2020/04/19（日）UP
（最終更新：2020/04/19 18:29）

1日でこの変わり様のマクドネル。右が23日の姿、左が翌日の変わり果てた前日計量

　イーファイトが取材した中で過去の衝撃的なニュースを紹介し、その真相を探るシリーズ。
　時は2018年5月25日（金）、『WBA世界バンタム級タイトルマッチ』（東京・大田区総合体育館）での王者ジェイミー・マクドネル（32＝イギリス）vs挑戦者で同級2位の井上尚弥（25＝大橋ジム）は、井上尚弥の1R 1分52秒のTKO勝利により、井上が日本最速となる3階級制覇を達成した。この偉業の前日に井上尚弥も驚いた珍事件が発生した。

前日計量で井上尚弥と並んだマクドネル

　試合の前日の24日（木）計量が都内にて行われた。計量は午後1時からの予定だったが、マクドネルは70分の異例の遅刻。
　計量は2時10分からスタートし、井上はバンタム級リミットの53.5kg、マクドネルは200gアンダーの53.3kgで一発クリアしたが、マクドネルの足はふらつき、顔は痩せこけ一気に老け込んだ印象だ。前日の調印式と同一人物かと疑いたくなるほどの変わり様に場内は騒然とした。井上も「昨日との変わり様にびっくり。顔も別人でした」とコメントした。

マクドネルと井上のフェイスオフ

　人間は1日でこんなにも変われるものなのか。計量前日の調印式では頻繁にペットボトルの水を飲んでおり、現在の体重を聞いてもはっきりと答えなかったため、余裕なのかと思われたが、今から考え、調べてみると、これも減量のひとつのようだ。

　汗を大量にかき、体内の塩分が少なくなった状態で水を多く飲むと、体液の塩分濃度を一定に保とうとする身体の働きによって、過剰な水を尿として身体の外へ出してしまう。これを自発的脱水症というが、前日の水分補給はそれを狙ったものか。

試合当日は12kg増量でリングに上がったマクドネル

　それでもマクドネルは大幅な遅刻、井上は当時「朝の時点で3キロオーバーほどあったのでは。そこから何時間かかけて体重を落としていった」と推測している。

「体重をクリアしたのにしろ、水抜き（減量で体内から運動、サウナ等の方法で水分を出す）のダメージが相当大きい」としながらも「明日の夜9時まで時間があるし、そこはしっかり相手も回復してくると思う。ただその分、動きも鈍るし、ボディも効きやすくなる」と井上は水抜きの回復による弱点も語った。

マクドネル（右）と弟のギャビン（左）。マクドネルは試合で絞っているが、普段の体重だと見分けがつかない（@JamieMcdonnell1より）

　試合前後には、ネットでマクドネルの計量が大きな話題に。その中にはマクドネルは双子のファイターであり、前日に現れたのは実は弟のギャビン・マクドネルなのではと。弟のギャビンはWBCインターナショナルスーパーバンタム級王者で、2度世界王座に挑戦している。

　ギャビン替え玉説に関し、今回の企画で、じっくり顔の違いを見比べてみたが、なかなか違いがわからない。耳の形もほぼ同じだ。目や鼻もハッキリとした違いがわからない。

弟のギャビン・マクドネル。小鼻が上がっておらず、右耳の後ろにタトゥーがある（Stefy Bull Promotions YouTube）

　斜めからの顔を見比べると、兄のほうが小鼻がやや上に上がっており、鼻の穴が見えるが、弟のギャビンは小鼻が上がっていないことがわかった。
　そして弟のインタビュー映像を見ると、右耳の後ろに小さなタトゥーを発見。兄のこれまでの写真を確認したところ耳の後ろにタトゥーは無い。
　そこで、計量当日、どこかに弟が写っていないか確認したところ、編集部の写真から右耳の後ろにタトゥーがある弟の写真を数枚発見。これで、計量に現れたのは本人と断定できるだろう。

計量現場に弟さん発見、これは左耳なのでタトゥーは無い

　マクドネルは翌日の試合当日には12kg増量でリングに上がった。
　井上は、その発言通り、ボディを中心に攻め、左ボディブローでダウンを奪う。
　立ち上がったマクドネルを井上は休ませず、すぐに距離を詰め、マクドネルはフックのラッシュを浴び再びダウンし審判が試合を止めた。早すぎる圧巻の勝利だった。そしてWBSSに参戦を表明している。