんの説を聞いてきた。その数々の説はどれも本当のことだろうが、「なぜそうなるの?」という疑問については分からないことが多かった。数々の疑問が解けてきたのは、本当につい最近のことである。では、ひとつひとつ説明していこう。
「ムエタイはミドルキックのポイントが一番高い」
ムエタイのことを知り始めると、一番最初に知ることになるマメ知識はまずこれだろう。ムエタイの試合において、ミドルキックは最も使用頻度の高い技だ。日本のキックボクシングは圧倒的にパンチの比率が高いが、ムエタイではパンチよりも蹴りの比率が高い。これは採点基準が大きく関係している。
ムエタイには「シンラパ」(芸術)という用語があるように、芸術性を重んじる傾向がある。フィギュアスケートの芸術点ではあるまいし、と思うかもしれないが、ムエタイの採点には様式美が確実に影響しているのだ。世界中の格闘技を見ても、芸術性が採点に盛り込まれているのはムエタイだけではないだろうか?
簡単に言うと、美しい技ほど高いポイントとなる。美しい技とは、まずバランスが崩れていないこと。どれだけ華麗な技を当てようが、当てた後に転倒してしまったらそれはバランスが悪いということになる。バランスがよくてきれいなフォームで技を出すことが、ポイント獲得につながる。
しかし、実はこの芸術性、実によく格闘技の理にかなっているのだ ・・・
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