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【吉鷹弘の打撃研究室】連載第46回「鈴木博昭はなぜモハン・ドラゴンにKOされたか」の巻

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 打撃のスペシャリストである筆者が、最近の試合を題材に打撃技術を分析していく連載コラム。今回は4月20日に行われた『SHOOT BOXING2013 act.2』で、モハン・ドラゴンに逆転KO負けを喫した鈴木博昭の敗因を分析する。最初にダウンを奪い、試合を優勢に進めていた鈴木はどこで罠に陥ったのか!?
※試合レポートはこちら→

▼セミファイナル(第9試合) エキスパートクラスルール 65.0kg契約 3分3R無制限延長R
○モハン・ドラゴン(ネパール/士魂村上塾/MA日本スーパーライト級王者)
KO 1R2分51秒 ※右フック
●鈴木博昭(ストライキングジムAres/SB日本ライト級王者)

■鈴木の作戦とモハンの隙をついたパンチは見事だった

 数多くの国際戦で強豪外国人との対戦も経験してきた鈴木だが、これほど一発のパンチの破壊力に長けた相手との対戦はおそらく初めてのことだっただろう。それだけ、MA王者のネパール人、モハン・ドラゴンのパワーは凄まじかった。結果はご存知のとおり、鈴木の1R逆転KO負け。

 格闘技に「もしも……」はないが、鈴木がダウンを先にモハンから奪っていなければ、と思えてならない。

 序盤、モハンのパンチを警戒して、いつも以上にブロックを固める鈴木はパンチャーを攻略するオーソドックスなスタイルを選択して攻め込んでいく。ブロックを固めてモハンのパンチをブロッキングした後、左ローを返して前足を潰していくスタイルだ。

 パンチャーは基本、前足にウェイトが掛かっていることがほとんどで(前足にウェイトが乗っているからこそ、体重移動を活かした強いパンチにつなぐことが出来る)、パンチを放った後はパンチに力がある選手ほど前足へのシフト・ウェイトが大きく、ここにローを放たれるとカットすることは困難。さらに大腿部の角度(膝を曲げた大腿部の角度)が最もローが効く角度と合致するため、ローを被弾すると数発で致命傷になりかねない。

 パンチのブロッキングから鈴木の左ローが3発クリーンヒットした時点で、少なからずダメージを負っていたモハン。

 このままローキックだけを丁寧に蹴り込んでいけば完全に鈴木ペースとなり、3Rの後半、鈴木がつかまえきるのではーーと思っていた矢先に、モハンがパンチを打つ“タメ”の隙間をついた鈴木会心の左ストレートがヒットし、パンチの得意なモハンから逆にパンチでダウンを奪う。

 モハンはストレートも織り交ぜるものの、基本はフック系の外からのパンチで止めをさすタイプなので、パンチを繰り出す前に体内に「タメ=捻り」を自然と起こしてからパンチにつないでいる分、微妙にコンマ数秒パンチのテンポがずれてしまう。

 その隙をついたからこそ鈴木の左ストレートはヒットした。このパンチの狙いは見事だったし、ロー一辺倒になってしまったら逆にローを放つ機会を自ら逃してしまうという判断のもと、左ストレートをローの合間にいれたことも良い判断ではあったのだが……。

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吉鷹弘の「打撃」研究室 第46回 内容
■鈴木の作戦とモハンの隙をついたパンチは見事だった
※以下会員の方のみご覧になれます。
■致命的な攻防の選択ミスがあった、それは……

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