中国のプロボクシング市場はコロナで縮小か、豪腕プロモーターが狙う次の国
世界的に新型コロナウイルスが大流行を起こし、格闘技界も苦しみ続けるばかりだが、ウイルスの出発地点となった中国で、ボクシング界にはどんな影響があったのか。この国でようやく芽生えを迎えたプロボクシング・ビジネスの文化構築に尽力してきたマカオ在住のサムソン・イウ氏に聞いた。
サムソン氏は1999年までポルトガル領だったマカオという特別な都市に住みながら、男子・女子プロボクサーの戦績を記録したウェブサイト『BoxRec』の編集者として中華圏全体を任され、PBC(中国プロボクシング委員会)のディレクターとして、WBAやWBCの地域タイトルやOPBF、WBOのタイトルマッチにおける監督者として、アジア全域で業務を遂行してきた。
BoxRecでは中国のみならず、インド、パキスタン、カザフスタン、インドネシア、台湾、アラブ首長国連邦で設けられる新コミッションの試合の適正さを審査する重要な立場にあり、彼が認めなければ、BoxRecに記録されることはない。
そんなサムソン氏に新型コロナで打撃を受けた中国プロボクシング界について聞いた。
「2012年のロンドン五輪後、ボクシングの米国大手プロモーションとして名高いトップランク社が、中国の大手であるSECAプロモーション社と連携して中国で興行を行うことに決めると、幸先よく中国プロボクシングはすぐにビジネスの機運をつかみ始めました。その後にトップランク社は、中国からいったん退きましたが、今回のコロナウイルス被害が深刻化する直前、久々に中国屈指のリゾートエリア、海口で興行を開こうとしていたんです」
ここでは伊藤雅雪(元WBO世界スーパーフェザー級王者)と中国屈指の全勝ホープとの試合も組まれていたが、ウイルスの“人から人へ”の感染が確認される前後のタイミングで、伊藤選手がケガで出場を辞退。それから間もなくウイルスのリスクが深刻化となり、中国政府は国内のスポーツ・イベントを徹底的にキャンセルさせた。
イベント開催が解禁を迎えても、今後、中国のプロモーターたちが、直面する問題はスポンサー・ロスだとサムソン氏は言う。
「来年以降もボクシング界にV字回復は難しいでしょう。プロモーターは小さな興行から再始動し、大口スポンサーを確保できるようになれば、中国のボクシングの市場はゆっくりまた大きくなると思います。ただ当分、中国で世界タイトルマッチ計画は実現に至らないはずです」
サムソン氏は気持ちを切り替え、中国の後に経済的な台頭が予想されるインドでもボクシングのプロ化に貢献している。
「他の産業と同様、ボクシングでもインドは次の巨大な市場です。彼らはすでにアマチュアで優秀なボクサーを多く保有しており、私にはインドが20年前の中国のように見えるんです」
中国では2004年にゾウ・シミンがアテネ五輪のボクシングで銅メダルを獲得、次いで08年北京五輪、12年ロンドン五輪と続けて金メダルを獲得、プロに転向しWBO世界フライ級王者となった経緯がある。
しかし、インドは黎明期であり、08年より16年リオまで、2つのボクシング五輪銅メダルを獲得。現在も多くの強豪が育っているものの、強力なプロボクシング国家になるためには長い道のりがあるとサムソン氏は言う。「道のりが壮大だからこそ、やりがいがあるんです」と笑顔で続けた。
中国の人口は14億人と世界一だが、昨年、国連は10年以内に現在13億人のインドが中国を抜き人口世界一になると予測している。その市場でサムソン氏の先見は的を得るか。
そしてサムソン氏は「日本はプロボクシングでアジアで最も高い国の1つです。日本との関係を継続し、一緒によい方法でボクシングを発展させたいですね」と日本と手を取り合い、更にプロボクシングを発展させていきたいと語った。
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