【コラム】名誉の殿堂入りを果たしたUFCの“縁の下の力持ち”J・シルバの功績
UFCで長年マッチメーカー、つまり対戦カードを決める係を務めてきたジョー・シルバが“UFC名誉の殿堂”入りすることは【ニュース】でも報じた。UFCは昨年ズッファ社から世界的芸能マネージメント・グループのWME-IMGに40億ドル(4000億円以上)という天文学的金額で買収されたが、ズッファ社は元々2001年にSEG社からUFCを200万ドルで買い取った。シルバはそれ以前からUFCで働き、ズッファ傘下での初大会で宇野薫のタイトル戦を組んだ男だった。(文:稲垣 收)
ジョー・シルバがUFCへの「貢献者」として「2017年UFC名誉の殿堂」入りする、とUFCが5月14日に発表した。
この「2017年UFC名誉の殿堂入り」のセレモニーは7月6日(木・現地時間)にラスベガスで行われ、その模様はUFCの会員制インターネット・チャンネル、UFC FIGHT PASSで生放送される。これは、7月5日(水)~7月8日(土)までラスベガスで行われるイベント「UFC国際ファイト・ウィーク」の中で行われるもの。「国際ファイト・ウィーク」は今年で第6回目を迎える。
それに先立ち、「2017年UFCの名誉の殿堂入り」する残りのメンバーも発表される。すでに発表されている今年の殿堂入りメンバーは、第2代UFCヘビー級王者のモーリス・スミスと、フェザー級で活躍したユライア・フェイバーだ。
■宇野薫のUFCタイトル戦を組んだ男
「ジョー・シルバは、あらゆる格闘スポーツ史上、最高のマッチメーカーだ」とUFCの敏腕社長であるデイナ・ホワイトも、シルバの功績を絶賛している。
シルバは宇野薫がUFCライト級タイトルに挑んだ大会のマッチメークにも関わった。また、大赤字で瀕死の状態だったUFCを起死回生させ、世界中で大人気のスポーツに生まれ変わるきっかけとなったリアリティ番組『ジ・アルティメット・ファイター』のフォーマット作りや選手選びにも関わった。
少年時代から熱烈な格闘技ファンだったシルバは、UFCがスタートした翌年の1994年、UFCのオフィスに直接電話し、たまたま電話に出た重役を相手に、どうしたら団体を改善できるか、頼まれてもいないのに熱烈な弁舌をふるい、アドバイスした。
当時のUFCオーナーだったSEG社の重役たちは、シルバの情熱と格闘技に対する豊富な知識に舌を巻き、この若者をUFCのコンサルタントとして雇うことにした。当初はパートタイムでこの仕事を続けていたが、シルバはその後、マッチメーカーとなり、副社長にまで出世することになる。
シルバはあらゆる格闘技について調べ上げ、まだ生まれて間もなかったUFCを、どうしたら選手とファンの両方にとって、魅力的な大会に出来るかを何年にもわたって四六時中考え抜き、大きな貢献をしてきたのだ。
彼はジェフ・ブラトニック(ロサンゼルス五輪グレコローマン・レスリング100kg超級の金メダリスト。初期UFCで解説を担当し、UFCコミッショナーも勤めた。すでにUFC名誉の殿堂入りしている)やレフェリーの“ビッグ”・ジョン・マッカーシーとともに、最初の「UFCルールブック」を作るのにも参加した。このルールは後の「ユニファイドMMAルール」(2000年に制定され、現在も使われている北米における総合格闘技の統一ルール。単に「ユニファイド・ルール」と略されることもある)の基礎となったものだ。
「UFCに初期から関わることができ、UFCがこれほどメジャーになるのを見て来られたのは驚くべき体験でした」とシルバは言う。
「私は子どもの頃から格闘技に夢中でした。総合格闘技に内部の人間として関わり、大きな影響を与えることが出来たのは、本当に素晴らしい体験でした。UFC名誉の殿堂入りが出来るのは大きな名誉だし、この素晴らしい旅路の締めくくりとして最高です」
旅路の締めくくり――そう、シルバは昨年のWME-IMGによるUFC買収後、2016年いっぱいで引退したのである。
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