【ボクシング】比嘉を育てた最優秀トレーナー賞の野木丈司氏「引退を考えた時期も」
プロボクシングの2017年度年間表彰式が9日、都内のホテルで開かれ、最優秀トレーナー賞に野木丈司氏(白井・具志堅スポーツジム)が選ばれた。WBC世界フライ級王者・比嘉大吾を育てた実績を評価された。
キューバにトレーナー留学をしたこともある野木氏は、元WBC世界フライ級王者・内藤大介ら多くのトップボクサーや、総合格闘家の宇野薫、所英男らを指導したことでも知られている。
受賞後に話を聞くと、そんな名トレーナーの野木氏も、実は引退を考えた時期があったと言う。
「江藤光喜(えとう こうき)がメキシコのカルロス・クアドラス(WBC世界スーパーフライ級王者)に負けたとき、責任を取ってトレーナーを辞めようと思ったんです」と、野木氏は当時を振り返る。2015年11月28日、江藤はクアドラスに判定で敗れたのだ。
「江藤も日本人で唯一、敵地タイで世界暫定王座(WBA世界フライ級)を獲った実績がある選手で、(クアドラスから王座を獲れば、江藤が)やっと日の目を見られるかな、というところだったんで……。具志堅会長にも、本当に申し訳ないと思いました。ああいうチャンスを作ってもらったのに、応えられなかったんで。プロとしてクビを切られて当然、という思いでした。だからその年末、『辞めさせてください』と言ったんです」
ところが具志堅会長は首を縦に振らなかった。
「『他のことは何もしなくていいから、比嘉大吾の面倒だけ見てやってくれ』と会長に言われました。『俺も比嘉が世界を獲れなかったらジムをやめるから。できるか? やる気あるか?』とハッパをかけていただいて、『恥ずかしすぎますけど、やらせていただきます』と答えたんです」
会長のことばに奮起した野木氏は全身全霊で比嘉の指導に取り組み、昨年5月、比嘉はついに世界王座を獲得した。
「大吾が世界タイトルを獲ったことも本当に嬉しかったですけど、会長に対して、『仕事をできた』というのが嬉しかったですね」
比嘉はこの2月には1R KOで2度目の防衛を果たし、15連続KOで、日本記録に並んだ。
「しかも沖縄で、『会長の仇打ちだ!』って言ってみんなで臨んで。沖縄で会長の面目を立てられたのが嬉しかったです」と野木氏。
1981年、故郷・沖縄での初試合で14度目の防衛戦に臨んだ具志堅会長はキャリア初の敗北を喫し、引退したのだ。その因縁の地で、同じ沖縄出身の弟子・比嘉がKO防衛に成功したのである。
「あの沖縄の熱気はすごかったですね、ホントに。沖縄の熱はちょっと違いますね」と、会場の熱狂を振り返る野木氏。
比嘉とともに、今度は16連続KOという日本新記録に挑む。
「(比嘉の)練習は明日から再開します。横浜での階段トレーニングです。キツイやつです」と笑う。
名トレーナーと愛弟子、そしてそれを見守る具志堅会長の挑戦は続く。
(稲垣 收)
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