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【6月・ベストファイター】“極真空手世界王者”上田幹雄、MMA転向3戦目の秒殺KO劇“大山総裁のように戦いたい”

■デビュー戦でKO負け、練習でボコボコにされ「俺はMMAファイター白帯だ」

 1年前の敗戦と今回は、何が違ったのか。
 上田は「悪い意味で“極真世界王者”という自信がありました。MMAでも大丈夫だろうと。BRAVEで練習もしていましたが、空手の稽古も今までと同じようにやっていました。それがああいう負け方をして、はじめて『俺はMMAファイターになったんだ』と思いました」と苦い勉強をしたと言う。

GENスポーツで国内重量級の猛者と練習したことが試合にも生きた

 この先いらないプライドを引きずっていたら、上にはいけない。そう痛感した上田は、BRAVEの他にも国内重量級の猛者が集う『GENスポーツアカデミー』での練習に参加することに。
 上田は「そこに行ったのが大きかったです。まず寝技でボコボコにやられました」と言う。
 GENスポーツでは岡見勇信をはじめ、シビサイ頌真ら日本トップのヘビー級ファイターたちが集う。

 続けて「やられすぎて目が覚めて『俺はMMAファイター白帯だ』と。何で空手の世界チャンピオンなんてプライドを引きずってやっていたんだろう、すごく恥ずかしいと思いました。そこで一から学ぼうと思い、この1年は本当にでかかったです」とゼロからのスタートを決意したと言う。

 GENスポーツで学んだことは「でかい人に寝かされても立てるという自信です。もちろんまだまだですが、少しずつ余裕が出てきて、構えのスタンスも変わるようになりました」と何よりも重量級ファイターたちと組む経験だったと言う。

■「ボクシングのパンチはマイナス100」空手を極めたからこそのデメリット

 自らを“MMA白帯”と自覚する中で「今までやってきた空手のパンチ、蹴りを一回捨てました」と言う上田。

 空手の稽古は「週一回」くらいにとどめ、打撃の練習などはせず、重心移動の練習である“移動稽古”のみに限定したと言う。

空手時代の上田、鋭いハイキック!

 上田「空手でついた癖をどんどん直していこうと思いました。たとえばパンチはボクシングオンリーで学ぶことにしました。でもゼロからスタートというより、空手の世界王者ですから、ある意味マイナス100くらいからスタートなんです。“空手のパンチ”というものが身についてしまっているので。逆にレスリングなどは0からスタート出来ますけど…」と空手のエキスパートだったからこそ“マイナススタート”になると言う。

 さらに「空手で世界王座を獲ったのは、空手が絶対一番好きだったからじゃないですか。でも去年負けるまでは、MMAと向き合っていなかった。負けたおかげで、MMAが本当に好きになりました」と負けて得るものは大きかったと言う。

 続けて「極真の試合を見て研究していた頃と同じように、勉強するようになって『すげえ、空手と全く違うことをやってる』と楽しいと思えるようになったんです」と取り組む姿勢も変わったと語る。

■“捨てた”空手が戻ってきた

 空手を“捨て”、“MMA漬け”の日々の中、上田は「今年の冬あたりからいきなり、スパーリングの中で、空手の技がめちゃくちゃ生きるようになったんです」と言う。

 上田は「裏廻し蹴り、三日月蹴り、ヒザ蹴り…すごく出るようになりました。レベル1から格闘技をやり直して、レベルがやっと5レベルくらいになった時、今までずっと付き合ってきたものが出るようになったんです。空手をやっといて良かった」と、いったん遠ざけた空手が自然に出るようになったと語る。

昨年12月のGRACHANではハイキックKOでMMA初勝利

 続けて「今はボクシングは“マイナス30”くらいですが、今後うまくなってきたら、空手のパンチもうまく出るようになるかも」と、接近戦で威力を発揮するフルコンタクト空手のパンチもうまく融合できるようになるかもしれないと言う。

 そんな中、昨年12月に臨んだ『GRACHAN』の試合では、韓国のソン・ムジェに、実に12秒でTKO勝利。左の多彩な蹴りの連続から、左ハイキックでダウン奪取、パウンドアウトしてのMMA初勝利だった。

 上田は「GRACHANの試合も、今回も自分の強みである、蹴りが当たったから勝っただけと思っています。もし倒れずに展開があったら、パンチの攻防もあったり、その後も寝かしてパウンドもあるでしょう。これからはそれも見せていきたいです」と今後は“蹴りだけではない”所を見せたいと語る。 

■“大山倍達総裁のように戦いたい”

 今後、戦いたいタイプは「MMAなんで、せっかくなら組技系、レスラー系の人とどんどんやっていきたいです、立ち技が得意な同士よりも。レスラー系の人のほうが、蹴り技が光ることもあるかも」とタイプの違う相手とやってみたいと言う。

 現在、国内ヘビー級最強はスダリオ剛と見られる向きもあるが、上田は「いずれやらなくちゃいけないと思いますが、今はまだ、機ではないかなと。周りから“やれやれ!”と望まれるようになったらやりたい」と機が熟すのを待ちたいと語る。

 今月2日のDEEPでは、メガトン級暫定王座戦で、王者の酒井リョウが挑戦者の水野竜也に44秒TKO勝利。試合後に酒井は「上の舞台で、スダリオ剛選手とか、上田幹雄選手とやってみたい」と対戦希望していた。

今後は世界を狙っていきたいと展望を語った

 上田は「(酒井選手は)戦績はあるかもしれませんが、レベルが違うんじゃないかな」と前置きしつつ「酒井さんに負けた2人、水野さんも、赤沢(幸典※昨年12月に33秒TKO負け)さんも、日ごろ凄いお世話になっています。酒井選手は一発がありますが、2人とも普通に組んでいれば負けていなかったはず。そういう意味では自分は一発があるので」と強打同士、仲間のリベンジ戦も辞さないと語る。

 最後に「ゆくゆくは世界を狙っていきたい。皆に認めてもらえる舞台、UFCか、ONEか…階級はわからないけれど、外国人の最強のやつらと戦いたいです。大山総裁が大好きで、総裁だったら世界の強いやつらの所に殴り込みかけにいくだろうな、その生き方に一歩でも近づきたいです」と原点である極真空手の創立者・大山倍達のように生きたいと笑った。

■上田幹雄が受賞の喜びを語る

 今回受賞した上田には、イーファイトより記念の盾と、ゴールドジムからアルティメットリカバリーなどのサプリメント3種類が贈られる。
 上田は「6月は井岡選手や武尊選手など、色んなビッグマッチがあった中、選んでもらえてとてもうれしいです。また選んでもらえるように、いっぱい強くなります」と喜び、サプリメントは「プロテインの他、クレアチンやグルタミン、マルチビタミンなどを摂っています」とコメントした。

 ヘビー級の筋肉を保つために「体重の2.3倍のグラム、一日300グラム摂らないといけないので、1日に何度もプロテインを飲んでいます」とプロテインは欠かせないようだ。なお筋トレは「自重トレを大事にし、重いウエイトを行っても必ず最後にダッシュやバーピー、スクワットやモモ上げなど自重を行っています」とこだわりを語ってくれた。
「今は日本での練習環境や、試合経験を積みたい」と言う上田だが「来年くらいから海外に、力試しや学びに行ってみたい」と海外での練習も考えていると言う。空手からMMAにアジャストしたばかり、伸びしろたっぷりの上田に期待したい。

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