【月間ベストファイター・1月】原口健飛が大金星連続の理由「人生、背水の陣」
毎月イーファイトのサイト名にちなんでより良い試合をした選手に贈られる、格闘技月間ベストファイター賞。2020年1月のベストファイターは、1月13日(月・祝)に『RISE 136』の「第6代ライト級(-63kg)王座決定戦」で、秀樹に1RKO勝利し新王座に就いた原口健飛(21=FASCINATE FIGHT TEAM)に決定した。(2020年2月15日UP)
PROFILE 原口健飛(はらぐち・けんと) フルコンタクト空手やプロボクシングで結果を残し、17年にプロキックボクシングデビューすると、同年8月にわずか2戦目でACCELフェザー級王座を獲得した。その翌年6月にはRIZIN出場権をかけた1dayトーナメント「Road to RIZIN KICK Tournament」で優勝、8月のRIZINで大雅と対戦しドロー。 |
選考理由
1、RISEライト級王座決定戦で同級1位の秀樹に1RKO勝利し新王者に(原口は当時2位)
2、宣言通り、関西にRISEのベルトを持って行った
3、金星を重ね、次の-63kgトーナメントでの活躍も期待される
選考委員
格闘技雑誌Fight&Lifeとイーファイトの全スタッフ
受賞された原口選手には、ゴールドジムより以下の賞品(アルティメットフレキシジョイントUC-Ⅱ 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アミノ12パウダー 1個)と、イーファイトより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジムベストファイター記念インタビュー
1月13日(月・祝)東京・後楽園ホールで開催された『RISE 136』。セミファイナルの「第6代ライト級(-63kg)王座決定戦」では、原口健飛(21=FASCINATE FIGHT TEAM)が秀樹を1R2分23秒でKOし新王座に就いた。
同時に原口は、今年4月に開幕する『RISE WORLD SERIES 2020 -63kg Tournament』への出場権も手にした。
圧巻のKO勝利だった。1R残り2分を切り、打ち合おうと詰めた秀樹のフックをかわした原口が、左ボディからの右フックを脱力したように打ち抜く。
平然と見つめる原口の眼前で、秀樹が糸を切られたように崩れ落ち、あっけなく決着はついた。1R 2分23秒だった。
原口は試合を振り返り「よく(あのパンチが)出たな」と言う。当てるタイミングは「覚えていない」とも。原口は試合の序盤で「5Rまでいくな」と感じたと言うが「秀樹さんが自分から来てくれたことが勝因」と語った。
98年生まれの原口は、5歳から伝統派の空手を習い始めた。小学2年生の時に、流派の全国大会で優勝。道場は厳しく「師範たちが平気で暴力を振るって、体罰も当たり前。それが普通だと思ってました」と言う。小学3年からフルコンタクト空手の聖武会館へ移籍した。「みんなめちゃくちゃ優しかった」と言うフルコン空手時代でも「出る大会はほとんど優勝」したと言う。(ジュニア大会ではトップレベルの)JKJO全日本ジュニアでも中学3年生の時に、初出場にして優勝(中学男子55kg未満の部)している。
そんな豊富な空手経験から、原口は「試合最初の20秒くらいあれば、相手のタイプ、クセや入り方、動作の特徴がわかります」と分析力が染みついていると言う。
高校1年生の時に「ファイトマネーが良さそう」とボクシングを始めた。プロボクシング戦績は、デビュー4連勝の後、西日本新人戦準決勝で判定負けの4勝1敗。
原口は秀樹戦後のマイクで、既婚と2児の存在をカミングアウトして話題を呼んだが、パートナーの女性が第一子を出産したのは原口が17歳の時。原口は「もちろん(ボクシングや格闘技を)やめることも考えたが、格闘技は好きだったし、ボクシングで世界チャンピオンになろう」と現役を続行した。
しかし原口は当時高校生で家族を養えず、相手は実家で子育てという別居状態。また原口の親は妊娠出産に激怒しており、原口は自室にひきこもって暮らすなど家庭内断絶もしていた。
そんな精神的にもギリギリの時、一つの”新星”が原口を照らした。那須川天心の存在だった。那須川は原口とは同じ年だ。初めて知った時は「なんやこいつ!」と衝撃を受けたと言う。「(那須川が)RISEで村越選手に勝った頃。”それだったら自分も…”と思った。ボクシングをかじっていたし、空手も自分なりに極めていた、行けるんちゃうか」と人生の転換となったと言う。ボクシングを辞め、一度空手に戻ると極真第1回世界王者・佐藤勝昭(佐藤塾 塾長)が主催するPOINT&KOルールの全日本選手権・一般男子の部に出場。並居る大型外国人選手たちに勝利し優勝した。蹴り勘も取り戻し、キックの世界にも殴り込んだ。
幼い頃からの空手経験をベースとする原口は「普通のキックボクサーは、僕ら(空手経験を持つ選手)には勝てないだろうという感じがします。蹴りの軌道の変則性や、動きのコンパクトさ。フルコン空手は間合いが近いので、小さい動きの中で戦うことが身についています」と、空手ベースに自信を持つ。
とは言え、秀樹戦でのフィニッシュは「完全にボクシングテクニック」と、空手プラスボクシングの融合が勝利を呼んだようだ。
昨年夏には聖武会館から独立し、自身のジム『FASCINATE FIGHT TEAM』を立ち上げた。当時キックボクシングの練習は、原口ほぼ一人で行っており、限界を感じてもいたこともある。独立後は、9月にチャンヒョン・リー、11月に森井洋介、そして今年1月の秀樹と、並居る強豪に軒並み勝利、それもうち2つはKO勝利と大躍進中だ。原口は「独立すると弱くなるパターンが多いと思われている。周りからも独立して良くなるわけがない、どうせ負けるぞ、などと言われたこともありました。逆に”見とけよ”と思いました。けれどジム経営と選手を両立して、確実に強くなっています。今はそんな声たちにも”だからこそ強くなれた”と感謝しています」と反対の声も、自分を強くしてくれたと言う。
17歳から自分の子どもやパートナーという存在を背負い、21歳にして周りの反対を押し切っての独立など、原口の半生からは”リスク”を押して進む姿勢が見える。それは強者との連戦マッチメイクを厭わない、選手としての構えにも現れているようだ。原口は「背負っているほうが強いと思うんです。精神的にはしんどいけど、ギャンブルみたいなものなんで、人生は。格闘技もギャンブル。負けたら落ちるし、勝ったら上がる、簡単なこと。勝たないと何も言われへんから、負けたらしゃべることは出来ない。負けたけどおもしろい試合をしたとか、周りからは言われても、殺し合いなら生きるか死ぬかなんで」と背水が強さを呼ぶと語る。
さらに「関西って、基本チャンスは転がってない。けれどチャンスがないから東京へ行くとか、それは意味が無い。関西の子どもたちに夢を与えないとあかんし、僕らが夢を広げたらんと。チャンピオンになって、ますますその責任があると思う」と関西ファイターとしての矜持も覗かせる。
次の試合は、ワールドシリーズトーナメント1回戦・ムエタイ強豪を次々と打破してきた強打のチャド・コリンズだが「(コリンズは自分の打撃が)当たらんかったらイライラしそう。こちらはちっちゃくちっちゃく、うっとおしく行く。ムエタイにはウィービングやダッキング、スウェーなど上半身を柔らかく使えるファイターは少ないと思うし。日本代表として、秀樹さんの思いも背負ってるんで、勝たなあかんな」と自分らしい戦いで必勝を期す。
リスクを背負うほどに、相手が強いほどに強くなる”リスキーファイター”は、強豪揃いのワールドシリーズトーナメントで勝ち抜くことが出来るか。
今回の受賞者にはゴールドジムからサプリメント3種類が贈られるが「プロテインは毎日飲みます。もらえるならBCAAやクレアチンなどが欲しいな」とリクエストした原口。受賞の感想については「びっくりですね、僕なんかでもいいのかな」と喜びを語った。
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