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【追悼】大道塾塾長・東孝の最後の取材とメッセージ

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2021/04/05(月)UP

4月3日に他界した大道塾の東孝塾長

 大道塾塾長の東孝氏が4月3日14時35分に胃がんのため死去した。昨年夏から末期の胃がんの診断を受けて闘病中だったという。

 約3ヶ月前に発売された格闘技専門誌の『Fight&Life 2021年2月号』(2020年12月23日発売号)では東塾長と、かつて総本部道場で共に汗を流した山崎照朝氏(格闘技評論家)、佐藤勝昭氏(佐藤塾宗師)が集い座談会が掲載されている。取材は昨年10月中旬だ。

 実はこの企画は、めったにない東塾長からの要望で急遽実現したもので、完成した雑誌を見て大変喜んでいたという。いま思えば、東塾長は自らに死期が迫っていることが分かっていたのかもしれない。そして対談のあと、東塾長から「空手を通じて培ったもの」というテーマの原稿を寄稿し、同じく同誌に掲載。東塾長が後世に伝えたい最後のメッセージだったのだろう。
 このメッセージをここに掲載する。

【空手を通じて培ったもの】東孝(大道塾塾長)

今から約3ヶ月前、昨年12月下旬に発売された『Fight&Life 2021年2月号』に掲載の写真。昨年10月中旬、東氏の企画で対談が行われた。左から山崎照朝、佐藤勝昭、東孝

「空手、道場を通じて培ったもの」と聞かれたなら、私は真っ先に「“理不尽さ”に腐ることなく、努力を維持し続ける心を身に着けたこと」だと思う。今は社会全体が少子化の影響もあり子供に「優しく優しく」と子供を腫れ物に触るようにして育ててるから、子供が困難や障害に突き当たるとすぐに悲鳴を上げて泣き叫び周りに(と言うか親に)訴え逃げ込むのが普通になっている。

従って自分の力でその状況を何とかしようという気迫も習慣も生まれないから、大人になっても障害困難にぶつかったならそれを自分の努力で好転させようという気にはならない。もっぱら親しい周りに不平不満として訴える。しかし、複雑化する現代社会ではみな自分のことで手一杯だったりして、期待した通りのサポートは受けにくい。子供時代のように親に相談しても、一応成長し様々な分野や興味、友人関係の中で生きている子供の問題すべてに応えられる親などいないから、子供時代のようにはいかない。

東塾長、20年10月中旬撮影

そんな時“強くなりたい”という人間の原初的な欲求の世界である武道や格闘技の世界に身を置くことは、みなが他人より抜きんでいたいという欲求から生まれてくる、様々な屁理屈や力関係から“理不尽な”問題が次から次と起こってくる。

それをいちいち「納得できない」とか「俺の考えではそうじゃない」「あの判定は何だ!!」などと言っても何の解決にもならない。みな自分(か自分のグループ)のために活動しているのだ。ただ一途に「アイツよりハッキリ強くなってやる」「絶対に黒帯までは辞めないぞ!」と言った“意地”や所謂“根性”で努力を重ねるしかない。そうすれば少しずつでも成果は出るものだし、たとえ武道の世界で成果には繋がらなくても、別な分野に進んでも「何事もやり抜く」とか「嫌なことがあっても逃げないで前向きに生きる力を身につけたり」するものだ。

そして、そういう姿を見ている周りも「あの人は教条的に『俺のやり方が絶対だ!』とならず柔軟性があるが、一本芯が通っているから信頼できる」となり周りに人が集まってくるものだ。

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