ラジャ王者KOでトップ証明した日菜太、32歳にして実力を維持するための工夫とは=2019年2月ベストファイターインタビュー
毎月イーファイトが取材した大会の中から決める格闘技月間ベストファイター賞。2019年2月のベストファイターは、2月17日に開催された『PANCRASE REBELS RING.1 NIGHT』でラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王者シップムーンKOしてREBELS 70kg級王座3度目の防衛に成功した日菜太に決定!(2019年3月25日UP)
PROFILE 日菜太(ひなた) |
選考理由
1、「T-98、緑川創に勝った現役ラジャ王者シップムーンにKO勝ち」
2、「32歳となった今でも70kg級トップの実力を証明」
3、「ベテランとしてREBELSと日本のキックボクシング界をけん引する」
選考委員
格闘技雑誌Fight&Lifeとイーファイトの全スタッフ
受賞された日菜太選手には、ゴールドジムより以下の賞品(アルティメットフレキシジョイントUC-2 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アミノ12パウダー 1個と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムベストファイター記念インタビュー
「32歳ですがまだ成長しているんじゃないかなって」
■久々に自分が負けるんじゃないかっていういい緊張感
国内-70kg級を長きにわたってけん引してきた日菜太が、現ラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王者シップムーン・シットシェフブンタム(タイ)を挑戦者に迎えたREBELS 70kg級王座3度目の防衛戦。
シップムーンは2017年5月に、日菜太と同門のT-98を破り、ラジャダムナンスタジアム認定スーパーウェルター級王座を奪取して以来王座に君臨し続けている。今年6月には元日本ミドル級王者・緑川創の挑戦も退けており、日菜太が日本最後の砦となった。
「T-98にも緑川にも快勝して強い王者だと聞いて、それに勝ったら得られるものも多いんじゃないかと思い、僕は全然勝てるんじゃないかと思って『はい、受けます』と返事しました。でも、僕を昔から見てくれているタイ人トレーナーのターちゃん(パヤックレック)が今回も試合1カ月前から来てくれたんですが、来た時に『厳しい試合になる』と言われました(笑)。
相性も良くないし、テクニシャンだからすかされる可能性もあるので厳しい戦いになると試合前にずっと言っていて。だから本当に今回はいい練習が出来ましたね。久々に自分が負けるんじゃないかっていういい緊張感で。最近の試合前っていつも、日菜太が勝つんでしょう、みたいな雰囲気の中で練習も試合もさせられていた感があったんです。負けたら負けたで、なんで負けたの? みたいな感じになっていたのも大変だったし、久しぶりに前評判が厳しいという中で戦えたので日々いい緊張感だったと思います」
日菜太もシップムーンもサウスポースタイル。ミドル&ローと積極的に蹴りを放つ日菜太に、シップムーンは距離を詰めてパンチの打ち合いに持ち込んだ。2Rになるとシップムーンが前進してパンチ連打から組んでのヒザ蹴り。日菜太は蹴りが封じられ、パンチ勝負を強いられる苦しい展開に。
しかし3R、日菜太の左ローでシップムーンはバランスを大きく崩す。そこへ日菜太はパンチ連打から左ローを決めるとシップムーンはたまらずダウン。そのまま立ち上がれず、日菜太がKO勝ちで3度目の防衛に成功した。
この試合を振り返った日菜太は「僕はローかボディか顔へのパンチで倒す気満々でした。その3つのうちどれかで倒すと自分の中で思っていました」と、ローで倒すことは選択肢の中にあったという。
「2Rの後半にもうローが効いているのは分かったし、2Rに向こうが凄く前に出てきたのは僕のローとパンチをもらいたくないから。その分、2Rは厳しいラウンドでしたね。もしそこでダメージを負わせることが出来ていなかったら3Rもあのままになって、僕が下がっているように見えてしまうから判定になったら危ない可能性もありました。相手が前に出て勝負をかけてきた時も、腹と足を効かせられたので2Rが勝負のラウンドだったんじゃないかなって思います」
2005年6月にプロデビュー以降、日菜太の代名詞は“黄金の左ミドルキック”だった。左ミドルを連打して圧倒するスタイルで、HAYATO、城戸康裕、山本優弥といった格上選手たちを次々と撃破。2010年7月には魔裟斗をダウンさせて苦しめたアルトゥール・キシェンコを左ミドルの変形技・三日月蹴りでKOした。
しかし、2013年3月にロサンゼルスで試合をした時に、すでにローキックにも開眼していたという。
「アメリカへ行った時にサウスポーをローでKOしています。ローを効かせて最後は顔へのパンチでしたが、サウスポー相手にローは僕の中でひとつの武器になってきました。あとは今回、相当パンチで勝負が出来たのは自分の中でのいい自信になりましたね。試合前から作戦はローとボディをしっかり効かせて嫌がらせて最後は顔面パンチで倒すってイメージがあったんです。ボディブローも上手く出せていたし、前のように同じ技を1個しか出来ないとかではなく、散らすことが出来るようになったので、そういう意味で32歳ですがまだ成長しているんじゃないかなって。
今もミドルキック連打は出来ると言えば出来るんですが、それ以外の技でパンチとかもだんだんと出来るようになってきたので、今はパンチにも凄く自信があります。ミドルはもちろん、ローもハイも僕より強く蹴れる選手は70kgにはなかなかいないんじゃないかなって思いますね。ムエタイの蹴りの選手を相手に蹴りで倒したので、今回はいい自信にもなりました」
技のバリエーションを増やしたのは、左ミドル一本では世界で勝てないと感じ取ったからなのかと聞くと、「それもありますが」と日菜太は言葉を続けた。
「あとは年齢ですね。年をとったし、昔のようにバカみたいに練習が出来なくなったし、同じことばかりを繰り返す練習が出来なくなったのもあったので、いろいろなことをやらないといけなくなった。研究もされていますからね。ストレートしか投げないピッチャーみたいになっていたので、カーブを投げたりスライダーを投げたりしないとストレートが生きなくなってしまうのと同じです」
ローキックをどう磨いたのかと聞くと、意外な答えが返って来た。
「ミドルを蹴ることが出来ると、ローも蹴れるんですよ。簡単なことです。ひとつの蹴りの基本がしっかり出来ていればそのポイントを変えるだけなので。ミドルをしっかり蹴れればハイも蹴れるし、ヒザも蹴れるんです。ストレートをしっかり打てる人はフックもアッパーも強いじゃないですか。ひとつの技がしっかり出来る人はちょっと方向を変えても強いんです。ただ、いつもなら追い込みのミットはオーソドックスの選手を相手にミドルを連打するんですけれど、それを今回は6~7割くらいはローにしました。それくらい前足にローを狙って行こうと思っていたんです」
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