井上尚弥、統一戦決裂も年末へ向けスパーリング三昧の日々=9月度ベストファイターインタビュー
毎月イーファイトが取材した大会の中から決める格闘技月間ベストファイター賞。2017年9月のベストファイターは、9月9日(現地時間)にアメリカ・カリフォルニア州カーソンのスタブハブセンターでWBO世界スーパーフライ級タイトル6度目の防衛に成功した井上尚弥に決定!(2017年10月24日UP)
PROFILE
井上尚弥(いのうえ・なおや) |
選考理由
1、「初のアメリカ進出で、同級7位アントニオ・ニエベスにTKO勝ち」
2、「14戦全勝(12KO)と連勝記録も更新」
3、「今後も日米を股にかけた活躍が期待される」
選考委員
格闘技雑誌Fight&Lifeとイーファイトの全スタッフ
受賞された井上選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムベストファイター記念インタビュー
「次にアメリカで試合をする時は日本で戦っていると思って試合をする」
■アメリカ側から持ちかけられた米国デビュー戦
かつてない強さを持つ少年。井上がボクシング界でそう絶賛され始めたのは、中学時代の第1回全国U-15大会で優秀選手賞を受賞し、その勢いで高校1年目のインターハイも制した頃だった。その後の2012年ロンドン五輪アジア最終予選では、決勝戦でビルジャン・ジャキポフ(カザフスタン)に敗れて通過を逃したが、強豪国のベテランを相手に、日本の高校生が食い下がる光景自体、ボクシング関係者にとっては目を見張るものだった。
同年7月のプロ転向会見で、所属先となった大橋ボクシングジムの大橋秀行会長は、井上を「“何年に1人”の天才というくくりを超えた“怪物”の印象を受けた」と売り込んだ。井上が世界的に“モンスター(怪物)”と呼ばれるようになったルーツはここにあるが、当時はこれを誰より本人が「大げさだ」ともどかしそうにした。
井上と同等の素質を持ったボクサーはおそらく過去に何人も、日本にいただろう。しかし井上はその誰よりも環境に恵まれた。ボクシング界が小中学生に実戦を行わせる本格始動の時期に、井上は家族一丸でボクシングに取り組めた。
「小中学生の育成システムが確立されたのは、自分が高校に入ったあとくらいからです。自分より完成度の高い選手はこれからもっと出てきますよ」
実績を見れば、井上の言った 通りになった現在がある。しかし井上は井上で「怪物」の異名にそん色なき成長を続け、いまだファンや関係者を驚かしている。
それはリング上に限ったことではない。テレビのバラエティ番組などに出演した際も、井上は堂々と己の経験を語り、しばしばジョークで笑いまで取ってみせる。以前の井上は、大橋会長に「高級車」と表現されていた。その「製造業者」が指導タッグを初期から組んできた父の真吾さんであり、大橋会長は「セールスマン」になりたいと言った。つまり、本人にスポークスマンの役割は任されていなかったのだが、現在の井上は明らかに饒舌になった。
「色んなところに招待していただくと 色々な角度から色々なことを聞かれます。そうすると、自然に答えるのに慣れてきました。それに、もう24(歳)ですからね」
いつまでも子供扱いしないでくださいよと言わんばかりに、井上は苦笑いを見せた。プライベートでは、2015年12月に結婚。今月5日には第一子となる長男も授かっている。
しかしそんな井上を再び「少年」、ただし「モンスターのように強い」とギャップを楽しむかのように形容した国がある。それが格闘技エンターテイメントの国、アメリカだ。2014年末、フライ級で16度、スーパーフライ級で11度の世界王座防衛に成功していたオマール・ナルバエス(アルゼンチン)から、WBO世界スーパーフライ級王座をわずか2ラウンドで奪った試合が、この国のボクシングフリーク の間でも広く「拡散」した。
さらには「八百長だ!」、「グローブに鉄板でも入れているんじゃないか?」という疑惑まで多く飛び交う。本当の実力を確かめたい好奇心もあって、今回の試合も、井上側ではなくアメリカ側から持ちかけられたという。
そこにはもう一つの好都合がそろっていた。軽量級らしからぬ破壊力で快進撃を続けてきた前WBC世界同級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア※以下、通称でロマゴン)がシーサケット・ソールンビンサイ(タイ)へのリベンジに成功し、井上戦をクライマックスに持ってくれば、あまり軽量級に関心を持たぬアメリカ人たちにも「スーパーフライ級劇場」が受け入れられると期待できたからだ。だから井上は言う。
「今回、アメリカに行けたのはロマゴンのおかげです。ロマゴンが先に舞台を切り開いてくれなかったら、自分はずっと、日本でいかに活躍できるかにこだわり続けていたかもしれない」
・次ページは初のアメリカ進出と今後のこと
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