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第2回 桜井“マッハ”速人VSヨアキム・ハンセンの巻

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写真提供:DSE

<ハンセンの打撃を封じた交差攻撃>

 この試合、総合格闘技界でも指折りの卓越した打撃技術を持ち合わせる桜井の技術が、序盤から見事に炸裂する。

 立ち上がり、いつも通りアップライトの重心から桜井が左ローでけん制。そしてハンセンの右フックに対して左フックの合わせカウンターを放つ。 この左フックを合わせるカウンターが実にタイミングがいい。キック系でも、なかなかこの左フックのカウンターを取れる選手はいない。

写真提供:DSE

 それでいて、カウンターを放った後というのは注意が散漫になることが多く、隙が生じがちなのだが、桜井はすぐさま左ストレートを返してくるハンセンに対して確実に右片手甲によるシングルブロックで凌ぎ、クリンチから首投げを放つ。

 攻防がしっかりと制御されており、危ない隙を作らない。この序盤の30秒の攻防で、桜井がハンセンの打撃技術に全く劣っていないということが証明されている。

 その後、コーナー際に四つの状態で押し込まれるも左首投げ風に崩してから、首を取っての左 顔面ヒザを放ち、2・3歩ステップバックしながらハンセンが出てくるところで左ジャブのカウンターを見事にヒットさせる。組みの状態から自らが退いて距離 を取り、結果的に相手を誘った形となって、そこへ出合い頭の左ジャブは実に効果的な攻撃であった。

 一呼吸おいて、虚をついた右内股ロー。このローのタイミングが実によく相手の虚をついてい るため、ハンセンはバランスを大きく崩す。ペースを変えようと 左ストレートを放ってくるハンセンに対して待ってましたとばかり左フックの狙い打ちカウン ターで、桜井はハンセンからダウンを奪った(ボクシング的に言えばダウンなのだが PRIDEではダウンとならず)。右の内股ローで下へ意識をもっていっ て、相手が打ち気に逸るところを左フックのカウンター。実にすばらしい攻撃である。(桜井は修斗時代に、序盤から劣勢であったフランク・トリッグ戦でも起 死回生の逆転の左フックカウンターで勝利を収めている)

 この攻撃パターンで思い出したのが、前・全日本ライト級チャンピオンの斉藤京二氏の攻撃パ ターンである。斉藤氏と同じように桜井の交差攻撃による左フックのカウンターは非常に高度な技術。左フックのカウンターが序盤で見事なまでに決まったため に、ハンセンは自らの打撃技術にかなり自信を無くした。いや、桜井の打撃に対してかなりの警戒心を抱いたように思えた。事実、その後のハンセンのパンチに よる攻撃は腰が死んだ状態で放っているため、いつもの切れ味に欠けていた。

 次に猪木-アリ状態から、スタンドの桜井は右後ろ回し蹴りをハンセンの右足腿へ打ち込む。 この攻撃自体はグラウンドでは効果的な攻撃にならないだろう。しかし、これは次の攻撃への布石であった。スタンドの状態に戻り、さらに桜井は右後ろ回し蹴 り(後ろ回し足払いのような感じ)を右足脹脛の辺りを狙うように放っていく。そして、一旦距離を取り直して右バックハンドブローをハンセンの右テンプル へ。続いてステップバックして間合いを取り、右ロングフックで入っていった。

 この交差コンビネーションも見事である。寝技の状態から右後ろ回しを放ち、スタンドで再度 放ち、回転動作と下への攻撃の残像を相手に残しておいて、すぐさま右バックハンドで顔面を狙う。続いて右側面を3度攻めこんだことにより、ハンセンの右側 に気が傾き、左側の注意が散漫になったという状況判断のもとに右ロングフックを放っていく。これだけ上・下・サイドに攻撃を散らされると、どんな選手でも 攻撃を避けることは容易ではなく、さすがのハンセンも全くペースを奪うことができないのは当然であろう。

<桜井の卓越したディフェンス技術>

写真提供:DSE

 ディフェンス面においても桜井は、常に間合いを取りながら小さく上下に飛び上がるようにステップしているため、スプリング作用が働き、万一、一発クリーンヒットをもらったとしてもその作用で威力を相殺されるため、一発で倒されることはまず無い。

 また、バックステップ、ヘッドスリップによる防御技術においても卓越した技術を持ち合わせ ている。それは、この試合でも見事に証明されていた。後半、ハンセンのワンツーからの左ストレートに対して、バックステップでパンチを殺し、最後の左スト レートをヘッドスリップでかわす。いきなりの左ストレートに対しても右アウトサイドにヘッドスリップしながら右アッパーを繰り出し対応するなど、非常に相 手のパンチが見えており バランスもいいためすぐに反撃に転じることが可能となる。

 いろいろ述べてきたが、試合を総括すると打撃面で完全にパワーで優るハンセンに対して、老練な桜井の技術がそのパワーを見事に完封した試合であった。ポイントを下記にまとめてみた。

①タイミングに優れ、左ストレートにカウンターも取れる威力ある右内股ロー
②左ストレートへの左フックのカウンター
③常時ステップを軽く踏み、相手が出てくればその動き合わせる柔軟で臨機応変な対応力

 まさしくサウスポーがもっとも不得意とするオーソドックスであろう。

 対日本人に無敵を誇るハンセンも、サウスポー殺し技術を持ち合わせる桜井が相手ではペースを奪えず、敗れてしまったことは自然の摂理と言っても過言ではないだろう。

 次の桜井の相手は、大晦日で闘うサウスポースタイルが主の強豪・五味! 如何にして、この 老練な技術をもってして桜井が五味を攻略するのか? 今から非常に楽しみだ。今、五味に勝てるとしたら桜井しかいないと私は観ている。今回の試合のような 戦略、技術を活用できれば桜井にも十分勝機ありと私は観ている。もし可能ならば五味戦に際して、桜井と共に私も対策を練り上げたい。

 難攻不落の力を身に付けつつあり、王道をひた走る五味の前に、総合の中量級先駆者として桜 井にはぜひとも立ちはだかってもらいたい。そして、桜井の時代はまだ終わっていないということをPRIDEファンの前でアピールしてもらいたい。桜井には 老練な技術がパワー・スピードに打ち勝つ! 打ち勝てるということを、世間に証明する義務があるのだから…。

 頑張れ、桜井!! 自らの技術をより練り上げ、頂点を極めろ!

(文中敬称略)

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