【月間ベストファイター・8月】朝倉海、世界に衝撃が走った68秒のKO劇、1ヶ月経って振り返る勝因と反省点
毎月イーファイトが取材した大会の中から決める格闘技月間ベストファイター賞。2019年8月のベストファイターは、8月18日(日)に愛知・ドルフィンズアリーナにて行われた『RIZIN.18』のメインイベントで、ベラトールとRIZINの世界バンタム級二冠王、堀口恭司(28=アメリカン・トップチーム)をわずか68秒でKO葬という、まさかの大番狂わせを演じた朝倉海(25=トライフォース赤坂)に決定した。(2019年9月21日UP)
PROFILE 朝倉海(あさくら・かい) 新極真会や禅道会などの空手と相撲を経験し、前田日明がプロデュースする不良格闘技大会『ジ・アウトサイダー』に参戦。60キロ以下級で無敗を誇り、王者に輝いた。その後、韓国のビッグプロモーション『ROAD FC』にも参戦し、2勝1敗の戦績を残す。 RIZINでは2017年12月の初出場以降4連勝を飾る勢いのまま、2019年8月18日『RIZIN.18』でベラトール、RIZIN二冠王の堀口恭司に挑戦。下馬評を覆す1RKO勝利で“ジャイアントキリング”を達成し、一夜にして世界から注目を浴びるファイターとなった。 |
選考理由
1、MMA史上初の世界2団体同時王者に1RKO勝ち
2、研究を重ね、予想を大きく覆す勝利に結びつけた
3、精神的にも平常心を保ち、次の戦いも期待される
選考委員
格闘技雑誌Fight&Lifeとイーファイトの全スタッフ
受賞された朝倉選手には、ゴールドジムより以下の賞品(アルティメットフレキシジョイントUC-Ⅱ 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アミノ12パウダー 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムベストファイター記念インタビュー
■堀口の最大の武器を攻略すべく参考にした試合
史上初のMMA世界2団体同時王者、堀口恭司が秒殺KO負け――。そのニュースは「衝撃の結末」や「大アップセット」「ジャイアントキリング」「大番狂わせ」といった言葉と共にSNSを通じて瞬時に世界を駆け巡った。一躍、時の人となったのは、RIZINで4連勝中ながら強さに関しては未知数との声も多かった朝倉海だ。
朝倉が見事に、したたかに演じきった68秒のKO劇は、おおむね4つの見せ場に分かれる。
1、最初は開始10秒過ぎ、朝倉の右ストレートをパーリングした堀口の右ストレートがライトヒット。
2、追い打ちを狙う堀口が右ストレートを放った刹那、「右を打つ時は必ず左に首が倒れる」という堀口の癖を見抜いていた朝倉の右クロスがジャストヒットした。
3、だが「当たっても一発では倒れない、タックルやクリンチも想定していた」という朝倉は、膝蹴りやプッシュで堀口を遠ざけつつパンチで削り、冷静にフィニッシュまでの溜めを作る。
4、そして、立ち上がってきた堀口にとどめの右を突き刺し勝負を決めた。
試合からおよそ1ヵ月経った9月17日、改めて劇的勝利の“鍵”を尋ねると、朝倉は「やっぱりイメージトレーニングをすごくたくさんやってきたこと」と答えた。
「たとえば右が当たってから相手はこういう動きをする、そこで自分はこう動くとかを何回も何回もイメージしました。ジムに行く途中とか練習以外の時間にも。いざ試合でパンチが当たった瞬間に、想像ができていないと慌ててしまう。そういう状況にならず冷静に戦うためにも、あらかじめイメージすることが大事なんです」
そのイメージの中には、先ほどあげた「相手が左に首を傾けたところを狙う」や「タックル、クリンチを回避する」のほか、堀口のバックボーンである伝統派空手独特の「前手を払ってパンチを打つ」癖を見抜く、などもある。
堀口の動きを徹底的に分析する上で、もっとも参考になったのが2017年大晦日の堀口vsマネル・ケイプ戦だという。
「あれが一番、堀口選手の癖が出ていた試合だと思うし、一番研究材料になりました。癖はもちろん、よくやる動き、よくやる攻撃パターン、それから入り方のステップ。結局、あのステップが堀口選手の武器なんです。でも、それさえ読めればそんなに怖くないなと」
ほとんど想定内だったという68秒の中にも、わずかな誤算はあった。開始早々にもらった右ストレートがそれだ。
「あそこでパンチをもらったのが、僕の中での反省点といえば反省点。クリーンヒットはしていないけど、もらう必要のなかったパンチなので。あの短い中で、うまくいった部分もたくさんあったけど、自分なりにミスだったり反省すべき点もあったので、次に同じことを繰り返さないように修正していかないといけないですね」
■何回やっても自分が勝つ、そのことを再戦で証明したい
試合後、タイトルマッチでの再戦を望んだ堀口に対し、朝倉も「もう一度戦うのが筋」と回答。1ヵ月を経た今、その意志はより強くなっている。
「今回、堀口選手は実績だけを比べたら格下の僕との対戦を受けてくれた。そのことに感謝しているから、今回勝って『もうやりません』は違うのかなという気持ちがある。あと、今回の勝ちはまぐれだと言っている人もいたりするので、『もう一度勝てば間違いないでしょ? 何回やっても勝つんだよ』というのを、そういう人たちに見せられたらいいなと思います」
再戦となれば、堀口陣営がスタンド、グラウンド両局面で策を練り「読まれずに読む」戦を仕掛けることは明白だ。だが、朝倉は「もともと全局面で勝負するつもりだったので、それこそ望むところ」と語る。気色ばむこともなく、微塵の虚勢も感じられない。朝倉海は素直に、心から再戦を望み、返り討ちの結末だけを頭に描いている。
「格闘技を始めた時から、世界一になることしか目指していない」という朝倉は、他のトップファイターたちと同様に、もしかしたらそれ以上に「日本の格闘技を盛り上げたい」とも思っている。
「競技としての魅力は間違いない。でも、それに対して知名度が低いというのをずっと感じている。だからこそ、格闘技を広めるためにYouTubeも始めたし、世間のもっとたくさんの人に格闘技を知ってもらうために、これからいろんな活動をしようと思っているんです」
■受賞者・朝倉海が喜びを語る
今回のベストファイター受賞について、朝倉海は「とても光栄です。すべての格闘技のジャンルの中で選ばれたということで、それだけの評価をしてもらえたことが嬉しいですね」と語った。
なお今回受賞した朝倉には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。
(取材・構成=藤村幸代)
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