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八重樫東、生き残りを懸けたタフファイトを振り返る=2018年8月ベストファイターインタビュー

■八重樫が今も抱く向上心

 かつての八重樫は左ボクサー型(サウスポー)が大の苦手だった。拓殖大学時代、同世代で唯一、2004年アテネ五輪に出場できた出世頭の五十嵐俊幸(34=帝拳→引退)には、1学年上のアドバンテージも虚しく4戦全敗。3分3ラウンドで有効打を奪い合うポイントゲームにおいて、五十嵐のほうが優秀であったこともあるが、八重樫は五十嵐に限らず、距離を取る左ボクサー型に翻弄される負け試合が少なくなかった。しかしプロ転向後、やがて奪取したWBC世界フライ級王座は五十嵐の保持していたものだ(2013年4月・両国国技館)。

「あの試合で勝ってから、サウスポーへの苦手意識はなくなりました。逆を言うとあの試合が決まった頃も、とにかくサウスポーが苦手で、スパーリングパートナーで呼んだ大学生に軽くコントロールされていた。苦手というか単純にサウスポーと戦う基礎がありませんでしたね。でも、今度こそライバルに勝つにはどうしたらいいかって、ムキになって対策したからこそ、自分は苦手意識を克服できています」

 年齢に関しては「気にしていない数字」と語った八重樫が「気にしなくてはいけない数字」として口にしたのが世界ランキングだ。八重樫は現在、ボクシングのメジャー4団体のうち、WBA、IBF、WBOではまだライトフライ級の世界ランキングに名があり、長くスーパーフライ級で戦ってきたWBO世界同級11位の向井に勝つことは、同級でのランキング調整でも重要だった。9月10日に更新されたWBCの世界ランキングでは、スーパーフライ級の14位に入っている。

「僕の適正体重はフライ級です(現在はスーパーフライ級)。ただ、選手を続けるために、周りに理解してもらう目標には“日本男子史上初の4階級制覇”がシンプルですから。メジャー4団体でWBOの世界王座だけ穫れていないことには、特にこだわっていないです。WBO世界スーパーフライ級王座は、少し前までジムの後輩の井上尚弥が持っていたものですけど、1位のドニー・ニエテス(36=フィリピン)や復帰した井岡一翔(29)が争い始めたら、そこに食い込むのを待つほど自分に時間はない。そういう点では、年齢という数字も、参考にはしていますね」

“打ちつ打たれつ”の激闘が、世界中のボクシング・フリークから人気を集めてきた八重樫。だが今も抱く向上心は別の理想を目指している。

「僕は本来“打って外して”の出入りが持ち味ですので、みなさんの印象よりは健康的なキャリアを続けています(笑)。試合後の医療チェックも怠らずにやっている。激しい試合を期待して来たお客さんに、別のスタイルを見せて、そのギャップに満足してもらう。それが僕の追求している本当のボクシングなんです」

(文・善理 俊哉)

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