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【月間ベストファイター・8月】“空手世界女王”月井隼南、MMA転向半年で”1R 一本勝ち”の秘密とは、次戦ケイト・ロータス戦はKO宣言!

■空手時代の仕掛けの速さを生かす 

月井のチョーク!

 フィニッシュのチョークは「ずっと練習していた」と言う。「パウンドの強さはストライカーの持ち味。その中で、相手が横を向いていたり、後ろを向いていたり、返されたり、いろんなパターンの中でいつ仕留めるか。私は寝技や関節技がトップ選手と比べたら、そんなにうまくないので、隙あらば極めに行くのは意識してやっている」と強いパウンドの中からフィニッシュへの移行を意識している。

 この仕掛けの速さは、空手時代からの特徴でもある。
 月井は「逃がさない。パウンドを打って、一旦相手を元に戻す選択肢もあるが、今回は雨が降っていた。ここで極められなかったらデビュー戦が判定勝ちか判定負けになってしまうと思った。意地でも何があっても決めてやる!と思いながら打っていた」と、フィニッシュする隙を絶対に逃さなかったと言う。
「勝負に対する執着心は、空手の現役の時から。ここだと思ったら絶対逃さないのはメンタルとしても作り上げてきています」と心技体が空手の経験から生きていた。

一本勝ちを決めた

 今回の勝敗の鍵は「土木ネキさんが組みに来てくれたこと。あそこでずっと距離を取られていたら、時間を使ってしまって踏み込もうにも踏み込めなかった。一発目のパンチが当たった時、警戒されて距離を取られた。でも彼女も、ローが当たってコンビネーションしても、私がタックルにもいかなかったので、もう1回打撃に行けると思ったのでしょう。でも私がそこを組みに切り替えたという所だと思う」と間合いと駆け引き、一瞬のチャンスを逃さなかったことが勝ちに繋がったと言う。

■32歳、空手トップ競技者から転向の理由

月井の華麗なハイキック!(慶應大学空手部道場)

 MMA転向を決めてから約半年、MMAルールに合わせ、徹底した練習と対策を積んだことが、今回の勝利につながった。五輪を狙えたほどのアスリートだ、そもそもポテンシャルが違うと判断されがちだが、彼女の強さの秘密は、空手時代から苦手なことにとことん向き合い克服していくことにあった。

 月井は22年7月に『ワールドゲームズ2022』の空手女子組手50kg級で金メダルを獲得。『ワールドゲームズ』は4年に1度開催される世界大会で、次回大会は25年8月、それまでは月井が世界チャンピオンであり、現空手世界女王の肩書を持ったままMMAに初挑戦となった。

裏回し蹴りも得意技の一つ

 元々2021年の東京五輪を目指していたが、アジア大陸枠は2位となり、僅差で出られず。一度引退を考えたが、トレーナーに「君は世界チャンピオンになるべき人間だから」と背中を押され4年に1度のワールドゲームスに出場。日本の五輪代表にもなった宮原美穂を破るなどし、優勝を果たした。

 月井は「東京五輪に出られなかったから辞めるのではなく、同じIOCが公認のワールドゲームスに出て世界チャンピオンになることができた。フィリピンの子たちに背中を見せられることができたから良かったと思う」と自身が夢見た世界チャンピオンと、これからフィリピンを背負う後輩たちに努力と勝つための工夫をすれば叶うというところが見せられたと胸を張る。

素手でサンドバッグ!パンチ力も強烈

 そして24年1月、プレミアリーグ・パリで5位に入賞したことを最後にMMAに転向を決意した。
 その理由とは、打撃も投げもある総合の世界で自身の腕をさらに伸ばすこと。
 もう一つは、少しでも早く入れれば勝つという伝統派空手のルールでは、審判のどっちが先に入ったかという微妙な判断で勝負が決まってしまうが、しっかり最後まで決め切る、白黒はっきりつけられる競技をしたいということであった。

■「MMAいける」と思えたのは試合数週間前

 MMA転向が決まり、月井は「すぐにグラップリングと同時並行でボクシングを習いに行った」と言う。
 伝統派空手はパンチを止めるので、突き抜かないイメージだ。ダメージを与える競技の中で、キックボクシングではなくボクシングにした理由は「腕しかない分、点で当てる重さは、もっと細かく教えていただけるのかなと思った」とのことだ。

打撃練習をする月井 @junnatsukiiv888

 ノンコンタクトとはいえ、月井の攻撃力は一流だ。月井は「元々伝統派の方でも、男子選手と練習していたら男子が“やりたくない”と違う列に行ったりしていたので、パンチが重い方だったとは思う」と破壊力はあったと言うが「引くクセはあったので、まあまあなクオリティに持って行くのに5か月くらいかかった」と言う。

 パンチに関しては「今も理想としている重さに比べたら、6~7割しか完成していない」と言うが、それでも「私たち伝統派空手は、あまり中に踏み込みすぎない。手打ちみたいになってたのを、股関節の力を使って振り抜く練習もやってきたので、少しはましになってきた」と威力は増してきたと言う。

 今年1月もパリのプレミアリーグに出て、プロンズマッチまで行っており、それまでは空手に専念。
 MMA練習は半年という短い期間で臨んだ。月井は「自分がMMA行けるかなと思ったのは、8月頭くらい」とギリギリだったと言う。
 半年の間は「思ったようにうまくいかず、試行錯誤。空手と他で習った打撃を組み合わせるのも難しいし、グラップリングで寝かされた時の対応が分からなかったり。フィジカルの違いも、打撃で殴る時や蹴る時と、寝かされて起きる時の筋肉の使い方の違いもしんどくて、満身創痍のまま練習していた」と苦戦の日々が続いた。

■得意なことより「出来ないことから潰していく」

月井(右)の横蹴りがヒット!(@junnatsukiiv888)

 グラウンド対応だけでなく、打撃でも伝統派空手にはフックやローキック、ヒザ蹴りも無く、MMAとは異なる。これらも半年で身につけなければならなかった。
 月井は「ヒザ蹴りは、最初もらった時に痛めてしまった。でも逆に苦手なことをやってもらった方が試合の時に安心できる」と語る。

 さらに「電車の移動中も、寝る前も、その日できなかった苦手なことばかり考える。できるようになるまで、何週間も同じことを考える。たとえばローがカットできなかったら、次にうまくできる時まで、そのことだけ考えたりしている」と弱点に徹底的に向き合った。
 しかし、これは空手時代から行っていたことでもあった。

月井は慶應大学空手部でコーチを務める

 月井は「私が世界を獲れた理由は、多分そこなんじゃないか」と空手時代を振り返る。月井はフィリピンの代表選手だった。小さい国であり、強豪国のように良い練習相手や環境、名コーチなどがいるわけではないと言う。
「正直コーチもいなかった。そんな環境で、自分で取捨選択して、必要であればトップのコーチにお願いする。同じ階級の強い選手に練習をお願いする。自分がやりづらい選手、やりたくない選手の所に行っていた。自分がやりやすい選手や、楽できる選手のところには1度も行こうと思わなかった。すごくしんどいけど、そういう風に世界を獲ってきた」と敢えて自分の弱い部分を強化し続けた。

 そして「MMAでも得意だと思ったら一旦置いておいて、できない方から潰していく。それで初戦はうまくいったのかな」と分析、今後も「色んな壁にぶつかると思うので、勝負の世界は甘くないと思うが、そういう風にやっていきたい。嫌なことや自分の弱い所、苦手なことから逃げずに向き合って、強くなっていきたい」と空手時代と同じように、MMAにも向き合うつもりだ。

月井が慶応大学の空手部で練習する

 中でも今後身に着けたい技として「テイクダウンができると、すごく上になった時も楽。(同じく伝統派空手出身である)堀口(恭司)選手の動きを見ていても、打撃からのテイクダウンって、打撃でフェイントになったり、打撃で相手がウッてなっているところを上手に倒せると試合中に気持ちいいのかな。テイクダウンと打撃のコンビネーションを増やしていきたい」と堀口ばりの打撃&テイクダウンの連携を身に着けたいと言う。

■ケイト・ロータス戦は「男性ファンが悲鳴を上げるKOしたい」

 次戦は11月4日(月)の『DEEP 122』(東京・後楽園ホール)で、[DEEP JEWELS -50kg/5分3R]としてケイト・ロータス(フリー)と対戦する。

計量時に笑顔を見せる=8月

 月井はケイトについて「ファンが多い選手で、最近RIZINでもすごくいい試合をされていたので、私としては多分チャレンジャーという形になる」としながら「ただ人生の中で戦ってきた数は圧倒的に私の方が多いので、特に男性ファンの方が悲鳴を上げてしまうような打撃でKOしたいと思う」と人気の美女ファイター・ケイトを破壊宣言だ。

 その技については「前回は入りそうな技を3個くらい用意していたが(雨天で)滑ってしまって出しきれず。ケイト選手に対しても3個くらい用意している。特に蓄積型のパンチではなく一発でノックダウンできるパンチを練習している。男性ファンの方の『もうそれ以上やめてくれ!』という声を聞くために、いろいろ出していきたい」とニヤリと笑う。

 試合展開については「ケイト選手は打撃もちゃんとできますし、それ以上に柔道の大外刈りなどをよく使っているのを見る。テイクダウンから寝技にもっていくのが上手なので、そこを切るなり、もらったとしても冷静に対処すれば、全然勝負にはなる。寝かされたから怖いとは思っていない。寝かされてもフィジカルも備えていますし、いいポジションに自分が行けばいいだけ」とグラウンドも恐れない。

2戦目も勝利なるか

 さらに「前回は一本勝ちなので、今回は伝統派らしい試合でKO勝ちをしたいですが、相手はそうさせたくない」と分析し「打撃戦へいかに持っていかないかも作戦の一つだと読んでいるので、打撃を打たせない、寝かせようとする、もしくは逆に打撃で来る可能性もあると思う。でも冷静に見極めていけば、前回のように1ラウンドで勝ち切ることも不可能ではないと思います」と前回のような冷静な分析、対応で1Rフィニッシュあるとする。

 今回いきなりの人気選手とのマッチアップだが「プロ1戦しかしていないので、ケイト選手との対戦は早いと思われている。ただ私から言わせていただくと、他の選手が違うお仕事や違うことをしていた時に、私はひたすら鍛えていたので、差はないと思う。これからプロ2戦目になりますが、30年近く人と殴り合ってきた。試合だったり、体幹だったり、フィジカルの強さは私の方が上かな」と自信をのぞかせた。

■月井隼南が受賞の喜びを語る

慶應大学空手部でコーチを務める月井

 イーファイトの月間ベストファイターに選ばれた感想を聞くと「全ての格闘技の中で選んでいただいてやる気が出ます」と喜んだ。イーファイトから記念盾とゴールドジムからサプリが送られるが、月井にサプリの摂取について聞くと「運動後のリカバリーのためにBCAA、スタミナにクレアチンを飲んでいます」と言う。
 BCAAは筋肉損傷を軽減させ、疲労感、筋肉痛も軽減できると言われる。クレアチンは瞬発的なパワーを出す時やマラソンでもラストスパートでの最後のひとふんばりに効果を出すとされている。

【動画】月井隼南が得意技を公開!

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