第24回「貧困からの脱出、一族を養っていくためなど昔のムエタイはまさに生きる術だったのだが…」
「ムエタイの魅力、語りまくります」の第24回。今回はムエタイという世界の厳しさについて。面白いところがいっぱいあるムエタイだが、選手たちにとっては生きていく術であり、一族の生活がかかっている場合もある。ムエタイとは、文字通り全てにおいて“戦い”なのだ。
ムエタイの選手は貧しい家庭の出身が多い。昔はよく「貧困から脱出するために、男はムエタイの選手、女は売春婦になる」などと言われた。実際そうなのだが、決して貧しい人たちばかりではなく、ブアカーオのように中流家庭出身の選手もいる。
しかし、以前は本当に貧しい家庭出身の選手が多く、一族の生活費を稼ぐために必死で戦っていたことがムエタイの強さだったと言う人もいる。大抵は地方のジムからスタートし、いわゆる草ムエタイ(草野球のムエタイ版)で試合経験を積んでいく。すると、バンコクから関係者が見に来て、いい選手がいるとスカウトしてジムにお金(移籍金のようなもの)を払い、バンコクに連れて行って衣食住の面倒を見て選手を育てるのだ。
今から考えるとサッカーと同じで、スカウトマンが地方に行っていい選手をスカウトしてくるのだから、いいシステムだと思う。地方のジムもいい選手を育てれば高い移籍金をもらえるのだから、頑張って強い選手を育てようとする。そこから強い選手が生まれてくるというわけだ。
しかし、ボクがタイへ行った時、あるジムの会長が「地方からガキを買ってきて、俺の選手を育てたいんだよな」と言ったことがあり、そのため人身売買的なイメージを持ってしまったことがある。
実際には選手も花形であるバンコクのスタジアムで活躍したいだろうし、高いファイトマネーを得るためにはバンコクへ出てくるしかない。そのファイトマネーを故郷の家族へ仕送りするなんていう泣ける話もある。家族も離れ離れになるのは嫌だろうが、息子がバンコクで活躍するのは嬉しいだろう。
バンコクのジムにスカウトされれば、衣食住が保障される。選手は練習と試合だけしていればいいのである。ただし、もちろんそんな甘い話ばかりではない。ジムはその選手に先行投資するわけだから、当然のように選手にかけたお金を回収しなければならない。そのため、選手に結果を求めるのだ。結果が出せない選手は、ジムを追い出されて故郷に帰らされるという。
選手はそうなるのが嫌だからちゃんと練習するし、試合でも必死に勝ちに行く。それでも、結果が残せない選手たちも出てくる。そういう選手には厳しい現実が待っており、試合後の控え室で会長やトレーナーから罵声を浴びたり、身体を殴られたりもするのだ。
最も凄かったのは、吉鷹弘がタイ・ルンピニースタジアムで試合をした時のこと ・・・
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